社表

「性の不一致」


 煌きを失った夫婦生活・性生活は倦怠感・ 性の不一致となる人が多い、新たな刺激・ 心地よさを付与し。避妊方法とし用いても 優れた特許取得ソフトノーブルは夫婦生活 での性の不一致を改善し、セックスレス及 びセックスレス夫婦になるのを防いでくれ ます。 

赤バラ夫婦生活での性の不一致、セックスレスを改善したい、イッて、完成された女になりたい。

本表紙大橋千津子 27歳/AV女優
●ブリーチした名残が毛先に残っている、腰まで伸びたストレートの髪、前髪は眉毛の下で切りそろえられている。取材中、システム手帳を見ながら、几帳面に答えてくれた。人なっつこく八重歯を見せながら笑う姿、白いタートルネックに黒いミニスカート。爪にはマニキュアを塗っていないのに艶がる。清潔感のある女性。
●東京出身の一人っ子。彼女が四歳の頃、両親が離婚。幼い頃から大阪の親戚の家に預けられるたり、東京の母親のもとに戻ったりと、東京、大阪を往復するような生活だった。中学、高校と東京で過ごし、大阪にいた二十歳のとき、交際1年4歳年上の男性と結婚。23歳で「性の不一致」を原因に離婚。離婚後、東京に戻りAV女優と風俗(ヘルス嬢)を兼業文章を入力してください。

◆離婚の原因はセックス

ピンクバラ電車の中でも、喫茶店でも、どこでも話せますよ。仕事柄だと思われるかもしれないけど、きわどいエッチな話、そういうの全然平気なんです、私。
 でも、最近ですよ、こんなふうになれたの。三年前に離婚してしばらくの間は、もう自分は男の人とセックスできないんじゃないかって、真剣に悩んでいましたね。
 離婚の原因はセックスです。旦那はすごくいい人。誰にでも優しいし、彼から人の悪口なんて聞いたことなかった。信頼もしていたし、その他のことは何の不満もなかったですね。離婚しちゃったのは、二人とも若かったし、我慢が足りなかったんでしょうけど。


 もとの旦那ですか? 十九歳のときにバイト先で知り合ったひとです。私、東京生まれなんですけど、大阪の叔母の家に預けられたりしてて、大阪と東京を行ったり来たりしてたんですよ。離婚して、四年前にひとりで東京に戻って来たんです。結婚したのは私が二十歳で、旦那が二十三歳のときでした。付き合って一年くらいで結婚して、同棲したときも入れて四年間一緒にいました。どんなところに魅(ひ)かれたかって? ええ、まあ、優しいところとか。私、好きになると周りが見なくなるくらいその人に夢中になっちゃうんですよ。熱しやすく、冷めやすい。惚(ほ)れっぽいんだけど、飽きっぽいっていうか。

 離婚の原因? こういうの、言葉で説明するのがすごく難しいなぁ。どう言ったらいいんだろう? 結婚して、いつの頃からか、はっきり解らないんだけど、旦那が私の中で「お父さん」になってきちゃったんですよね。「お父さん」だから、寄り添ったり、腕を組むのはいいけど、胸とか触ってきたら「うわー!」って感じでしょ? そんな感覚?だと思うんですよ。


 エッチが嫌いなわけじゃないですよ。十六歳で初めてして、覚えたての頃はもう猿のマスかきのごとくヤッていましたから(笑)。相手? 当時十八歳の高校の先輩の友達だった人。早く処女を捨てたかったから「やった!」といった感じでしたね。全然痛くもなくって、少し血が出たくらい。それどころか、嬉しさのあまり、何十分か後には、二回目をやりました(笑)。その人とは半年くらい付き合ったんだけど、別れて。すぐに他の男の人と付き合っていた。当時はナンパされるとすぐ(ホテル)行っちゃっていましたね。


 旦那ともつき合い始め頃は朝昼晩。一日三回が当たり前。旦那の会社、家の近くだったんで、お昼は家で食べてたんですよ。お昼ご飯食べ後、一回やって仕事に行く、みたいな感じだから、もう、食欲と性欲は一緒についてました。


 それで――結婚して二年経った頃だったと思うんでけど、私が全然濡(ぬ)れなくなっちゃって、ダメになっちゃったんです。なんでそうなったのか、さかのぼって考えてみてもいまだに分からないんでけどね。


 イザ、しようとしてもできない。原因は…私が濡れないから痛いのか、痛いから濡れないのか。もう、卵が先か、鶏が先かの話ですよ。心当たりですか?うーん、本当に解らないんですよー。でも、けっこう真剣に悩んだんですよ。「セックスって何でするんだろう?」とか、「なんでしなくっちゃいけないんだろう?」とか、そんなことばかり考えるようになっちゃって‥‥。

それがエスカレートしていって「エッチってそもそもなんだろう?」とか、そこまで考えましたから。
 それで、友達とかに相談したんだけど、結局、すごい責められるだけで‥‥。エッチするたびに、「私、ずっとこうやって、やっていかなくっちゃいけないのかなぁ」ってすごく辛かった。


 結局、半年ぐらいで離婚することになちゃって。結婚生活ですか? 三年くらいでしたね。
 離婚が決まるまでのその半年間は、苦痛で苦痛で仕方なかった。でも、離婚が決まって、家を借りるお金が溜まるまで半年くらいセックス抜きの同居させてもらったんだけど、そのときはすごい気が楽だったな。

 離婚に至るまでの経緯ですか? 最初のキッカケみたいなものは、家事をロクにしないことからですね。旦那がそのことですごい怒るようになって‥‥。


 もっとも私、毎日ご飯作らないで、ゲームばっかりやっていたから怒るのは当たり前ですよね(笑)。でも、それから、なにかにつけて怒ってくるようになってきたの。それまで、よほどのことがないと怒らなかった人だったのに。それで、旦那ことも知っている知り合いのおばさんに相談したのね。そしたら、考えてもいないことを言われてビックリ。


「それはセックスよー! 彼がそんな家事の事でゴチャゴチャ言うのは本当はどうでもいいことや。男がゴチャゴチャ言うのはセックスしかないやんやて!」
 言われてみれば、もう最後にいつしたか、わからないくらいしていないなーって‥‥。だから、旦那とくわしく、くわしく、話すことになって、そうしたら、最後にやっぱりセックスの話になって。私もそこでやっと、「そっか!」ってなったの。


 それかには、付き合いでセックスをするようになった。やっぱり、怒られたくないし、仲良くしたいし。でも「あー、もうそろそろ、せなあかんなぁ」みたいな感じだった。周りからも「あんたの勤めやで。旦那に浮気とかされても文句言われんよ」とかまでいわれてたし。

それでも辛くて辛くて、耐えられなくなっちゃったから、周りは心配してそういうふうに言ってくれるけど「いっそのこと浮気されるほうがいい!」って思うようになっちゃったの。だって、セックスっていっても、アソコにツバをつけてやっと入れる、そんなお粗末なやつだったのね。

私も一生懸命やっていたんだけど、全然濡れなくって。それでも一生懸命やっている旦那を見てたら、その姿がかわいそうに見えたのか、自分が哀れに思えてきたのか、解らいけど、泣けてきちゃって…。旦那も「もう、ええわ!」って怒っちゃったのね。そうしたら、私もカチンときちゃって、ますます、しなくなっちゃって、二人の関係はどんどん険悪になっちゃったの。

 別れてこっち(東京)に戻ってきたとき、「私、男の人とセックスできるのだろうか?また結婚できるんだろうか?」って男の人と付き合うのがすごく怖かった。離婚して初めてできた彼氏、とは言っても不倫だったけど、五十二歳の人。その人とのセックスのときも「ああ、ちゃんとできるんだろうか?」ってすごい不安で。でも、いざやると濡れて「ああ、大丈夫だぁ」って、すごい嬉しかった。


「私は濡れるんだぁ、セックスが人並みにできるんだぁ」って、それから、味を占めて何人も(笑)。ナンバとかでもバリバリに。もしかしたら(セックス)覚えたての頃よりしてたかもしんない。結局、今まで三ケタくらいの経験があるかな。でも、プライベートではまだ二桁くらい?


 私、「この人いいな」っておもったらすぐに付き合いだして、すぐに同棲しちゃうんです。でも、すぐに別れちゃう。飽きっぽいんですねー。多分、お母さんの血筋ですよ、これ。「同じ人とずっと」っていうのが性に合わないというか。だって、中学のときにお母さんと一緒に住み始めてから「お父さん」と呼んだ人が何人いたか(笑)。


 理想はね、付き合っている彼氏がいてツマミ食いをたまにして…罪悪感で「うーん、ダーリン」とか言っていつも以上に甘えてみたり。その方が上手くいくかな。ホントは浮気なんかしたくないんですよ。でも、それが同じ人と永く付き合うコツというか。どうしてもその人だけとセックスしていると嫌になってきちゃんですよ。

ときめいているうちは大好きなんだけどね。セックスが大好きと言うより、ときめいている相手と肌を合わせるのが大好きなんですよ。永く付き合っちゃうと、どうしてもときめかなくなるでしょう? ハタから見れば随分男に依存しているように思われるけど、どんなにふざけてても未だに男の人を「オマエ」って呼べない。それってやっぱり、男の人に全部自分を許してないからなのかなぁ。それも、イカない原因なのかも。
 
 ――AVの現場ではどうですか? プロの男優さん相手でも、やっぱりイカない?
 うーん、男優さんって、確かに女の体を扱うのは他の男よりはうまいとは思いますけど、まだあんまり数をこなしていないからよく解らないですね。


 でも、やっぱりイッたことはないから、撮影で演技するにしても出ちゃうんでしょうね。AVの監督さんに言われるんです。イクときの演技がヘタなんですって。実際に、カラミのシーン、取り直しされたことがあるんですよ。けっこうショックでした。その後も違う現場で、すごいちんちんの大きな男優さんがいて、“絶対入んない”って思ったから「疑似(挿入)にさせてください」ってお願いしたんですよ。そのときは、すべて演技の疑似カラミで乗り切りましたけど。内心ドキドキでした。また取り直しさせられるんじゃないかって、すごく不安で。


 この仕事するまでは、セックスのときの自分の演技が上手いかどうかなんて関係なかったですからね。取り直しの一件があって、イク演技を勉強しようと思いましたね。実際に、その一件以来、その監督さんの仕事をさせてもらっていないんですよ。なんか、仕事の少ないのも、演技がヘタなのかなあと思うようになっちゃって…・だから余計にイッてみたいんですよ。だって、そうしなかったらAV女優として使い物にならないじゃないですか。


 でも、何で私、歳を取って取っても、皆みたいに「イカない」んだろう。これ以上、私には何が足りないのかな。若い頃は、イカなくても「歳を取ればイクだろう」って思って安心していたからよかったんだけど。どんどん歳は取っていくのに、全然イカない。イク兆候すらない。いくら気持ち良くっても、すごくその男を愛していも、イケない。男の人と肌を重ねたり、体を求められたりするとすごく嬉しいし、相手が喜ぶ顔を身たるのも好きだし。「どうして?」って思い始めたら、悩むようになっちゃって。私、もしかして「女」として失格なんじゃないかって。

雑誌とか見ても、友達と喋ってても、頭には女としてだけじゃなくって、人間としてもしかしたら欠陥品なのかも、って。
 この頃、この悩みが自分の中でどんどん深刻になっちゃってて。今の女の子と一緒に遊んでいるほうがラク。男の人と付き合うのが怖くなっちゃってる。だって「セックスでイク」って「大人の仲間入り」するためのものだと思うんです。だから、早く捨てたい。イッてみたいんです。イッて、完成された女になりたいんです。


 どういうのがイッたことかって思うか? 解らないから想像と周りからの情報なんですけど、意識が朦朧(もうろう)として、本当に動けなくなるということじゃないかな?そういう体験、してみたい。でも、悩んでたからいろんな子に聞きまくって知ったんだけど、「自分がイッてるのか、イッてないのか、解らない」っていう女の子が一番多かったのね。

仕事柄、AVや風俗の友達も多いけど、普通の仕事してたときの友達の話聞いてみたんだ。それでも同じ答えが多かったなぁ。みんなそんなんでどうやってヤッているんだろう?もしかして、私の周りの女の子だけなのかなぁ。
 そんなこと知ってから「イク、イカない」が、ますます不思議になって来ちゃった。なんでそんな状態なのにみんな悩まないのー?

――じゃあ、どうすればイケると思う?
 これもなんとなくしか解らないけど、多分、心から信頼でき人とじっくり付き合うって、相手に「喜んでほしい」とか余計なことを考えないですんで、セックスに没頭できればイケるような気がする。


 オナニーも、随分前にしてみたこともあるけど。なんか、途中でこんなことしている自分が。ミジメになってきちゃって途中で止めた。オナニーは嫌い。なんか、自分が必要とされていないようで、それに、私、クリトリスが剥(む)けてないからオナニーでイクのは元々ムリだと思うなぁ。

 でも、男のほうにも原因があると思うんですよね。男の人って、みんな同じ愛撫しかしないじゃないですか。キスして胸舐めてアソコ舐めて入れて。それを考えると、結局、自分がイクことしか考えていない。ホント男って何にも考えてないのが解る。まぁ、たまたま私がしてきた男がそうだったのかもしれないけれど、だからいくら気持ちが良くっても、セックスっていうものが生まれてこのかた一度も「いいもの」だって思ったことない。

 だって、生まれて初めてセックスというものを見たときの印象が最悪だったもの。
 幼稚園のときだったかなー。お母さんと、今はいないお父さんがヤッているところを見ちゃったことがあるのね。その時のお母さんの喘(あえ)ぎ声と顔がすごく辛そうにみえて、男の人にひどいことをされていると思ったし、「お母さんが男の人に盗られる!」って思ったし。すんごく哀しくなってきて泣きそうになったの。今思うとやっぱり子供だったんだなぁって。そのことを思い出すと、なんともいえない妙な気持ちになる。


 四歳までいた最初のお父さんは、小指の爪だけが長かった。顔もロクに覚えていないのにそれだけはハッキリ覚えているんだ。ひとりっ子だった私は、大阪の親戚のおばちゃんのところに預けられたり、母親と一緒に東京に住んだりで、大阪と東京を行ったり来たりしてた。


 お母さんって、バツ2なのね。いつも必ず家には男の人がいた人だった。でも、私の中では人が変わろうと、誰でも同じ「お父さん」だった。そんな家庭環境だったけど。一人っ子だったから「欲しい」って言ったものは何もいわずに買ってもらえていた。でも、小学校二年、ああ、一年だったかな。義父に悪戯(いたずら)されたこともおったなぁ。何人目の義父だったかまでは覚えていないけど、それから、別に普通に育っていって。あっ、でも中学校の頃はシンナー吸っても、ゲーテ読んでいるようなヘンなヤツだったかもしれない。ははは。

 しかもその母親、去年、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)になっちゃって入院したりしていたから、だから、娘の私が働ける歳になったから母親に仕送りしてますよ。あんまり一緒に住んだことなかったけど、小さい頃、贅沢(ぜいたく)させてもらったと思うから、月に五万くらい送ってる。私も、とてもじゃないけど普通の仕事じゃ仕送りなんかできないから、だから、AVとか風俗とかをやっている。…・でも、それだけじゃなくって、自分で作ったエステのローンが百五十万もあるからなんですけどね。

 この仕事する前までは、ちゃんと普通に履歴書に書けるような仕事をやってたんですよ。結婚している時は歯科助手、保険の外交員。それぞれ一年半以上はやっていました。離婚してからも、カラオケボックスの店長を三年やっていたし。それを考えると、ウラの仕事するようになったのは、ホントここ最近なんですね。


 私、AVが最初で、風俗が後なのね。普通、風俗が始めで、AVが後なんだけど。なんだかかんだで、この仕事始めて、一年半ぐらい経つかな。街でスカウトされたのがキッカケ。スカウトされて二ヶ月ぐらいしてからだったかなぁ。ちょっと待って、手帳に書いてあるはず…・スカウトされたのが去年の五月〇日、初仕事は七月○○日。目線が入って顔が出ないやつ。内容? オシッコを二回する仕事だったと思うけど。


 それからずっと普通の仕事より割がいいから続けている。でも困ったのは生活。AVの仕事って毎日は入らないのね。せいぜい月に二、三本で、いいときでも月に二十万。それじゃあとても生活していけないってなって、風俗の仕事を始めたの。でも、風俗のお店の方はあんまり行っていない。なんか、合わないんだよね。あのお店の、窓がないせまーい個室が。なんか、待機している、っていうより「閉じ込められている」って感じで。

 独特の精子の臭いが染みついてるのもなんかね。それでも私の顔見せ用の写真には、AV嬢在籍!」と書かれてて、他の子よりかなり優遇されているのね。だからお店に行けば三万、四万は確実に稼げるんだけど、ギャラが安くてもAVの方の仕事にどうしても行っちゃう。最初は恥ずかしくってできなかったカラミも、今は出来るようになったしね。


 今は付き合っている人はいないの、だってこの歳になって男の人と付き合うというのは、もれなくセックスがついてくるってことでしょう? 男の人と付き合いしたいけど、セックスしなくちゃいけない、ってことが今は嫌いなの。いくら好きで付き合っていてもイケないんじゃ仕事でセックスしているのと同じじゃない。

セックスすればするほど、自分が解らなくなる。今の瞬間はプライベートなのか、仕事なのか。
 でも、何時かは…・セックスっていってもいろいろあると思うんだけど、ああ、これが本当のセックスなんだ!」って思えるようなセックスをしてみたいなぁ。そのときは絶対にイケるでしょう。いつイケるか? 子供を産んでからが勝負でしょう!

◆イカないと女としては認められない?イカないと女としては認められない?

一、二年前かなぁ、友達と一緒に飲みに行ったとき、隣の席の男の子たちの話を聞いていて愕然としたんです。
 男の子たちがワイ談してたんですけど、その時のある一言がすごいショックだった。一人の子が「○○て女いるじゃん。あいつさぁ、ヤッてるとすぐイッちゃうんだよね。イクーとか言って、すごいときは何度もイキまくり」って話すと、もう一人の子が言うの。「ウッソー! すごいねー。やっぱり女はイキまくるのがいいよなぁ。お前、いい女とやってるなぁ」って。

 要するに「あの女はイキ易いからすごくいい女だ!」って言っているわけでしょう? 私、よっぽど問い詰めたかったですよ。「イキ易い女がいい女なの? 何んで?」って。

 男の人って皆がそう考えてるわけじゃないんだろうけど、でも、すごいショックだった。「いくら綺麗な格好しても、いくら気合い入れて化粧してもイクことができなくっちゃ男の人はいい女とは言わないの? イキまくりの女がいい女だったら、私みたいな『イッことのない女』なんか男からすればもしかして女のとして認められていないの?」って‥…。

 でも、それで解ったんだけど、私って、もしかして肉体的なものにこだわり過ぎているのかも。精神的なものが大事だって思っているけど、好きじゃない人に少しでも触られると「自分が汚れる!」って思っちゃうもの。電車に乗るのも、美容師にとかに頭触られるのも嫌だし。でも、それって逆に考えるとすごく感じやすいってことになりますよね。実はそうだったりして。実は本人が気づいていないだけで、知らないうちに触られるだけでイッているのかも(笑)。

 どうやったらイケるのかなぁ? 私、自分でするとイケるのね。自分で初めてしてイッたのは小学校一年生のころ。オナニー歴は長いですよー。多分、人一倍イッてみたい気持ちは強いかも。だって、自分の指でこれぐらい気持ちイイんだから、「中に入れる」ということはすごいことだろうと子どもの頃から絶頂感を想像してたんですから。

 でも、実際、下は十四歳から上は四十七歳と合計十人ぐらい経験があっても全然イッたことない。だからいろんなことを考えましたよ。「もしかして私、男じゃダメなのかも?」とか「もしかしてSM趣味なの?」とか。何でそう考えたかと言うと、「縛られることは精神を解放することである」って何かの本に載っていたから。それに、その本によると小さい頃のトラウマとか関係しているって書いてあったし。私、父親に頻繁(ひんぱん)に叩かれていたから。ただそれだけなんだけど、だから私はそうなのかなぁって。

 いま付き合っている人ですか? いますよ。同棲しています。キッカケは、雑誌の「じゃまーる」の「ツーリング仲間募集!」で知り合ったバイク仲間の女友達の彼氏の友達。

 彼氏とはもう、「同棲」っていうよりも「共同生活」ですね。セックスも月に二回すればいいほうになっちゃったし。まだ一緒に暮らし始めて一年経つか経たないくらいなのに。

 そうなちゃった原因って多分、私がイカないから彼はプレッシャーを感じてるんだと思うのね。だって半年前に、「オマエ、終わった後、そんな顔すんな!」ってすごい怒られて、それからなんかしっくりいかなくなって。いい訳かも知んないけど、でも、しょうがないじゃない。(セックスを)すればするほど虚しくなってくるんだもの。心が「砂漠」になってるっていうか。

 でも、男の人にとってはそんな私の心の中の事なんか関係ないもんね。自分が女にした「仕事」の評価が「イカせること」だもんね。
 だけど、私、どうしても挿入されるとダメになっちゃうんだぁ。中に入れるのは私のなかでは、タブーなんですよ、未だに。子宮に当たり始めるとダメになるっていうか‥‥。タンポンだって私にとってはまだ妙だし。前戯まではあんなにいいのに。

 今の彼氏、第一印象は最悪だったんですよ。会う前に電話で話していたときはよかったけど、会ってみると全然電話との印象が違っていて。なにが一番好みでなかったかって言うと、挙動かな(笑)。声美人だったんですね、彼、彼のお母さんとも会ったことがあるんですけど。お母さんも声美人でした。

 私の好みって、自分のことはメチャクチャ棚にあげますけど(笑)、すごく体の線が細くて華奢(きゃしゃ)で色白で背が高くって、病的で危ない雰囲気をもっている人が好きなんですよ。簡単に言えば「ビジュアル系の人」もう王子様もバリバリ持ってるし。でも、何故か、いつも正反対のタイプら好かれるんだよねー。それで彼もいつものパターンで、めちゃめちゃ健康的な人で。健康的な人って一緒にいると疲れるからさけているんですね。

 だから、最初、彼と付き合う気は全くなかったんです。顔とかも全然好みじゃなかったし。
 そんなとき、私バイクで事故ちゃって、入院したんです。医者に「歩けるようになるのは一年後」って言われてすごく落ち込んじゃって。バイト人生だったし、親には頼れないし、「これから私、どうやって生きていけばいいの!」ってなって。あーあ。こんなこというと浅はかだって思われるから言いたくないんだけど…・そのときなんですよ、付き合い始めたの。
 彼が週一くらいでお見舞いに来てくれて、なんか自然に‥‥。自分の足がどうなるかの不安と、これからの生活の不安とゴッチャ混ぜになっちゃってて。何かにすがりつきたかったんでしょうね。

 自分が男の人に対して、のめり込み度が激しいって解ったし、何もできなくなる自分が嫌だったから、男の人を避けてきたんですけどね。でも結局、退院してから付き合いはじめたんです。しばらくして、彼氏の仕事の都合で都心から遠い仕事場になっちゃって。そこに通うはどっちの家からも遠いから一緒に部屋を借りようってなったの。それが同棲するキッカケ。

 今はまだ、事故の保険金で生活しています。いわゆる無職ですね。でも、貯金が百五十万ぐらいあるから何とかやっていける。先日、やっと自賠責保険のお金がおりることかが決まって、少しはホッとしています。でも、お金が入ると解ったら「貸して」って今一緒に住んでいる彼が言い始めて。

 彼も事故で苦労した経験があって、何もわからない私は頼りにしてたんです。でも、そう言われてから今の生活に疑問を持ち始めちゃって。
 だって、家賃からなにから折半で‥‥全然彼に頼って生活していないのに。むしろ、家事とか気がついたら私が全部やっているし。なんで貸さなくちゃいけないんだろうって思うの。確かに今は何もしなくてもお金が入るからいいんだけど、保険金だって私の体のお金であって、タダで貰える金じゃないですか。

 リハビリして足が動くようになったからいいものの、動かなくなってたことを考えると少ないお金だと思うし。なんか、彼が私とはお金目当てで付き合っている感じがしてきちゃって、まぁ私には前例があるから、そう考えちゃうのかもしれないですけどね。

 私、結婚経験があるんですよ。そのときの旦那がヒモになっちゃって。だから、お金と男の人が絡むとひいちゃうんですよね。
 結婚生活がとんでもなかったですね。「女ののど自慢」ってテレビあるでしょう? あんなふうに不幸―な、不幸―な感じで。暴力もあったし。
 暴力の原因ですか? 旦那に言われたんですよ。「水商売で働いてこい」って。
 旦那は五歳年上で自衛隊に入っていたんだけど、辞めてタクシーの運転手をしていた人。友達の紹介で知り合ったんです。

 出会ったころは、彼は一人暮らししてて、私は家を出たかったからその人を利用したみたいになって失礼だったんだけど、愛していたから籍入れたんです。今思うと、家を出たかったって言うのも確かにあったんだろうけど、小さい頃から蓄積されてた「甘えたい」って気持ちが暴走しちゃったんだと思うの。

 そうなったのは本当のお母親に逢って絶望してたからだけど、あ、これ後で話しますね。まだどこかに、「理想の母親」というものを求めてて追いかけてしまったんだと思います。そのことが直接的な家出と結婚の原因で、その人のことを愛していたんだろうけど、その人じゃなくても良かったのかもしれないですね。そう思うと。

 その頃の私って、結婚に酔っていたのもあったんだけど、結婚したんだから何でも夫の言うことを聞くのが「妻」だろうって思たんです。
 水商売で働けば月に五十万ぐらいは稼げるから、ローン早く返済できるし、貯金もできるから持ち家の土地を生かしてマンションを建てて家賃収入でラクに生活できるようになる。

そんな彼の計画に乗っちゃって「私頑張る!」って言っちゃったんです。そうしたら旦那が少しずつ変わりはじめてきても仕事を辞めて、ヒモみたいになっちゃったんです。

 前に、旦那が自慢気に「俺はソープ嬢に食わせてもらってたんだ」って言ってたことがあったのね。その話を聞いて、「凄い! リッチな生活したんだ」って思ったんだけど、「私も水商売からそういうところにいかされるのかなぁ」って不安になって。その頃から旦那のことが信じられなくなってきたのね。

 実家にいるときと同じになって来ちゃって‥‥。自分が出せなくなってきてきちゃったんです。旦那が親と同じになってきて、「あっ、お水こぼしちゃった。どうしよう、怒られちゃう」みたいな、いつもビクビクしている生活になっていったの。
 今思うと、水商売にいって良かったと思いますね。今まで着たことのない服を着れて、いままで縁のなかった煌(きら)びやかな世界にいれるということで、少し嬉しかった面もありましたし。知らない世界だったから一生懸命働きましたね。で、働き始めて、私もいろんな知恵がついて成長しちゃったんです。女の賢い生き方を教えてくれるお姉さんが周りに一杯いたし。

 結婚生活で自分が置かれている状況を言うと「ダメよそんな旦那! いますぐ出て来てウチに来なさい」って言ってくれるお姉さんとかもいて、旦那の家にしか帰れないいという私に選択肢が増えたんです。その余裕が私を冷静にさせたんだと思いますね。旦那にいつ「ソープで働いてこい」と言われるのか不安があったし。

 それ以上に。自分一人でお金が稼げるって自信が付いちゃったんです。だって自分が働いてきてクタクタなのに、旦那はなんにもしてくれなくて、それにあんまり優しくないし。なんで私だけ働いているかに疑問を持ちだして、愛している人にこんなところで働けっていうのだろうかって。

 そう思い始めたら、だんだん私も計画的になっちゃって。「時給がやすくなったから」とか「ノルマ指名とれなかったから罰金取られた」とかウソ言ってお金を全部渡さないで少しだけ渡すようになって。そして、残りは旦那が知らないバッグの中に入れておいて。

 そのときぐらいからかな、毎日のようにケンカするようになってきちゃったのって。しょっちゅう警察沙汰になっていた。でも、警察の人が助けに来てくれても夫婦だと全然関与できないみたいで、私がいくら「訴える!」と言ってもあんまり真剣に取り扱ってくれなかったんです。

 しょうがないから友達のところに転がり込んだりしたんだけど、それでも見つけ出して友達の家をメチャクチヤにしちゃったりして、もう、私も限界だったから離婚してくれってケンカのたびに言うようになって。旦那も若かったから、勢いで「離婚届ぐらいいくらでも書いてやる!」って書いてくれてハンコ押してくれたの。それを私はバッグに入れて持ち歩いていたんです。

 なんでって? すぐには出せなかったですね。やっぱりいいところがあったからかなぁ。今思うとなんで? って思いますけど。ホント。バカみたいですよね。
 それでもしばらくは家にいたんですけど、やっぱりケンカになって。そのときも部屋をメチャクチャにしちゃって、いつものごとく体をボコボコに殴られてガラスをも割った状況で。もう本当に限界がきて耐えられなくなっちゃったんです。

 警察の人が前に来たときに言ってた「籍を抜いて夫婦じゃなくなったら、訴えられる」って言葉を思い出して。それで警察の人が来た時に「訴える、訴える」って。

 次の日には区役所に提出してきて、友達の家に転がり込んで‥‥。しばらくして一人で部屋を借りるようになって。旦那の逆恨みが怖かったから、なるべく一か所に定住しないようにしていました。それから全く逢ってない。警察の人にも何も聞いていません。早く忘れたかったから。でも、最初は愛していたんでしょうね…自分という人間が必要とされているのが嬉しくて。

◆男の人には「母性」を求めている

セックスにしても、十四歳のときに初体験で一回経験してから、十七歳になるまで経験がなかったから、旦那が初体験みたいなものでしたし。
 体を触れあっているだけで幸せな気分になって心地よかったですね。旦那がテクニックがあったからとかそういうことでなくって(笑)生まれて初めて「(人に)触れたい」って思った男だったんです。まあ、それでも「イク感じ」みたいなものは分からなかったんですけどね。

 今思えば、その頃から男の人に「母性」っていうな「インスタントマザー」みたいなものを求めてたんじゃないかなぁ。例えば、「お母さん!」って甘えてダッコしてもらっている、やっぱり男だからセックスし始める。でも私が混乱しちゃって「なんでお母さんなのにセックスするの?」ってなっちゃうんです。私はダッコされているだけで十分なのに。

 もっと言えば、多分、私、今でもそうかもしれませんけど「彼氏」が欲しいわけじゃなくて、「理想のお母さん」が欲しいだけかもしれません。

 そんな考えになったのも、育った環境からだと思うんです。父親は私が三歳になるかならないか、のときに今の母親と結婚したの。再婚ってわけじゃなくて、私の生みの母親とは籍を入れていなかった。つまり、私は最初、戸籍の上では私生児だったのね。

 そのことは親から聞いたから知っていたんじゃなくて、自分の記憶の中に残っていたの。自分が生まれたときに母親と思っていた人とは違う人と。自分はなぜ生活しているのだろうって決定的なものが何かあったわけじゃないんだけど、なんていうか感覚的なもの。

 漂ってる空気が違っているっていうか。自分が小さい頃、周りにいた大人とか、自分を抱いていた人とは違うって。二、三歳の頃の記憶って結構あるもんだと思うんです。

 父親は戸籍上、初婚。もちろん今の母親は、戸籍上ちゃんと私の母親なんだけど、厳密に言えばステップマザー(義母)なんですよ。
 なんでそんなに複雑になったかというと、生みの親に逢ったときに聞いた話によれば、彼女はてっきり籍は入っているものだと思ってから、私を生んだんだって。でも、籍入ってなかった。それが原因で別れたみたい。すごく揉(も)めたみたいですね。まあ、何でそんなふうになったかまでは知りませんけど。
 
 実の母親に会ったのは小学六年生の頃だったかな。今でも、本当の母親に会って良かったと思っています。でも、正直、ガッカリでしたね。本当の母親、子供みたいだったから。

 私の中では、育ての母親よりもずっと素晴らしい人だと思ってた。私は聞きたいことが山積みだったのに、会話して二言目には「○○には騙された。私の人生はひどい。私の人生がひどいのは○○のせいだ」って父親の非難ばかりで。過去の事ばっかり引きずって生きているみたいに見えちゃって。そんなことしても仕方ないのに。

 例えば話のなかで、父親と義母に対して「私の代わりに育ててくれて・・・・」みたいな発言が少しでもあればよかったんだけど。私だったら、私が反対の立場だったら、どんな事情であれ自分の代わりに育ててくれたんだから、感謝の一言があってもいいだろうって思うんです。彼女は確かに私のことを「産んだ」かもしれないけど、会ったそのときもまだ子供を育て経験がなかったみたいだから「母親」ではないって思いました。

 実の母親に会ったことですか? 未だに親に言っていません。特に言う必要もないかな、と思って。でも、ホント、会って良かったと思いました。そうしていなかったら、未だに想像の中でどんどん理想像が膨(ふく)らんでいったでしょうから。

 その前は、義母が私に取る行動、言葉、全てにおいて物事をひねって捉(とら)えてましたね。「偽物だからこう言うんだ」って勝手に決めつけました。でも、本物に会ったことで「偽物」も「本物」も変わらないんだってことを知って変わりましたね。知らないから、一緒に毎日生活してて顔を合わせていないから、良く思えるんだってことも。

 それまで、義母のことは「親」と言うよりも「女」としてライバル視したんです。義母と仲が良くなったわけではなかったですけど、自分の中で親への見方が変わりましたね。

 本当に親が大嫌いだったんです。大人になって、見方が変わって今は昔ほどではないですけど。ウチの親って堅すぎるっていうか厳しいっていうか、子供にすごい期待している家だったんですよね。「東大に行っていないと人間じゃない!」っていう人たち。自分達は行っていないのに(笑)。

 三つ下と四つ下の弟達と違って、出来の悪い私は常に相手にされなかった。それどころか、意見もろくに聞いてくれなかったですね。何かすれば、なにもかも否定されてばっかりで。そういう環境も影響してくるのかなって、最近思うんです。自分の事をどうしても好きになれない環境だったから、未だにそれを引きずっている。

 自分が好きになれないのに、他人を好きになれるわけがないですもんね。
 結局、そんな親に耐えられなくなっちゃって。高校に入ってすぐに家に帰らないようになったんです。それで十七歳のときかなぁ、家、でちゃって、すぐに結婚して‥‥。っていうか、家を出たくて結婚したって感じかな。高校は、結局中退しちゃって。別に迷いはなかったですね。勉強嫌いだったから。

 結局、一年もたたないで離婚。同棲じゃなくって、ちゃんと籍を入れたのは自分の生みの母親みたくなりたくなかったからかもしれない。それに、やっぱり彼女の子供だなぁーって思うのは、男運があまりないみたい。最初はあっちのほうから近づいてきて、私はそんな気がないから邪険(じゃけん)に扱って。でも、いつもなんですけどいつの間にか立場が逆転してる。最後には「私を捨てないで!」になっちゃっているんですよね。

 しばらくして住んでた北海道を離れて、十九歳になるかならないかのときに上京したんです。東京の方が仕事一杯あるかなって思って。知り合いはいなかったけど、仲良くはなかったんだけど産みの母親が横浜にいたので。

 いろんなバイトしてましたね。やっていない仕事のほうが少ないかもしんない。水商売、ファミレスのウエトレスから歯科助手、警備員。二十一歳のときに水商売のお客さんの紹介で、株の先物とかもやっていた時期があるんですよ。そういう勉強ですか? 全然しなかったですよ。独学で十分やれましたね。損はしませんでしたけど、トントンでしたね。でも、あれだけの精神的な苦痛なのにそれじゃあな、ってなっちゃって一年ぐらいで辞めました。それからヌードグラビアのバイトも、風俗のバイトもしました。長くはやりませんでしたけど。

 風俗で働き始めたのは二十二、三の時だったかなぁ、自分にはあわなかったですね。
 前々から誘われてはいたんです。友達にソープとヘルスに行った子がいて、両方から。口々に「ラクだよ!」って言ってたから貧乏だったし迷ったんだけど、そこまでする気はなくて断りました。

 私、月に十二万あれば生活できる人なんですよ。それまで水商売やってときも、いくら店の人に「人手が足りないから出て!」って頼まれても自分のペースで仕事をしていましたから。それじゃあ、水商売をやっている必要がないだろう、って言われればそれまでなんだけど、普通の仕事よりも自分の時間ができるからやってたんです。でも、やっぱり気を遣うのに疲れちゃって‥‥

 風俗にはいるキッカケは、私、海外に二ヶ月ぐらい行っちゃったときがあって。海外に行っただけなら良かったんだけど、帰ってきたら一週間しないうちに子宮外妊娠で入院しちゃったから、それで苦しくなっちゃったんです。

 海外へは観光目的じゃなくて、自殺したくていったんです、すごく好きな人がいて、でもどうしても告白できる状況じゃなくて、でも好きで。その男の人は他に彼女がいた人だったから。

 もうどうしょうもなかったから「もう死ぬしかない」ってなったの。やっぱり引き止めてもらいたかったから、最後は成田から電話したのね。彼には私の意志が通じなかったみたいで「行ってらっしゃい、気をつけて」ぐらいで。それでまたショックで「やっぱり死ぬしかないんだ」って思いつめちゃって。

 死ぬと決めたら最後は楽しむだけ楽しんでみようってなって。ハワイ島だったんだけど、ダンスとかギターとか弾いているとことか見てて「ああ、私もやってみたい」ってなってきちゃって。結局、自殺どころかすごく充実した旅行で終わっちゃって。でも、帰って来たら倒れちゃった。子宮外妊娠だったのね。今考えるとよく帰って来られたなって、だって、一歩間違えば死んでたって状況だったから。卵管もひとつ取っちゃったし。このことで、今でも子宮とかにあたると恐いから「入れる」と冷めちゃうのかもしんない。

 すごい好きだった彼は「残念だったね」って言ってくれたけど、すんごく落ち込んじゃって。彼はすごく繊細な人だったから、責任感じちゃったんです。それで付き合ってた彼女とさらに絆が深まって、って感じになっちゃったの。なぁーか、いい役をしちゃったのね私って。

 それでお金がなくって風俗に行ったの。友達の紹介でヘルスに面接に行って、その日から働き始めて。
 仕事、したんだけど‥‥、ダメだった。体触られるのがダメで。

お客を殴り殺したくなる」感じ? そんなんなっちゃって。最初は「相手を傷つけまい」と思ってたんだけど、すぐにそれすらもバカバカしくなってきちゃって。男の人に文句言われるとどうすればいいか解んなくなっちゃうから、一日やってすぐ辞めた。そして水商売に戻って、またお金がなかったから風俗で仕事をしてまたすぐに辞めて、の繰り替えし。

 なんで嫌なのに風俗に戻たりしたかって言うと、私には合わないんだけど実家にいるときよりはラクだったのね。親に汚いものを見るような目で二十四時間見られてたから、風俗では五、六時間ぐらいでしょう、その時間だけ我慢すればいいし。ちゃんと我慢した分のお金が貰えるからよかったんでしょうね。

 ヌードのグラビアの仕事は十九歳の頃から単発でしていました。あれば仕事する、みたいな感じで。今でも話があれば。でも、この頃は巨乳ブームだからなぁ、私、胸がないから無理かも(笑)、その仕事を始めたキッカケは別にお金が欲しかったからじゃないんです。

 親バレとか全然きにしませんでした。むしろ、親にパレたかったというのがありましたね。もし私が写真に写っているのを親がみつけても、まさか私だとは思わないだろうって絶対の自信があったから。それに「ダメな私でも雑誌に出ることができるのよ!」って親に認めてもらいたかったのが強かったですね。
つづく 23歳で虚しい性の不一致「どうすればイクの?」って感じ
 大野由紀 21歳/フリーター