新婚といえば、男が一度は通る道、そう、ヤキモチです。強弱の差こそあれ、新妻の過去を知りたいと、勝手に想像してしまうのは、たぶん私一人ではないでしょう。このヤキモチという厄介なシロモノに取りつかれてしまったのです。

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10 男の暴力とやきもちと

本表紙

ピンクバラ―ホレた女の過去を知りたくなるわけ「ゴメン― 叩くつもりなかったー」 

思わず出てしまった手、この時点で二人は終わった‥‥。
 1974年11月24日、新婚生活2日目。
 なんとそのころから事件をやらかしていたのです。本来ならもっとも楽しい時、だったはず‥‥。
事件といっても、それはほとんど私のひとり相撲。勝手にあたふたしていただけのことで、それだけなら良かったのですが、彼女をも巻き込んでとんでもないこととなったのです。
もっともこれまで書いてきた事件のほとんどすべて、「私に原因あり」と言えるのですが。

 これから書くことは、とても醜く恥ずかしいこと。書くことで軽蔑されるのが恐かった。
今でもとても後悔していることです。でもあの頃の姿を描くこと、それは男がフェミニズムを語るためには欠かせないのではないかと思い、「ええい、ままよ」とペンを取りました。

当時の私、「人は誠、男はスカッと爽やか」をキャッチフレーズに、そのまんまを生きることで安らぎと自信をもっていました。前置きはともかく、本題に入ります。

新婚といえば、男が一度は通る道、そう、ヤキモチです。強弱の差こそあれ、新妻の過去を知りたいと、勝手に想像してしまうのは、たぶん私一人ではないでしょう。このヤキモチという厄介なシロモノに取りつかれてしまったのです。

そして、もう少しの所で彼女に逃げられるところでした。なのに間一髪というところで、なんと彼女に救われたという次第。
このときのことを離すと、彼女は怒りを隠そうとしません‥‥。

あれは新婚旅行から始まった。
なんと、事もあろうに、夜、ベッドで愛し合っていたる最中、ユキの頬をピシャリ、と叩いてしまった―
♂ ゴメンー 叩くつもりなかった― すまん、悪かった。
♀ ‥‥。
 目を丸くして驚いているユキ。

 自分でも信じられない事だった。付き合ってた時から、
「暴力は最低。質実剛健は自分の生き方だが、力で屈服さすことは性に合わん」
と公言してはばからなかった私なのだが‥‥。

 自分の愚かさにガクゼンとなった。身体からはみるみる力が抜けた。次の瞬間、
〈まさか― こんなことで‥‥、いや、そんな簡単に俺の事を嫌いになるはずない、せやけど一緒になったことを後悔したかも。最低や、そんなこと思わしたら〉
 ドキドキ胸が騒いだ。

♂ 手なんか出すなんて、最低や、オレはそんな‥‥。
 見れば、ショックと悔しさが入り混じった、なんともいえない表情のユキ。
〈どうしたら許してくれるかわからヘン・・‥、けど許せるもんなら許してほしい、頼む、笑顔に戻って―〉
♀ …‥。
 黙ったまま何も言わない、さっきまでメチャクチャ良かった仲がウソのようである。
 五分、十分、十五分・・‥、重苦しい、時だけ虚しく過ぎていく。
〈ひっつきたい― いややこんなん、いつもの楽しそうなユキの顔、見たい〉
 そっと肩に触れた―

♀ やめて―
♂ いや? ‥‥か。
♀ 向こうで寝る。
 そう言い残し、さっさとベッドから出て行った。ベッドに残された私は焦点が合わぬままボーっと抜け殻のシーッを見ているのが精一杯だった。

 ユキはシャワーを浴びている。
〈なんでやろう、なんで叩いたんやろう、まいった、ほんまに怒ってる。どうしたらええんや〉
 このときまで二人は一度としてケンカしたことがない。焦った・・‥じっとしてられない、たまらなくなって部屋を出た。夜空を見ながら考えると、少しは気が晴れた。
〈俺を信じて、人生を託してくれたんや・・‥、そうや、心から謝ろう〉

 夜空でアタマを冷やして戻ると、ユキはベッドで、ただ静かに目を瞑って横たわっていた。ベッドに近寄り、枕元にひざまづいた。
♂ 頼む、やり返して― 思いっきりオレをどついてくれー
  私は頬を突き出した。私流のやり方だ。
 ピシャリ、と痛みが走った。が、痛みが安心を与えてくれた。

〈これでちょっとは俺のこと見直してくれるやろ〉
♂ これで許してくれるとは思わんけど、許してもらえるなら許してほしい。今のオレにはこうして謝ることしかでけへん。
♀ ……。
 返事は返ってこない…・私は待った、ひたすらキゲンが良くなるように祈った。と、そのとき、
♀ 寝てください。わたし寝ますから。
 ドキッ、胸に刺さった。冷たい、あまりにも他人行儀だった。それまでのユキとはまるで別人ではないか。
〈‥‥・ショツクやってんなあ、よっぽど〉
♂ ほんまに悪かった。約束する、二度とせえへん。
♀ …‥。
 そのままずっとユキを見ていた。

 いつの間にか、ユキからかすかな寝息が聞こえてきた。
〈よかったぁ、寝てくれた。疲れててなあ、そうや思いっきり寝てイヤなこと忘れてくれ‥‥。ほんまに叩く気なんてなかったんや。ヤキモチがそうさせたんや〉
 ユキは寝た。寝られるぐらいなら、と安心した。

 彼女には学生時代、カレがいたという。そのカレとどんな関係だったのか、つい聞いてみたくなり、『どんなデートしてたの?』と、私は笑いながら聞いた。ユキは激しいキスを私にして、『キスしたよ、こんな』と、茶目っ気たっぷりに言ったのだ。
〈ええっー うそやろ? そんなことしてたんか〉
 瞬間、セックスもした―とパニクった。ズキンッと胸が痛みを起こった。

〈苦しい、あかん、忘れよ〉
 とするがままならない。
〈クソッ なんでやー〉
 と思ったとき、すでに手が出ていたという次第…。

 もうすでに真夜中になっていた。
 ユキの枕元に立っていた、せめてこうしていることが信頼を裏切ったことへの償いのような気がした。寝息を聞いていると安心した。
 ところが・・‥、安心したとたん、どういうことか、メラメラと燃えるような嫉妬が湧きおこり、再び胸が締められるように痛い。

〈クソッ、悔しい― ユキが誰とキスしてたー 俺のユキが、 う〜ん、なんでやねんー〉
 払っても払ってもユキと見知らぬカレのキスシーンが浮かんでくるではないか、いつの間にか、またもや嫉妬の嵐。たまらなくなり、ユキの寝顔を見た。

〈抱きつきたい、抱きついてたら忘れられる、嫌なの事〉

 そんな思いに悩まされながら、結局一睡もせず、朝になった。ユキの後日談だが、『あの時、離婚しようと思ったよ。すぐでなくても、この人とはやっていけなくなるってね』と言っている。なんとハネムーンで離婚を意識したとは。

 その日はなんとか彼女が寝てくれたことでおさまり、翌日、二度と手を出さないと誓うことでなんとか私を許してくれた、再び元気を取り戻した私は、なんとかまた楽しい旅行をと、つとめて明るく振る舞った。

 それから半年ほどヤキモチをやきながらもなんとか穏やかに暮らせた。ところが、このヤキモチという厄介なシロモノはそう簡単になくならない。いつも心のなかに潜んでいて、ちょっとしたきっかけで暴れ出す。
 この日もそうだつた、あれは出勤途中の車の中、妄想に襲われた‥‥。

〈ひょつとしたらセックスしてたんとちゃうか、カレと。…・まさか、いやわからん― もう― どうでもいいやないか、そんなこと。俺と一緒に暮らしてくれているやないか。

それ以上何の文句があるちゅうねん・・‥。ハツ、でも裸で抱き合っていたかも? クソッ、何でや― 胸が苦しい、なんなんやこれは、一体全体―〉

 一日中ヤキモチに振り回されて家に帰った。
 ユキを見るなり抱きついた。
♂ あかんわオレ、苦しいて、くるしいて、ユキが誰かとこんなこことしてたと思ったらもうたまらん、なっ、頼むからキスも何にもしてなかったと言うて。
♀ してなかったよ。
♂ ほんとー
♀ ほんとよ。
♂ でも信じらへん。ユキみたいな女、だれもほっとかへん。せやから苦しい。
♀ ・・‥。
 大きなため息をついていたユキ。とにかく何とか落ち着いた私は、食卓についた。
♂ オレと知り合う前のユキのこと、どうこう言うの、自分でもメチャクチヤやって、わかっているんよ。せやけどなんでこんなにくるしいんか・・・・、もうイヤやねん、こんなに苦しいの。
♀ 何でそうなるの? 不思議やねえ。
♂ そうやねん、アタマのなか、割って見せたいくらいや。
♀ ・・‥。
♂ どうしたん? しんどそうな顔して、風邪ひいたんか。
♀ ううん、ひいていない。
♂ じゃあなに?
♀ わかれへん。
♂ ??

〈ひょっとしてほんまに恋人となんかあったんかー まさか―〉
♂ オレのことイヤか。
♀ ・・‥。
♂ そんなことないわなあ、スキやんなあ。
♀ 好きでいたいの、でもだんだんそうじゃなくなっていくみたい。
♂ えつ!?
〈ちょっと待ってくれ、どういうこっちゃ?〉
♂ みたいって、自分の事やろ? どういうことなん? 自分の気持ちぐらい自分で何とかなるやろ。
♀ 好きでいたいのよ、ほんとに‥‥、でも、自分でもどうしょうもないの、どんどん離れていくのよ、ヒロから。
♂ オレから?
♀ 離れていく心を止められないの。
♂ !!
 ショック!! これまで、一緒に暮らして何度もヤキモチをやいた。その都度丁寧に付き合ってくれた。私が楽になるようにと、優しくかわいがってくれていた。

ところが今のユキは事もあろうに、もう好きではなくなる、このままだと嫌いになるといっているではないか。ヤキモチばっかり焼いていたら、いつかは嫌われることになる、そんな不安は抱いていた。が、こんなふうに言われるとは。

〈俺のことが好きでなくなるって? そんなんイヤや‥‥〉

 あっという間に。ヤキモチはどこかに消え去った。
〈俺を好きなユキはいていないんか、そんなことないやろ。まだ好きやろう。けどどうしょうもないって今言いよった〉

 不安が恐怖に変わるのに、さして時間はかからなかった。と、そのときついに先日、自分のしたことを思い出した。
〈ハッー ひょつとしてアレが、あの事まだ怒ってるのか〉
♂ このあいだの日曜日に写真破ったから、カレの。

♀ あれは腹が立ったわ。
♂ うん、申し訳ないと思っている。
♀ 一枚しかない写真だったし、わたしのものなのに、どうしてあんなことが出来るのかなあって。
♂ 悔しかってん、楽しそうに写っているユキ見て。
♀ 仕方ないでしょ、第一そんなことどうして私が言わなければならないの?
〈・・‥うん。そらそうや、俺と知り合う前のことやもんなあ。解っているんや、俺がおかしいこと言うてんのは。せやけどそれがヤキモチなんよ、出てきたらどうしょうもないんや〉

 このとき、ヤケるからしゃない、ヤキモチはどうしようもないんや、ユキにカレがおったからや、とユキのせいにしていた。が、それを問い詰めても嫌われることにしかならないも思っていた。

 少しは反省もある。とっさに考えた、考えればひらめくものである。
〈そうや、ヤキモチを隠したらいいんや。心の中でナンボヤイててもわからんはず。第一、好きや好きやって、こっちから言うからユキは安心するんや。だからあんな『好きでなくなるみたい』なんて人ごとみたいに言えるんや。ちょっと男らしいところを見せなあかん。そしたらユキも変わるかも・・‥〉

 私は俄然、恐怖から立ち直った。
♂ うん、もう言わへん。オレと出会う前のことなんか考えてもしゃあないことやった。
♀ そうでしょ…‥わたしはヒロっていう人が好きになったの。カレのほうが好きだったらカレを選んでいるょ。
♂ そういうこちゃなあ。まあいろいろヤキモチで迷惑かけたけど、よう考えてみたら下らんことや、何もこれからどうこうとするってことでもないしなあ。
♀ ?
♂ 多分もうヤキモチなんてヤケへんと思うわ。さっきユキ言ったみたいに「嫌いになっていく自分を止めることはできない」なんて、そんなことを言われるくらい情けないことはないもんなあ、オレも」

♀ そうよ、わたしそういうヒロが好きなのよ。
〈おおー やっぱり効いた。こういう風にあっさりしたらええんや、そしたら俺を捕まえとこって気になるんよ。ヨシヨシ、ここはもうひと押し〉
♂ まあ、オレかって好きな女いっぱいいてたし、彼女もいた。お互いさまやなあ。
♀ そうね。どっちも楽しかったんだから良かったね。
〈えつ、楽しかった? クソッ、何しててんいったい― ハッ、アカン。また考えている、考えるなー〉
♂ まあ済んだことやから。…・せやけどオレなんか、バタッと出会ったりしたら、また好きになってしまうかもしれへんなあ。

♀ ????
〈ハハハ、どうじゃ、参ったか、困っとる。俺かってモテるんじゃ、どうや、ヤケルやろ〉
 余裕でユキを見た。と、そのとき、
♀ いいよ、べつに。
♂ ええっー なんでや、好きになったら浮気するかもしれんで。
♀ そっちがしたら私もするもん。
♂ ええつ!?

つづく 11 愛もいろいろ
――結婚して20年