彼女の優しさに安らぎを求めるべく力なく帰還した‥‥・が、そこに待ち受けていたものは、疲れてだるそうにしている彼女のそっけない態度。そんな彼女の無愛想な表情についイライラし、 トップ画像

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5メンツまるつぶれ

本表紙

メンツまるつぶれ

――俺はあんたの亭主
 

「わたしはそんなこと言われたくないよ」

 彼女の口からこんな言葉が飛び出した。それはかなり以前のこと、家庭崩壊の危機にふんしていたカレー事件の頃(もっとも今も真剣勝負そのものなのだが)だった。

 言われた時は心臓にグサリと突き刺さり、かなりショツクを受けたものの、〈なんでこの俺が、そんなことを言われなあかのじゃ〉と怒り心頭、〈この女、人を傷つける名人か〉と収まらない。

 そして次の瞬間、信じている者にボーンとハネっ蹴られたような、なんとも虚しいすきま風を感じ、〈それだけは許さん〉という気持ちでいっぱいになった。そのすきま風が思いもよらない展開をもたらすことになるとは‥‥。

 コトの起こり、あれは疲れて仕事から帰った時だった‥‥。そのとき彼女も疲れていて、お互いバッドタミング、でもそれだけならよくあること、実は私、仕事先でとてもイヤな思いをしていたのです。

 それは彼女の優しさに安らぎを求めるべく力なく帰還した‥‥・が、そこに待ち受けていたものは、疲れてだるそうにしている彼女のそっけない態度。そんな彼女の無愛想な表情についイライラし、
〈もう少し愛想よくできないのか〉
 とストレスの矛先を彼女に向けてしまった…。
♂ 何か気に入らんことでもあるんかオレに―
♀ !?・・・・。
♂ そんなうっとうしい顔されたら、よけいしんどなるわー
♀ ・・・・・・。
♂ オレは疲れて帰ってきているんや、そんなときぐらい優しく気遣って欲しいやろう、だれでも― それもあかんのか、フェミニズムやっている人には。
〈なんのための女房やねん、ったく。フェミニズムでもなんでもやったらええけど、こっちは迷惑や〉
 寝耳に水、というような顔をしたユキ、落ち着いた態度で、
♀ わたしは別に何も思っていないよ、ただ疲れているだけ。フェミニズムがどうしたの?
〈ああそうか、疲れてのか…‥、せやけどお帰りぐら言え‥‥? ? カアッ‥‥俺はそんなに疲れていないっちゅうのか―〉

 腹が立ったが、疲れていると聞けば、どうしたやろ、と少しは気になる。
♂ 疲れているのか‥‥でも疲れていたってお帰りぐらい言えるやろう。ちょっとはニコニコしてくれてもいいんちゃうの、そんなにしんどそうにされたらこちまでしんどいわ。
♀ 言ったよ、聞こえなかったんちがう?
♂ そうかなあ? 聞こえへんかったで。
♀ そう、ごめん。
♂ オレが帰ってきているんやから、ニコニコしてえや。
♀ 今はそんな気になれないよ。
♂ なんでや、いいやろ、ちょっとぐらいは、いつもちゃんと考えているやろ、ユキの生き方…‥。別に大したことないやろう、アイソするぐらい。簡単なことや。

♀ ちょっとぐらいと言うけど、どうしてもわたしにそうしろっていうの? わたしはソンナこと言われたくないよ。
〈ソンナこと― 求める? あたりまえやろ、 旦那が女房に求めて何が悪い、他の女に求めたら、それこそあかんやろうが、ったく〉
♂ 当然の事やと思うでオレは―
♀ そうかなあ?
〈何もわからんなあ、この女は。普段やったらこんなこと言わへん、まいっているんや、今の俺は〉
♂ そんなことっていう言い方、ないちゃうか。一生懸命働いて、おまけにいやな思いをして帰ってきているんや。そんなこと言われたらたまったもんやないわ。こんな時ぐらい優しい気遣いがあってもええんちゃうか

それもアカンのかフェミニズムでは

この時、話している自分の言葉に、そうだその通りなんだ、と酔いしれた。みるみる満面の自信がみなぎった。
〈いつもあんたの生き方理解しようって頑張っているやないか、こんなときぐらいええんちゃうんか、愛しているやったら〉
♀ それって、心で思っているのだったらいいよ、いくら思っててくれても。でも、わたしに言わんといてくれる。どうしてそういうふうにして求めてくるのよ。言われる方はしんどいよ。
〈けったいなこと言う女やなあ、言わな解らんやないか、心で思っててどないするねん、アホちゃうか〉
 あまりのけったいなさに、思わずまじまじと顔を見てしまった。
〈ハハハ、やっぱりこの女も女やった、男みたいな強がり言うてても、しょせんは男の辛さがわかっとらん、そんな理屈、俺には通用せん〉
♂ 心で思っていたらええの!? あのなあ、心でイヤな女や思てるほうがよっぽどあかんのや。そんなもの裏切りや、相手への裏切り行為やと思うけどなあ。
♀ だったらわたしは裏切り者やねえ。
♂ えっー

しばらくショック状態になった。が、数分後、ようやく自分を立て直せた

〈理論で負けた悔しさで言うとるだけや、そうや、そうなんや、そんなこと思っているはずないやないか、俺の女房や〉
♀ …‥。
♂ 自分の事ばかり言うんやな、フェミニズムって‥‥・‥。自分がしんどかったらオレがどんなに苦しんでも知らん顔しておられるねんな・・‥。オレは男女平等はええことや思うよ。でもな、ユキみてたら女のほうが男より上みたいに思っている感じがするわ。そんな考えやったら孤独になるだけちゃうんか‥・‥男女平等やったらお互い思いやりのある暖かい家庭を望まな意味ないんちゃうか。
〈これでええ、思いやりはもっている女やから。うまいこと言うもんやな俺も、これでちょっとはわかるやろ〉
 ところがユキを見ると、キリッとしているではないか。さっき疲れているって言ってたのに。
♀ いいの、わたしは孤独でも、無理に相手に合わせて生きるのは止めたの‥・‥。そういう人がいいのだったらそういう人と一緒に暮らせば。わたしにはかまわないよ。
♂ ‥‥−
 この時、思わず腰が引けた。
♂ かまわないって、どういうこと‥‥。
〈あかん、これ以上言えば、また聞きたくもないこと聞かされる〉
 以前、この女に「離婚や―」と脅したことがある。ところが平然と、「しかたないね」と、いともあっさり切り返された。こっちは本気で言ったわけじゃない、なのに本気の返事が返ってきた。弾みと本気ではまったく勝負にならなかった。見た目はのほほんとしているのに、まったくもって人は見かけによらない。後の収拾に苦労した、たとえ夫婦でもいいかげんな気持ちでいい加減なことを言うものではない性根が入った。だが・・・・、今また、あの時の状況に似てきている。
 ハッと我に返った。

〈フェミニストは真剣勝負で生きているんや、ほんならこの女もそうなんや・・‥〉

と、その時、穏やかだが、ズシンと響くような声が聞こえた。
♀ どうとってくれてもいいよ。
〈ハハッー えらいこっちゃ、やっぱり来た― こんな話ししたかったんちゃう、ちょっと待って、構って欲しかっただけや〉
 タバコに火をつけた。うろたえているのを何とか笑顔でごまかした。だが、タバコを持つ手がどういうわけか細かく振動して止まらない。
♂ なにもそんなこと言うていないんやで。しんどいかったから、それだけやねん。得意先でイヤなことがあったから、それでイライラしてて、ついユキにあたってしもた…
♀ ‥・‥。
♂ 悪かったと思う、あたたかみがないなんて思っていない。
♀ どう思ってくれてもいいよ。無理にわたしに合わそうとしなくても。
♂ せんでもいいの? 合わそうと。
♀ もちろんそうよ。
♂ ありがとう。
♀ ただいつも言っているでしょ、しんどかったり辛かったりとか、そういうときは、そういってほしいの。
♂ ‥‥。
♀ こうこういうことで今苦しいから聞いてくれるって言ってくれればね。それだったらそっちがどういう状況か把握できるし、こっちは責められているんじゃなって解るもの。そのときは自然な関わり方ができると思うよ、さっきと違って。
♂ うん。
♀ さっき言われたことは強制でしょ、それは一方的な押し付けだけど、聞いてくれるって言われたら、どうするかはこちらに選択の余地があるってことでしょ。
♂ ああそうか、なるほどそういうふうに聞けばいいわけか、相手に、そうすれば聞いてもらえるわけか。
♀ 聞く余裕があればね。
♂ ????
〈なんや聞いてくれるんちゃうの?〉
♂ じゃあ今日みたいにそっちも疲れている時はどうなん?
♀ そらちょっとは聞こうと思うよ…・後はその時の内容次第ね。
♂ そうか、辛いことの中身次第ってことか。

〈じゃあ、ほんとに辛かったら聞いてくれるんや。そういうことや。ええ女やないか、なかなか。やっぱり俺に惚れている〉

♂ たしかにそうやか、オレは疲れているけど、ひょっとしてユキのほうがもっと疲れてるかもしれんわなあ。
♀ うん、ほんとうにすごく疲れているの。
♂ オレ、わからんかったわ。自分がメチャメチャイライラしてたから、ユキのことぜんぜん見えなかったわ。
♀ わたしのことが見えなくなっても構わないの。わたしは気づかってほしいと思っていないから。
♂ えっ、どうして? 疲れたりしたら気になるけど?
♀ それはそっちの思いでしょ。だから気になれば気にしてくれてもいいし、気にしなくてもいいの、わたしはそっちの思うことまでどうこうしたくないし、出来ることでもないから。要はどうあれ、わたしの態度が気に入らんと言って、そっちの機嫌を直すために私にこうしろああしろっていうのは、どこかおかしいでしょ。
♂ ふうむ。そうやなあ、へんやなあ、たしかに。オレを何とかしろって言ってるみたいやあ。
♀ 言っているんよ、そういうふうに。
〈う〜ん、言われてみればそうか。でもなんか変なことになって来たなあ。そらたしかにそうやけど、俺は夫やねんけどなあ、ちょっとぐらいはやっぱり気遣うもんちゃうんかなあ、女房だったら〉
♂ ユキの言うことは分かった。ただ全くないんか、オレが落ち込んでいるようす見てて、どうしたのかなあって気持ち。
♀ あるよ、気になるよ。
♂ ほんとー
〈やっぱりな、口ではそっけない子と言ってても、ポロポロッと出るんよ、それが女なんよ、その優しさが、よしよし〉
♀ でもそう思うんだけ。
♂ えっ― 思うだけ? それだけか。
〈思うだけって変やなあ、思ったら、何とかしたろう思うもんやけど〉
♀ それだけよ。
♂ 何かそれはおかしいなあ・・‥。人間、思ったら次があるんちゃうの?
♀ ある人もいるし、無い人もいるよ。
 つづく 6夫のセックスが「拷問」だって!