夫の口論を止めさせたいと思うときには、まず夫が口にする最初の感情を煽る言葉をまったく無視すればよいのです。
 夫から離れ、他の事をやりだすのです。たとえば、メルが「君は、なんにもやらないっていうわけ?」と言った時に、ミンディが〈消火法〉を応用するには、こうすればよいのです
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夫の短気をどうするか?

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ピンクバラ夫の短気をどうするか?

感情が蓄積された時に、それを一つの情報として相手に伝えるべきであると考える人は、口論することが、建設的なコミュニケーションを生むものであると信じているといって良いでしょう。
 しかし、感情的なしこりを与えないうちに中止できないような議論は建設的なコミュニケーションとは言えないのです。
 このような誤解をしている人は、口論を避けることのメリットを学ぶ必要があるでしょう。
 それを妻が教えるということは、口でいうほど簡単ではないようです。

口論好きな夫

ミンディとメルの場合
 妻三十五歳、主婦、子供二人。
 夫のミルは優しくしてくれるのですが、ひとたび反発したり気に障ることを言うと、途端に逆らってきます。
 メルとの口論を避ける方法があるでしょうか?

 ちょっと粋な、頭のよい三十五歳の主婦で、子持ちのミンディは、夫にどう対決し、話し合ったらよいか分からず悩んでいました。
 これまでいくたびも間接的な対決を試みたりのですが、それも効果がなかったと言うのです。

 最初にセラピイに来たときに、ミンディはこう訴えたのです。
「夫のメルは時には私のことを気づかって、優しくしてくれるんですけど、一つの問題は、短気だということなんです。
 彼に反発したり、対決したりするのを好まないと思うんです。
 私が彼に向かって何かを言い始めるとか、何か気に触ることを言ったりしたら、とたんに逆らってくるんです。
 たとえば、昨夜のことなんですけど。

 飲料水の軟化タンクに塩を入れるのを夫が忘れたので、そのことを注意して、“塩を入れるのを忘れたでしょう?”と尋ねたら、雑誌を見るのを止めて、私を睨みながら、“君は何にもやらないってわけ?”って皮肉を言うんです。

“それは、どういう意味なんですか?”って聞き返したら、“塩を自分で入れるくらいの時間はあるはずだ”って言うわけ。
 そこで、“あなたがやるって言ったでしょう?”と申しましたら、“そんなことを言った覚えがない”って言うんですよ。
 結局ばかげた口論になっちゃったんです」 

「なるほど、あなたが反発したり、対決すると、口論になってしまうというわけですね」
 彼女が心配していることが明らかにするために、私はこう尋ねました。
 ミンディはうなずき、聞き返してきました。

〈内的コントロール〉を強め、自分の自尊心を高める

「いったい、私はどうしたらいいのでしょうか?」
 メルとの口論を避けられる方法はいくつかあります。
 まず、〈内的コントロール〉を強め、自分の自尊心を高めるような努力をするのです。
 そのことで、メル自身の問題で自分を責める必要がなくなりますから。
 それから、自己教示の方法により、「口論に加わらない事で、口論を中止する力が私にある」という考えを自分に言い聞かせるのです。
 ミンディは、さっそく、この方法をやってみることにしました。

口論などの〈火を消す〉方法

 メルとの口論を避けるためのもう一つの方法を説明する前に、メルが暴力を振るうかどうか確かめる必要がありました。
 その点の心配がないと分かったので、次の方法をやってみることを勧めました。それは、自分の〈内的コントロール〉が確立できるようになるまで、夫の短気が始まった、それを無視する〈消火〉法です。(もちろん、夫が暴力を振るうようであれば、もっとラディカルな介入の仕方が必要です)

〈消火法〉とは、他人の行動をまったく無視する方法です。
 行動が無視されると、その行動が少なくなるとか、止めるようになるといったことが、さまざまな研究によって明らかにされています。
 つまり、その行動が消滅するので、〈消火法〉というわけです。

 夫の口論を止めさせたいと思うときには、まず夫が口にする最初の感情を煽る言葉をまったく無視すればよいのです。
 夫から離れ、他の事をやりだすのです。たとえば、メルが「君は、なんにもやらないっていうわけ?」と言った時に、ミンディが〈消火法〉を応用するには、こうすればよいのです。

〈消火法〉

 夫に一言も答えず、とにかく、彼に背を向け、その場を去るのです。

「そんなことをしたら、夫は逆上しますよ」
 こう答えたミンディは火を消した後がどうなるかが心配になったのでしょう。
「そういう反応を示すことも、十分に考えられますね。自分の行動が他人によって無視されたりすると、相手の関心を引き寄せるために、一時的にその行動を繰り返すという現象が生じることも、研究の結果、明らかになっています。

ですから、もしメルが、無視されることで怒り出したら、それは、無視されたくないという意志表示をしているわけです。と同時に、あなたが口論に加わることを求めているということです」

「でも、状況を悪化させないためにどうしたらよいかを考えるんじゃなかったでしょうか?」
「もちろんです。もし、夫が怒り出すことがあなたにとって状況が悪くなるんだったら、この無視する方法は中止すべきだと思います。

 夫から離れて行くことに対する夫の怒りにあなたが耐えられるのでしたら、また、夫のところに戻り、なぜ、夫の傍を離れたのか、その理由を伝えてあげればよいのです」

 心を静めて、なぜ夫の扇動的な言葉を無視するのかをゆっくり説明します。
 言葉少なく。たとえば、
「あなたが苛立っていることは分かります。でも、口論すればお互いが傷つくだけですから、口論したくないのよ。

そのためには、状況から身を引くのが一番良いんじゃないかと思ったんです。気持ちが治まったら、また、話し合えばいいと思ったのよ」といった具合に。

 このように、口論が始まりそうだと感じたら、まず、そこから身を引き、部屋から出るほうがよいのです。
 そして、深呼吸を二、三回します。心を静めるために数分間必要でしょう。治まったら、部屋に戻り、普通の会話に夫を誘います。

 たとえば、その日にあったことなど。そして、コミュニケーションのパイプが再び通じ合った頃を見計らって、先の明代の原因となったことを取り上げ話し始めればよいのです。
 
 このような〈消火法〉を妨げる一つの障害は〈消火〉するのを拒む傾向が多くの男性にあるということです。
 たとえば、あなたが夫から離れて行つたときに、あなたの後を追いかけてくるような男性もいます。

 なぜそうするのでしょうか。あなたの無視する行動によって、問題は彼自身にあるということを、彼自身が気がついているわけです。
 それが嫌なのです。そこで、口論にあなたを引きずり込むことによって、自分のコントロールを回復しようとするわけです。

 ところで、このような〈消火法〉は、なにか消極的に見えるかも知れませんが、実際は、その性質からして、対決的な要素を持っているのです。

 夫の口論をしかけるような態度を無視するという行為は、あなたの自己主張や強さを示すものです。
 と同時に、心理的エネルギーをセーブする手段でもあるのです。
 ミンディのように、家事を取り仕切り、二人の子育てに追われ、自分自身のニーズが満たされない生活をしている〈主婦〉は、夫との対決の話し合いをする時に、たくさんのエネルギーを使う余裕がないわけですから、最小限のエネルギーでもってうまく話し合えるような技能が必要なのです。

〈消火法〉にはインスタントに状況を改善するという効果があります。
 少なくとも口論によって引き起こされる心痛やフラストレーションを避けられます。そはて、そのようなあなたの無視する行動を夫が妨げない限り、後になって建設的な話し合いができる雰囲気の中で、彼に言いたいことを伝えられます。
 たとえば、彼が短気を起こすとどういえ結果になるか、口論する以外にどうすればあなたと話し合うことができるか、あなたが状況から身を引くことは実は、彼が嫌であるからではなく、むしろ、よい関係にするための話し合いを後にしたいからである、などといったことを夫に話せるチャンスは高まるのです。

〈消火法〉には二つの目的があります。一つは、問題が表面に浮上した時に、理性的に対応する道に導くということ。
 もう一つは、連鎖的に発生する行動にブレーキをかけ、中断するという効果をもたらすことがあります。
 つまり、夫に、自分の行為を振り返るチャンスを与えることにもなるのです。
 
 その結果、あなたが言いたいことに耳を傾ける可能性が生まれます。
 ミンディの場合、夫から離れるという行為よりも、後になって、離れたいつた理由を夫に聞かれた時に、その〈理由〉を告げることの方がもっと意義があるのです。

 ところで、他の対立的行動と同じように、〈消火法〉にもマイナスな面があることを知っておかねばなりません。

 一つは、あなた自身の問題に夫が対決的に話し合いを求めてきた時に、その対決を避け、夫を無視するためにこの〈消火法〉を用いることです。

 たとえば、あなたの浪費癖とか、あなたの怒りっぽい態度に対して、

夫が理性的に話し合いを始めているのに、それを避けるために〈消火法〉をもって対応するのは誤った使い方です。

 あなたに対する愛し方を改めてもらうためであるならば、あなたは何をやってもいいというわけにはいかないことをわきまえておくべきです。

 〈消火法〉の誤用を防ぐもう一つの注意を記しましょう。〈消火法〉を用いた後で、ふたたび話し合いを始める時に、相手を攻撃するような話し方は避けなければなりません。
 攻撃的な話し方を避けられない場合は、再びその場を離れるべきです。

 さて、次に、夫の短気に対応する別の方法を紹介する前に、どんな対決であれ、守って欲しい大事なガイドラインを述べることにしましょう。

 もし、〈消火法〉を実行することを考える時に、あるいは実行している最中に、どんな理由であれ、確信が持てなかったり、その結果を恐れる場合には、ただちに中止すべきです。
 何か他の方法で問題を解決することができるかもしれないのです。
 また、他の方法があるはずです。結局は、あなた自身にとって最善のセラピストなのですから、自分にいちばん適切な解決方法は、あなた自身にしか決められないのです。

認知的(コグニティブ)モデリング

では、〈消火法〉が自分の肌に合わないとか、〈消火法〉では夫の〈火〉がよく消えないといった場合に、他にどんな方法があるのでしょうか。
 もう一つの方法として、〈認知的モデリング〉という、やや程度の高い戦術を試してみるのもよいでしょう。

 この認知的(コグニティブ)モデリングの方法では、あなたは言語的に、しかも、創造的に自分を主張します。
 その結果、相手の行動の変化を誘発します。

 しかし、この方法は〈消火法〉とは違って多くのエネルギーが必要です。また、練習を多くする必要があります。
 この方法の特徴は、相手自身が自分をコントロールできるような形で、相手の短気な言動に介入できるという点です。

 この方法のいちばん大事な手法は、相手の目とコンタクトを一時的に中断することです。
 目のコンタクトが中断されると、口論の激化を防ぐきっかけになるのです。そこで、口論が激しくなりかけた時に、あるいは、始まりそうになった時に、意図的に相手から顔をそむけ、目のコンタクトを中断します。

 そうすると、あなたの中に何が起こっているのかを相手が考える時間的余裕が生じます。
 しばらくして、あなたが何を感じているのかを、何を考えているのかを、静かに相手に告げるのです。
 また、どうしたら問題を解決できるのかという意見を述べます。
 私は、こんなふうに、ミンディに説明しました。

「たとえば、食器洗い機の音がうるさいのが気になって、キッチンにいるあなたの所に夫が文句を言いに来たと仮定しましょう。
 あなたは、はじめは黙っています。しかし、夫は文句を言い続けます。そこで、あなたは夫から顔をそむけるんです。
 そして冷蔵庫の方に向かって、友だちに話しているかのように言うんですね。

 “こうたびたび、私につっかかってこられるいやになっちゃうのよ。彼の気に障ることを、どうしてもっと冷静にはなしあえないのでしょうね? 私が何か言うと、かえって悪化してしまうのよね、どうしていいのか分かんないわ。お手上げだし、頭が混乱するばっかり!”
 
 それから、夫の方を向いて、いま言った最後のところを繰り返し、そして、こう言うんです。
“何が本当に気に障るのか、説明してくださいませんか?”って。

 でも注意しておきますが、相手が冷蔵庫であっても、個人攻撃をしちゃいけませんよ。相手を非難したり、分析したり、見下げるようなことはしない。
 代わりに、どうしていいか分からない自分の気持ちを表現するのです。
 また、問題について話す時に、できるだけ〈彼の問題〉、〈あなたの問題〉よりも、〈私たちの問題〉として述べることが大切です」

さて、このような認知的(コグニティブ)モデリングが効を奏さない時はどうしたらよいのでしょうか。
あるいは、何か不自然であるとか、ちょっと恥ずかしいことか、やってみるのが怖いと感ずるような場合には、ただちに止めてください。別な方法を用いましょう。

《念のために述べますが、私が提案する方法は、自分の状況や、性格に当てはまると思う場合にのみ応用してください。ご自身の創造性を発揮して、自分に合う方法でやるのがいちばんです》
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