八党派連合政権の誕生により、少なくとも彼女の望んでいるような社会に一歩前進したと喜んでいた。日曜の朝、テレビを見ていた私は、得意げに彼女に「これから、俺たちもちょっとは生きやすくなるかもしれないね」と話しかけた 

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4 理解しているつもりでも
 ――女と男は根本的に違う

本表紙

ピンクバラ理解しているつもりでも―女と男は根本的に違う

 このぐらいフェミニズムを理解していたら、もう驚かされることもあるまい、と自負していた。そうです、なんだかんだと言っても、私もけっこう妻やフェミニズムには理解も示していたのです。

 かれこれ四年半ほど前(1993年)のこと。私は当時、政治に関心が強く、八党派連合政権の誕生により、少なくとも彼女の望んでいるような社会に一歩前進したと喜んでいた。日曜の朝、テレビを見ていた私は、得意げに彼女に「これから、俺たちもちょっとは生きやすくなるかもしれないね」と話しかけた。男女差別がなくなるとまでいかなくとも、その方向へは着実に進むような気がしたからだ。

 ところが、そういう私を遮った彼女、驚くべき言葉を発していた。フェミニズム、恐るべし。
♂ おもろなってきたわ、これからはようなるんちゃうかなあ政治も。民主主義も花開きそう。
♀ ‥‥。
〈あれっ…どうしたんやろ。関心ないんかなあ。これから日本もよくなるっちゅうのに〉
♂ テレビ面白いで、こっちきて見た方がいいよ。
♀ 政治? 興味ない‥‥。
 実に愛想のない返事。政治に関してはいつものことだが。
♂ そんなこと言うとったらあかのとちゃう? 女かて社会の動き、つかんどかんと。
♀ そんな知ったかって、別にどうってことないもん。
〈なにー ようそんなこというなあ、別にどうってことないって― フェミニズム云々言うてるんなら関係」おおいにありやがな。わかっとらんなあ〉
 わからない者には教えるしかない、少なくとも知っていて損はないはず。これは大事こと。かくして‥‥。
♂ 社会の流れとフェミニズムは大いに関係しているんちゃう? 自民単独政権から八党派連合政権に変わるやで。
♀ そんなことぐらいで何にも変わらないよ。
 まったく無関心といった様子で、平然と化粧台の前で髪をといている。
〈髪をとくほうが大事なん? ‥‥へえー、このくらいのこともわからんか。今、何が起こってるのかも。賢いと思ってたけど、なんやら抜けとるやないか。ふ〜んやっぱりしょせんは女やなあ〉

♂ ユキ、そんなことではあかんで。ユキらがしっかり社会をみつめていかんようにしていかんと。今、政治家たちも真剣に今後の日本、考えてるんやから、目を離したらあかんのと違うか。
〈まあこれだけ言えばちょっとはわかるやろ、世間で恥もかくまい。やっぱり俺も亭主や、どや、ええとこあるやろう〉

♀ テレビ見ている暇ないの、すること一杯あるから。代わりに聞いといてくれる、頼りにします。
 言い残し、さっさと自分の部屋に戻ろうとするではないか。見ようとする気などまるでうかがえない。

〈見ないんか、何を考えてるんや〉

♂ 俺が聞いてどうするねん。俺はようわかってるんや、解らんあんたが聞かなしゃあないやろ。
 ユキはむっとすると思った。が、平然と「かもしれないね」と言って。再び部屋のほうに行こうとする。
〈聞きたくないんか、そんなに〉
 この女、何を言っても柳に風、というところがある。今までの私ならそれでイラっときた。しかし、私には成長の跡がうかがえる。そしてこの番組だけは見ておきたい。

♂ ああ、おユキさん、今、コーヒー入れるから、飲んで行ったら。
♀ えつ、コーヒー !
 にっこり笑って、いそいそとこっちにきてイスに座るではないか。
〈ふふふ、まんまと成功。これでいやでもテレビを見よる〉
 おいしいコーヒーを飲み終わって、
♀ さあ、がんばらなくっちゃあ、
♂ そうやろう、がんばなアカンと思うやろう。
♀ うん、今日中にレジュメ作っとかないと、間に合わないのよ。
♂ うぬ? ‥‥。
〈話が通じない〉
♂ 今のテレビ、見ていなかったん?
♀ 見てたよ、ちゃんと。
♂ なら、ようわかったやろ。すごい変化が起ころうとしているんや、フェミニズムのいう社会に少なくとも一歩近づくんや、それは間違いないで。
♀ そうかなあ、そうはならないと思うよ。
〈ええっ、何を聞いてたんや。不思議なこと言うなあ〉
♂ どういう風に違うん? 社会はいい方向へ向かうよ。
♀ そう〜お、そう思うんなら、それでいいやん。
♂ そうや変わる。連合、多党制ちゅうもんは合議制や、自分とこに都合のええとこだけでは通らんようになる。それは間違いない、だからようなるねん。
♀ そのことに関してはそう思うよ。でもフェミニズムの目指すひとと、今度のことは関係ない。
♂ どうして?
♀ う〜ん、そうねえ、男の理論で動いているからだと思う。説明、得意じゃないからうまく言えないけど、感覚的に、変わらないって思うわ。直感よ。
〈感覚的? 直感ねえ、・・・・ハハハ。理論で困ったら直感ってか、そうかそこまで答えに窮したか、‥‥なら、もう追い詰めたったら可哀相〉
♂ なるほど直感か、わかったわかった。感覚的にそう思うんやな、そらしゃあないなあ。
♀ うん、女は男と違って・・‥、どう言うの? ほらっ、歴史の中の一時代、そう一つの時代を受け継いでいるって感じ。そうしてこれからも人類は続いて行く、その通過点の一部分なの。
♂ えつ、何て? ‥‥ようわからん、どういう意味?
♀ 男の人はだいがいが、生きている間がすべてでしょ。自分が死ねば終わりだって、だから自分のしたいことは生きているうちに全部するんだと。せいぜい自分の子孫ぐらいのことでしょ、考えるのは。

♂ ‥‥そらまあそうや、死んだら終わりや、天下取るのも、地位も財産も、自分が勝ち取ってこそや。他の人間がしても、気分が悪いだけや。男の価値は生きている間に何をしたかや、いや女の価値もそうやと思うわ。何も金や地位みたいな物欲だけやないよ。立派な生き方をして尊敬されることも入っているね。

♀ たぶん男の人はそうやろうし、女もそう思っているかもしれない。それは悪いことじゃないし、生き甲斐でもあるやろね。でも私にはそればかりではないの、
〈けったいなことを言う女やなあ、なんやそれ、意味が分からん〉
♂ 何やようわからん。あんたは違うんか、人に尊敬されたくないんか。
♀ ううん、そういうことじゃなくて、…・どういうかなあ、女にはね、次の世代に申し送りすればいい、っていう思いがあるの。
♂ 申し送り? 何やそれ。
〈申し送ってどうするねん、自分が活躍せんと意味ないやんか。それまでの苦労はどうするんよ。ほんまに報われなくていいんかよ〉
♀ 自分がこうだと思って生きているでしょ、生き方って。そういう生き方を誰かが素晴らしいと思って、いいところを受け継いでくれればそれでいいと思えるのよ。
♂ そんなもんいやや俺は。いつの時代でもええ、凄い男やってんなあって思われたいわ。竜馬や勝海舟みたいに。
♀ そらそうね。私だってあるよ。そういう欲求は。でもそうならなくても別にいいの。
♂ わからん、なんで別にいいのか。
〈ええかっこうするなあ、そんな気持ちあるはずがない〉
♂ 嘘やろう、そういう気持ちは信じられへんわ。
♀ だから違うのよ。男と女は。全ての女そうとは思わないけど。
♂ そういう女が他にもいるの?
♀ フェミニストの中にいると思うよ、そういう生き方が伝わってくるの。
♂ 子供を産むからか、女は。
♀ 子供を産まない女だっているよ。
♂ そうじゃなくて、ほら、産む性から来てるのかってこと。
♀ それはそうかもしれない、男にはそういう思いがないのだったら。
♂ ないねえ男には、そんなも聞いたこともない。
♀ だったらそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
〈何の話をしてるんや、こんなことが政治となんの関係あるんよ〉
♂ ユキがとにかくそう思っているのは解るけど、それが何で政治の体制が変わっても別に変らない、ってことにつながるんや。
〈ごまかされへんで、俺は〉
♀ 生き方の中に、いいと思うことを自分の生きているうちに何とかしよう、したいという気持ちありすぎると、どうしても短絡的になるよね。後の時代のことは後の時代の人間が考えればいいって。
〈そんなことあたりまえやないか、そんな先のことまでわしゃしらん〉
♀ フェミニストたちはもちろん今の社会が生きにくいから「私はこう生きる」って言ってるんだけど、社会の流れを急激に変えようとなんて思っていないし、変えられるものでもないよ。
♂ そらそうだ。
♀ ただ、誰が政治を動かしても、自分がしてこそ、と言う考えでなら、たいして変わりないって思えるの。
♂ ええっ…‥ふん、わかる、何となくわかる、今の政治なら変わらないって気がしてきた・・‥。
つづく 5メンツまるつぶれ
――俺はあんたの亭主