積極的にこの問題を取り上げること、これを許さない姿勢を強く打ち出すこと、加害者への適切な処分を決めること、従業員の権利やセクハラへの対処の方法を教育すること、関係者がセンシティブになるような方法を開発すること、が示されている。

第7章 ハラスメントと連邦法

ピンクバラ

EEOCのガイドライン

EEOCのガイドラインの重要性
「性に基づく嫌がらせは、1964年公民権法第七編(タイトル・セブン)七〇三条に違反する」という書き出しで始まる雇用平等委員会(EEOC)のセクシャル・ハラスメント(以下セクハラ)に関するガイドラインは、1980年11月10日に公布された。この書き出しが示唆しているように、このガイドラインはタイトル・セブンを補足する意味を持っている。
 もちろん、厳密にいえば、このガイドラインは法律ではない。政府の一機関による指針にすぎない。だが、セクハラはEEOCのガイドラインに沿って判断を示している。
 このため、セクハラはEEOCのガイドラインによって禁止されている、という表現がみられることもしばしばある。

 つまり、タイトル・セブン七〇三条とEEOCのガイドラインは一体と考えることが出来る。そこてせ、このガイドラインについて検討する前に、タイトル・セブンの七〇三条についてみてみよう。
 タイトル・セブンは、公民憲法における不法雇用行為の定義を中心としたものである。それによると、経営者の不法雇用行為は、次の二に分けられる。
 一つは、人種、肌の色、宗教、性別、出身地または出身国を理由に採用を拒否すること、解雇すること、またはその従業員の報酬、雇用期間、労働条件、または雇用上の特権に関して差別すること。

 もう一つは、人種、肌の色、宗教、性別、出身地または出身国を理由に従業員もしくは求職者を限定、分離、または分類することによって、雇用の機会を奪う、あるいは奪う傾向をもたせること、あるいは、また、それらの人々の従業員としての立場に不利な影響を与えることである。
 なお、EEOCやタイトル・セブンの詳細に関しては、日本人太平洋資料ネットワーク発行の拙著『米国の雇用平等法と在米日本企業の対応』などを参照されたい。
 
 セクハラは、このタイトル・セブンにおける性にもとづく差別とみなされている。
 ガイドラインの内容を説明する前に、何故それが重要なのかを理解する必要がある。
 ガイドラインの重要性の第一は、セクハラの訴えが行われたとき、EEOCの調査官がその訴えを検討する際に、ガイドラインを基準にするというがある。すなわち、ガイドラインに示された基準に従って、調査官は訴えが根拠のあるものかどうか判断するのである。

 次に、EEOC自身が訴える場合も、このガイドライン指標にしているということがある。また、被害者の弁護士も訴えが裁判所に認められるかどうか判断する際に、ガイドラインを基準に考えることになる。
 さらに、第3章でみたように、最高裁もガイドラインに依拠して判決を出している。
 このように、EEOCのガイドラインは、セクハラで訴える側、訴えられる側、訴えを調査する側、さらに訴えを検討し判断する側にも指針とされているのである。
 このガイドラインが重要なゆえんである。

ガイドラインの内容

 EEOCのセクハラに関するガイドラインは、セクハラの定義、その認定の方法、経営者の責任、予防措置などについて定めている。これらの点について説明しておこう。

1、 ハラスメント(セクハラ)の定義
まず、「歓迎されざる」という言葉が示しているように、セクハラは相手の意志に反したものであることが必要である。そのうえで、性的な内容を伴った言葉や肉体的な行為が雇用と関連して行われる場合が問題になるといえる。
雇用との関連は、たんにセクハラを拒否した場合に解雇など不利益を受けることにとどまらず、職場の環境に悪影響を与える場合も含まれる。職場環境への悪影響とは、被害を受けた本人の職務遂行能力への具体的な影響のみならず、不快感を持つなども含まれる。

2、 セクハラの認定方法
問題となった行為がセクハラに該当するかどうかを決定するにあたり、EEOCはまず、さまざまな記録を検討する、被害者の場合は問題の行為があった日時や商人などについて明確な記録を取っておくことが必要とされ、経営者には予防措置などが整備されていたことなどを示せるようにしておくことが重要であると示唆している。
 しかし、セクハラが違法行為であるかどうかは、結局ケース・バイ・ケースで判断されることになっている。したがって、こうすれば必ず訴えに勝てるという基準はない。

3、 経営者の責任
ガイドラインは、セクハラにおいて経営者も責任を負わせる可能性があることを明確に定めている。
とくに重要なことは、セクハラがあった事実を知らなくとも責任が課されることもあるということだ。また、従業員以外の人々の行為も責任を負わなければならないことにも注意を要する。
 問題が起こったとき、「ただちに適切な是正措置を取ったことが証明されれば」回避できるとされている。
しかし、何が「ただちに」であり、「適切」のかということについては明確でない。
この点を考慮すれば、いずれにせよ問題が解った時点で速やかに対応を講ずることが最善の策であるといえよう。
なお、このガイドラインでは、経営者はみずからその代理人、管理職と非従業員の責任を負うことになっている。また、同僚からのセクハラに対しては、雇用者や管理職が、その行為を知っている、あるいは知っているべきだと見なされる場合には、雇用者にも責任が問われるとしている。

4、 予防措置
ガイドラインには、「セクハラが起こるのを防止するために必要なあらゆる措置を取るべきである」としている。
 具体的には、積極的にこの問題を取り上げること、これを許さない姿勢を強く打ち出すこと、加害者への適切な処分を決めること、従業員の権利やセクハラへの対処の方法を教育すること、関係者がセンシティブになるような方法を開発すること、が示されている。

 これらについては、第5章で述べたように、社内での研修制度の設立や問題があった場合の処分の実施などが求められているといえよう。

セクハラに関連した連邦法

 すでにみたように、セクハラはタイトル・セブンによって禁止されている。しかし、タイトル・セブン以外にもこの問題に関連した連邦法は少なくない。
 とくに、合衆国憲法修正第十四条と全国労働関係法は重要である。これらについてみてみよう。

 憲法修正第十四条第一項の方の下における平等な保護を定めた条項は、セクハラの裁判で訴えの根拠となることが認められたこともある。
 シカゴ警察署のケースで、政府機関の管理職による職員へのセクハラがこの条項に違反するという判決が、81年イリノイ州の連邦地裁で出されたのはその一つだ。

 また、82年にミズーリ州では、州立大学に雇用されていた管理職がセクハラを行った場合、これを解雇することは大学の苦情処理手続きや憲法に違反しないとの決定がなされている。
 
 全国労働関係法は、もともと団結権、団体交渉権、争義権を定めたものである。この法律とその施行方法は、タイトル・セブンにほぼ同様な形で引き継がれている。
 このため、タイトル・セブンの解釈にあたっては、NLRAがしばしば参考にされる。
 1979年、NLRAを管轄する全国労働関係局は、経営者のセクハラに抗議して職場でストを行ったことに対する報復として女性従業員を解雇したことを不当解雇とする判断を示した。

 憲法修正第十四条とNLRA以外の連邦法で、セクハラに関連した主な法律の概略は次のとおり。
(1)  PL95−555。これは、タイトル・セブンの修正条項の一部である。その内容は、妊娠、出産ならびにこれらに伴う医療上の問題で、性にもとづき差別することを禁止するというもの。
(2)  63年同一賃金法。これは、公正労働基準法の改正条項で、性を理由に賃金格差を設けることを禁止したもの。これにより、同一労働同一賃金の原則が確立された。
(3)  大統領行政命令11246号。これには後、大統領行政命令11375号として改訂される。企業や団体が連邦政府機関と事業契約を結ぶ場合、その契約の中に性や人種、肌の色、宗教、出身地または出身国により従業員や求職者を差別しないことを盛り込むことを求めたもの。
(4)  職業教育法。連邦政府の賃金援助をうけている職業教育プログラムにおいて、性にもとづく偏見、ステレオタイプならびに差別をなくすための活動を含めることを求めたもの。また、この法律は、各州に対して性にもとづく偏見、ステレオタイプならびに差別をなくするためのフルタイムのコーディネーターを採用することを求めている。

(5)  複合雇用訓練法(CBTA)。この法律の下で資金援助を受けた事業に参加することや、それに関して雇用する際に、性差別を禁止したもの。

(6)  72年公民憲法第七編。同法は、アメリカに居住する人は、性を理由に、連邦政府から資金援助を受けている教育プログラムや活動への参加を拒否されることや、その恩恵を受けることを認めらないこと。あるいはその下で差別をうけることはない、と定めている。

(7)  74年女性教育衡平法。教育のあらゆるレベルにおいて、性にもとづくステレオタイプを打破するとともに、女女性への平等を実現するための活動を認めることを定めたもの。なお、衡平法とは、公正と正義の点で慣習法の不備を補う法律のこと。
  続く第8章 米国三菱の「セクハラ訴訟」と企業の課題

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