女と男の性戦略

セックスレスに陥らないにはSEXは体と心両方の快感を求めるもの心さえ満足すればいと言うは欺瞞に過ぎない自身の心と体の在り様を知ることで何を欲しているのか、何処をどうして欲しいのかをパートナーへ伝えることでセックスレスは回避できる。トップ画像

本表紙女と男の性戦略
デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

女が望むものは他のどんな動物種より選択をも凌(しの)ぐと言っていいだろう。

生殖機能に関して、女性は一生通じて約400個という限られた数の卵子しか排卵することができない。一方男性は一度に数百万個の精子を放出するが、その精子は1時間あたり約120万個の割合で補充されていく。

女性はセックスするたびに、大きな労力を強いられる危険を冒さなくてはならない。

子供を妊娠し9カ月にわたる労力、出産し、その後1・2年にわたる授乳という多大な労力を費やしながら育て、保護するといった人間の配偶者の好みはきわめて複雑で、謎に満ちている。

雌雄の能力は、子孫を残すための本能であって、軽率に使うことはできないし、もし相手を軽率に選んでしまったら、数年、あるいは数十年にわたって、自分の行為のツケを払い続けなくてはいけないからだ。

 現代の避妊技術の進歩は、こうしたリスクを大きく変えてしまった。現在の先進国では、女性は妊娠を恐れることなく、その場かぎりの情事を楽しむことができる。

 ピルを服用することで妊娠状態に子宮が擬態することで卵子を供給しないことで懐妊させない方法がもっともポピュラーである。最近少し流行りだしている子宮内装着(IUD)避妊方法もあるが、たまに子宮内損傷事故も発生している。いずれも薬剤を用いているために、薬害副作用および、または、懐妊、胎児奇形。あるいは、性感染症など危険との隣り合わせである。

 新発明され日本特許取得、ソフトノーブル(膣挿入避妊用具「超柔らかシリコーン製」)は上記既存避妊方法で発生する副作用であたり、面倒くさい、心地よさが失われるというようなリスクはない。避妊と心地よさをより高めるという二面性を持っている。
また、性行為に際し排卵期前後にノーブルウッシング(膣挿入温水洗浄器)を用いることで、既存の避妊方法より優れた効果を発揮する。また、性感染症予防にも適している。
 目次 女と男のだましあいヒトの性行動の進化

赤バラヒトの性行動の進化・隠れた心理

 いまから一世紀以上前、チャールズ・ダーウィンは、配偶行動の謎について、ひとつの革命期な理論を示した。ダーウィンは以前から、一部の生物が、自分の生存を妨げかねないような形質をわざわざ発達させているという奇妙な事実に頭を悩ませていた。多くの生物種において見られる、きらびやかな飾り羽、大きすぎる角といった目立ちやすい特徴は、その個体の生き残りという点では不利に働くようにみえる。
 いまから一世紀以上前、チャールズ・ダーウィンは、配偶行動の謎について、ひとつの革命期な理論を示した。ダーウィンは以前から、一部の生物が、自分の生存を妨げかねないような形質をわざわざ発達させているという奇妙な事実に頭を悩ませていた。多くの生物種において見られる、きらびやかな飾り羽、大きすぎる角といった目立ちやすい特徴は、その個体の生き残りという点では不利に働くようにみえる。

赤バラ性戦略という適応

 人間の配偶行動は戦略的であり、その戦略は、配偶者獲得のためのさまざまな問題を解決するために組み立てられている。人間がそうした問題を解決しているかを理解するには、まず性的な戦略を分析してみなくてはならない。戦略は、配偶者獲得の戦場で生き残るために必須のものなのだ。
 適応は、生き残りと繁殖という難問に対して、進化が編み出した解答である。数百万年におよぶ進化の歴史を通じて、自然淘汰は、生命の維持に必要な栄養分を供給するという問題を解決するために、身体のなかにさまざまな飢餓メカニズムを作り出した。また、何を食べ、何を食べないか(たとえば木の実や果物は口にしても、土や砂利は口にしない)と言う問題の解決のために、われわれの味蕾(みらい)は脂肪や糖分に敏感になっている。極端な暑さや寒さへの対応として、汗腺や身体を震わすメカニズムが生み出された。

赤バラ配偶者を選ぶ

世界のどんな文化においても、男女が、周りにいる異性すべてに同等の欲求を抱くことはない。一部の異性だけが配偶者の候補とされ、それ以外には関心は向けられないのがふつうだ。われわれ人間の性的欲求は、その他の欲求とはまったく同じ過程を経て成立したからである。たとえば、生き残るためには、どの食物を摂ればいいのかとい問題を考えてみよう。

赤バラ配偶者を惹きつける

配偶者として望ましい資質をそなえた男女は、誰からも求められている。そのため、そうした異性を見つけるというだけでは、配偶者の獲得に成功するとは限らない。険しい谷底に熟した木の実がなっているのに見つけたからといって、食料を得られるわけではないのと同じことだ。したがって、配偶行動の次の段階は、理想的な伴侶を勝ち取るための行動になる。
 カリフォルニア沿岸に生息するゾウアザラシの群れでは、繁殖期になると、オスがその鋭い牙を使ってライバルたちを一対一の決闘で打ち負かそうとする。吠え合いや格闘は、ときには一昼夜にもわたって続く。敗北したオスたちは、傷つき、血の流れる身体を浜に横たえることになる。

赤バラ配偶者をつなぎとめる

配偶者をつなぎとめておくことは、もうひとつの重要な適応的課題だ。自分の配偶者がライバルにとっても望ましい資質をもちつづけているかぎり、いつ奪われるかわからない。奪われてしまえば、これまで配偶者を惹きつけ、求愛し、獲得するのに注ぎ込んだ努力がすべて無になってしまう。
 さらに、配偶者が逃げ出すこともあり得る。今の相手では必要や欲求が満たされないから、さもなければもっと若く、強く、あるいは美しい相手が現れたために逃げてしまうのだ。そうした危険性がある以上、一度獲得した配偶者は、何としてもつなぎ止めておかねばならない。

赤バラ配偶者を取り替える

経済的困窮や性的不充足、虐待にも拘わらず、劣悪な配偶者の元に留まることは、貞節という点では称賛されるべきかもしれないが、次の世代に遺伝子を確実に伝えるという点からすると、なんのプラスにもならない。いま生きているわれわれは、そうした悪い配偶者の切り捨て時を知っていた人々の子孫なのである。
 配偶者の切り捨ては動物界にも例がみられる。一例を上げれば、ジュズカケバトは、ある繁殖シーズンから次のシーズンまでのあいで一雄一雌のつがいを保ち続けるのがふつうだが、ある状況の下ではつがいが壊れることもあり、その「離婚率」は、だいたいシーズンごとに二五パーセントにおよぶ。配偶関係が改称される最大の理由は、子どもができなかったことだ。

赤バラ男女間の摩擦

雄雌どちらか一方の性が、配偶者を選び、惹きつけ、つなぎとめ、あるいは取り替えるために発達させてきた戦略が、不幸にも、異性との摩擦を引き起こすことがある。シリアゲムシのメスは、オスが価値ある「婚姻ギフト」――ふつうは餌になる昆虫の死体――をもってこないかぎり、交尾に応じようとはしない。メスがその婚姻ギフトを食べているあいだに、オスはメスと交尾するのである。交尾のあいだ、オスは婚姻ギフトを軽く押さえている。交尾が終わる前にメスが贈り物をもって逃げ出すのを防ぐためだろう。

赤バラさまざまな状況

われわれが現在採用している配偶戦略は、先祖に作用していた淘汰圧によってつくりだされたものである。とはいえ、現在われわれがおかれている状況は、そうした戦略が進化した当時の状況とは異なっている。われわれの先祖は、自分で採取した野草を食べ、自分で捕まえた動物の肉を食べていた。
 われわれが配偶者獲得のために進化させてきた戦略もまた、生き残りのための戦略と同じく、現在でも生存と繁殖という目的にそぐわないものになりつつあるようだ。たとえば、エイズの出現によって、手当たり次第のセックスは、祖先が暮らしていた時代にくらべてはるかに危険なものになってしまった。

赤バラ性行動の理解をはばむもの

配偶者との結びつきは、人生においてもっとも深い満足感をもたらしてくれるし、それを欠いた人生はひどく空虚なものに思えるだろう。結局のところ、ひとりの配偶者とうまく幸福に暮らしていける人々は少なからず存在するのだ。しかし、われわれはあまりに長いあいだ、人間の配偶行動の真実から目をそらしつづけてきた不和や競争、そして駆け引きといっても、配偶行動において普遍的に見られる要素なのである。もし、男女関係という人生でもっとも魅惑的なものを真に理解しようとするなら、勇気を持ってそうした要素を直視しなければならない。

赤バラ女が望むもの

 人間の女性が、配偶者に対して真に望んでいるものは何かという問題は、何世紀ものあいだ、科学者のみならず世の男性たちを悩ませてきた。それにはもっともな理由がある。女性の配偶者の好みはきわめて複雑で、謎に満ちている。その複雑さたるや、雌雄を問わず、他のどんな動物種の選択をも凌ぐと言ってみいいだろう。

赤バラ何を好むか

われわれの祖先の女性が、ふたりの男のうちどちらかを選ぼうとしているとそうていしてみよう。一方の男が、莫大な富を惜しげもなく提供するというのにたいし、もうひとりひどくは吝嗇(りんしょく)だったとする。
 もし他の条件がすべて同じなら、けちな男より気前のいい男のほうが、彼女にとっては価値のある存在だ。気前のいい男は、自分が狩りで得た肉を分け与えて彼女の生存を助けてくれる。子供のために自分の時間やエネルギー、資源を犠牲にして、女性の繁殖成功度を高めてくれるのだ。

赤バラ経済力

人間の場合、女性が、資源を持った永続的な配偶者を好む傾向に進化させるには、三つの前提条件が必要だった。第一に、人類の進化の過程で、男性によってさまざまな資源が蓄積され、所有され、コントロールされるようになる必要があった。
 第二に、個人個人が所有する資産がそれぞれ異なり、またその資産のうちどれだけを女性や子どもたちに費やすかが、人によって異なっていなくてはならなかった。
 かりに、すべての男性が同じ資産を持ち、女性のために同じだけの量を提供しようとしていたならば、資源の多い方を好む傾向など発達させる必要もなかったはずだからだ。そして第三に、ひとりの男性と継続的に配偶関係を結ぶことで得られる利益が、何人もの男性と関係することの利益を上回っていなくてはならなかった。

赤バラ社会的地位

オースラリア北部沖合の二つの小さな島に住むティウィ族や、ヴェネズエラのヤノマミ族、パラグアイのアチェ族、ボッワナのクン族など、現在も伝統的な生活を守っている部族には、「ビッグマン」と呼ばれる人々がおり、大きな権力をもち、資源を手に入れる特権を享受している。この事実から、祖先たちの社会においては、男性はどんな社会的地位にいるかによって、その所有する資源の量がほぼ決定されていたと考えられる。

赤バラ年齢

女性が年上の男性を好む理由は、資源などの目に見えるもの以外にもある。年上の男性は、経験を積み、精神的にも安定しており、経済的にも頼りになることが多い。たとえばアメリカでは、男性は30代にさしかかると、感情的に安定し、常識をわきまえるようになり、信頼性を増す傾向がみられる。女性の配偶者選びに関する調査で、ある女性はこう回答している。「年上の男性の方が、真面目な話ができるから好感が持てる。年下の男性は幼稚で、人生を真剣に考えていない」。

赤バラ野心と勤勉さ

あらゆる戦略のなかで、勤勉に働くことが、過去から将来にいたる収入・昇進を最も確実にもたらすものの一つであることが明らかになった。自分は熱心に仕事をしていると答えた人々、および勤勉だと配偶者に評された人々は、そうでない人よりも教育水準や収入が高く、将来さらに高い収入と昇進が期待された。一般に、勤勉で野心的な人々は、怠惰で労働意欲の乏しい人々より、職場で高い地位を得ている。
 アメリカの女性たちは、将来出世しそうな男性を求める傾向が顕著なので、こうした勤勉さと出世との関連を熟知しているようだ。一例をあげれば、一九五〇年代に、大学生五千人を対象として、未来の配偶者にどんな資質を求めるかについて調査が行われたことがある。

赤バラ頼りがいと安定性

配偶者選択に関する国際調査でランク付けされた一八の項目のうち、「愛情」に次いで二番目と三番目に評価されたのが、「頼りがい」と「感情の安定性もしくは成熟度」だった。調査対象となった三七の文化圏のうち二一で、男性も女性も同じように配偶者に頼りがいを求めている。残りの一六の文化圏では、男女間に評価の違いがみられ、そのうち一五では女性のほうが男性よりも、配偶者の頼りがいを重視している。三七の文化圏全体を平均すると、必要度を3.00点万点としたとき、女性は「頼りがい」を2.69点に評価している。男性も同じくらいに重視しており、平均2.50点を与えている。

赤バラ知性

もし知性が、人類進化の歴史を通じて、経済的資源の所有を示す信頼できる資質でありつづけたとすれば、女性は、知的な配偶者を好む傾向を進化させたはずだ。配偶者選択に関する国際調査によれば、女性は実際に、「教育および知性」を、一八の望ましい資質のうち五番目にランク付けしている。
より絞り込んだ一三項目からなるリストを使用した調査では、「知性」は第二位にランク付けされおり、この結果は前世界共通だった。また、三七のち一〇の文化圏で、女性は男性よりも配偶者の知性を重要視している。エストニア人女性は、一三の望ましい資質のうち知性を第三位にあげているが、エストニア人男性は第五位に評価しているに過ぎない。

赤バラ協調性

長期にわたって配偶関係をうまく維持していくためには、配偶者と協力し合って、双方の利益になる目的を追求していく必要がある。絶えずいさかいを繰り返しているような関係では、目標達成が遠のくばかりだからだ。異なった性質をもつふたりをうまく?み合わせるには、配偶者の協調性が必要不可欠になる。
 破綻した一〇三組のカップルと長続きしている九九組を比較してみると、男女の役割分担についての価値観や、婚外セックスやロマンティシズム、宗教的信条といったものに対する姿勢において、前者の方に大きな不一致が見られたのである。

赤バラ体格と体力・健康

偉大なバスケットボール選手マジック・ジョンソンは、これまでに何千人という女性と寝てきたと告白したが、この事実はかならずしも、女性が優れた肉体や運動能力をそなえた男性を好む傾向があることを示している。数千人と言う数は衝撃的だが、女性がスポーツ選手に惹かれるという傾向そのものは驚くに当たらない。
  運動神経、体格、体力といった身体的特性は、女性が配偶者を選ぶ際に、参考になる貴重な情報を提供してくれるのだ。

赤バラ愛と献身

セックスは、女性が提供できるもっとも価値のある資源のひとつである。そのため、女性たちは、見境なくセックスを許そうとしない心理メカニズムを進化させてきた。女性が男性に愛情や誠実さ、優しさを求めるのは、自分が提供する資源に見合うだけのものを手にする確実な手段なのだ。
女性が男性の献身をいかに重視しているかは、次に紹介する具体的な事例から明らかだろう。(ただし、名前は変えてある)。マークとスーザンは二年前から付き合っており、ここ半年間は同棲していた。マークは四二歳で、専門職に就き経済的にも恵まれており、スーザンは二八歳の医学生だった。スーザンは結婚することを強く望んでいた。ふたりは愛し合っていたし、彼女は一、二年の内に子供を産みたいと思っていたからである。
 しかしマークは乗り気ではなかった、かれは一度結婚して失敗しており、うまくいくという絶対の自信がないかぎり二度目の結婚はしたくなかった。スーザンがなおも結婚を迫りつづけたので、マークは、それなら結婚前にあらかじめ何らかの取り決めを交わしておこうと言った。

赤バラ女が力をもつとき

西アフリカのカメルーンにあるバクウェリの社会は、女性たちが実際に権力を握った場合、どんなことが起こるかの格好の事例であり、「構造的弱者」理論に対する反証を提供してくれる。
 バクウェリの女性は、個人的にも経済的にも大きな力を持っている。彼女たちは男性よりも豊富な財産をもち、しかも支出が少ないからである。女性は農園で働くことによって収入を確保しているが、それと同時に一時的なセックスという大きな収入源をもつているのだ。
 バクウェリでは、女性一〇〇人あたりに対し、約二三六人もの男性がいる。この人口の不均衡は、農園で働くためには他の地方からたえず男たちが移り住んで来ることから生じたものだ。男女の数が極端に違うために、女性は配偶者を思い通りに選ぶことができる立場にある。

赤バラ女の好みの多様さ

われわれはようやく、女性が何を求めるのかという難問に、ほぼ答えを出せるだけのところまできた。女性たちは、配偶者に価値ある繁殖資源を提供するため、どの男性と配偶関係を結ぶかについてたいへん慎重で用心深く、熟慮に熟慮を重ねる。貴重な資源を持つ者は、それを見境なく手放したりはしないものだ。
配偶者の選択に失敗することは、繁殖に要するコストが莫大になることを意味した。配偶者の暴力や食料の欠乏、病気、子どもへの虐待、扶養責任の放棄といったものに脅えなくてはならないからだ。一方、正しい選択がもたらす利益は、食料の供給、保護、父親の資源を子どもに投資できることなど、枚挙にいとまがない。

赤バラ3 男は違うものを望んでいる。

女性をセックスに同意させるには多くの要求を満たさなくてはならなかったため、大部分の男性にとって、短期的な男女関係だけを求め続けることは多大なコストの支出を意味した。生殖に費やす労力の経済学から見ると、永続的な配偶関係を築かない事のコストは、到底払いきれないほど高いものについたのである。
結婚しなかった男性が覚悟しなければならいもうひとつのコストは、子供が生き残り、子孫を繁栄させることができないかもしれないということだ。われわれの祖先たちが暮らしてきた環境では、両親もしくは親族からの安定した資源の供給がなければ、嬰児、幼児は生き延びることはむずかしかった。

赤バラ若さ

若さは重要な手がかりである。というのは、女性の繁殖価値は、二〇代を過ぎると年と共に確実に下がっていくからだ。四〇歳を超えると、女性の?殖力は極めて低くなり、五〇歳ではほとんどゼロになる。このように、女性が繁殖能力を発揮できるのは、生涯のうち一時期だけに限られている。
 男性は、この手掛かりを重視して配偶者を選ぶ傾向がある。アメリカ人男性の大部分は、自分より年下の女性と結婚したいという願望を抱いている。一九三九年から八八年まで、全米のあらゆる地域の大学生を対象に行なわれた調査によれば、男子学生が理想とする結婚相手の年齢差は、つねに二・五前後だった。つまり、二一歳の平均的な男性は、一八・五歳の女性を好むということになる。

赤バラ身体的な美しさの基準

 それと同じように、われわれが女性の美しさを判断する基準は、その女性の繁殖能力を推測する手がかりを含んでいる。美は、それを観る者の目によって決定される。しかし、その目と、目の背後にある精神は、数百万年にわたる人類進化の歴史がかたちづくったものなのだ。
 われわれの祖先は、女性の健康と若さを判断するうえで、二種類の目に見える手掛かりを利用していた。ひとつは、豊かな唇、滑らかで張りのある肌、澄んだ目、光沢のある髪、引き締まった筋肉といた身体的な特徴であり、もうひとつは、きびきびとした若々しい足取り、表情の豊かさ、快活さといった行動上の特徴である。

赤バラ体形

容貌の美しさだけがすべてではない。身体の他の部分の特徴も、女性の繁殖能力を判定するうえで豊富な手掛かりを与えてくれる。どんな肉体的特徴を備えた女性が魅力的かという基準は、文化によって多岐にわたっており、豊満な体形が好まれる場合もあればスリムな体形が好まれることもあり、肌の色が明るい方が魅力的とされる場合もあれば、浅黒い肌が好まれることもある。
目や耳、あるいは性器など、身体のどの部分を重視するかという点も、文化によってさまざまである。アフリカの南西部に居住するコイ(ホッテントット)族の一支配者であるナマ族では、長い大陰唇が性的に魅力あるものとされる。

赤バラ外見の重要性

女性の外見は数多くの指標を提供してくれ、また男性の抱いている美の基準はそうした指標に合わせて進化してきた。そのため男性は、配偶者選択の際に、女性の外見と身体的魅力を高く評価するようになった。
1950年代、アメリカの五〇〇〇人の大学生を対象に、未来の妻もしくは夫にどんな資質を望むかを尋ねてみた調査では、男性は女性に比べ、「身体的魅力」をあげる頻度が高かった。

赤バラ男の地位と女の美しさ

男性が女性の魅力を重視することは、繁殖的価値以外の理由も存在する。それは男性の社会的地位と密接に関係しているものだ。配偶者は自分自身の鑑像だとよく言われ。男性は特に、社会的地位や評価、階級といったものを気にする。
 なぜなら、高い地位につくことは資源を手に入れる重要な手段であり、多くの資源をもつ男性ほど女性の目には魅力的に映るからだ。だから、男性が、どんな配偶者を持つかが社会的地位に影響するすると考えるようになるのは、ごく自然なことだろう。それにはまた、更なる資源をと新たな女性の獲得にもつながっていく。

ホモセクシュアルはどんな配偶者を好むか

ホモセクシュアルの男性は、女性だけでなく男性のパートナーを求めるところが違うだけで、その他の点では、異性愛の男性と多少なりとも似たパートナー選びの傾向を備えているのだろうか? それとも、かれらのパートナー選びの基準は、むしろ女性の方に近いのだろうか? あるいは、男女どちらとも異なる独自の傾向を持っているのか?
 男性全体のなかに占めるホモセクシュアルの比率は、いかなる文化、いかなる時代においても正確には知られていない。正確な数字を出すことを困難にしているひとつの原因は、ホモセクシュアルの定義があいまいである点にある。

赤バラ美の基準はメディアが決める?

広告業界は、若く、美しい女性たちがもつ普遍的な魅力を利用してきた。マディソン街(ニューヨークの広告業の中心地)はときに、恣意的で画一的な美の基準を人々に押し付けて従わせ、苦痛を与えたとして批判される。広告は不自然な美のイメージを押し売りし、そうしたイメージに自分を合わせるよう強要しいる、と言うのがその理由だ。

赤バラ純潔と貞節

女性は、排卵期にある時でも何一つ性的ディスプレィを行わないし、はっきりした嗅覚的なサインを分泌するわけでもない。実際、人間の女性は、だれにもわかるように排卵を行うという特異な適応をとげた点で、哺乳類の中でも例外的な存在なのだ。
このような「隠された排卵」は、女性が妊娠可能な状態にあるかどうか判断をむずかしくする。
 排卵が隠されているために、人間の配偶行動の基本ルールは根底から変わってしまった。女性は排卵期間だけではなく、月経周期の全期間を通じて男性を惹きつけることができるようになった。
最近行われた調査でも、不倫の有無を予測する唯一最良の指標は、結婚前のセックスに対する姿勢であることが明らかにされている。結婚前に多くの相手と性交渉をもっていた人々は、セックスの体験の少ない人よりも、不倫に走る割合が高かったのである。

赤バラ進化がつくりだした男の要求

人間の男性は、数々の特殊な適応的課題に直面してきたために、性に関する独自の心理メカニズムを進化させた。人間の配偶行動では結婚が中心的な役割を占めているために、男性は若い妻を求めるようになった。
 彼らの欲求もまた変化し、いま妊娠可能な状態にあるかどうかだけでなく、将来にわたって繁殖能力を維持できるかどうかによって、女性を評価するようになった。未来の配偶者の繁殖能力を予測する際には、その容姿が重要な手掛かりとなるため、男性は女性の容姿を重視するようになった。

赤バラ4、その場限りの情事

カジュアル・セックスは普遍的に見られる行為であり、進化的にも重要な意味をもっている。にもかかわらず、これまで行われてきた人間の配偶行動に関する研究は、その殆んど結婚だけに焦点を絞ったものだった。

赤バラ生理学的証拠

多くの文化で、男性が「大きなタマ(ビッグ・ボール)を持っているのがいい意味に使われるのは、文字どおりの意味ですぐれた機能をもっていることの隠喩的な表現なのだろう。しかし人間の睾丸は霊長類全体で最大であるわけではない。
より乱婚的な傾向のチンパンジーの睾丸は人間よりもはるかに大きく、体重の〇・二六九パーセント、人間の三倍以上に達する。この事実は、われわれの祖先が、チンパンジーほど乱婚的ではなかったことを示唆している。

赤バラ好色さ

一生のうちで何人の相手とセックスしたいかという問いに、男性は平均一八人と答えたのに対し、女性は四〜五人だった。これまで西欧社会では、男性が「征服した女」の数を自慢する傾向は、精神的未熟や男性としての自信の無さの裏返しだと解釈されてきたが、実際には、短期的な配偶関係を結ぶための適応を示すものである。

赤バラ愛人として望ましい条件

人として望ましい条件l
  一時的なセックス・パートナーを求める男性は、永続的な配偶者を求める場合と比較して、慎重で保守的な女性や、セックスに消極的な女性を避けがちである。また、永続的な配偶者を選ぶときとは正反対に、セックスの経験が豊富であることが高く評価される。
 このことは、性的豊富な女性は、経験の少ない女性よりも、簡単にセックスに応じてくれるという通念を反映したものだろう。男性は、未来の妻が性的に奔放であることを望まないが、セックス・パートナーが奔放であることはあまり気にしないか、むしろ好ましく思いさえする。

赤バラクーリッジ効果

クーリッジ効果は哺乳類全般に広くみられるものであり、何人もの研究者が観察している。ネズミ、羊、牛などのオスで、この効果は確認されているのだ。ある実験では、雄牛のいる囲いの中に雌牛を入れ、交尾がすんだのちに別の雌牛を入れ替えてみた。同じ雌牛をそのまま入れておくと雄牛の性的反応は急激衰えていったが、新しい雌牛を入れた場合には雄牛の反応は衰えることなく持続した。
 新しい雌牛を前にすると、雄牛は射精に至るまで興奮を維持しつづけ、その反応の強さは、八頭め、一〇頭め、あるいは一二頭めの場合でも、最初の雌牛に対するのと変わらなかったのである。
 結婚後一年が経過すると、セックスの頻度は最初の一ヶ月にくらべ約半分になり、その後も緩やかにではあるが低下していく。ドナルド・サイモンズの言を借りれば、「妻への欲望が衰えていくのは、ひとつの適応である‥‥それは、他の異性へ目を向けることを促すからだ」。

赤バラ性的な空想

性的空想という点では、男性と女性の間には大きな違いがある。日本、イギリス、アメリカの三カ国を対象とした調査によれば、男性は女性にくらべ、性的空想にふける頻度が二倍近い。
 睡眠中も、男性は女性よりも性的なことがらを夢に見ることが多い。男性の性的空想には、まったく関係のない人間や複数のパートナー、見知らぬ相手などがしばしばあらわれる。大部分の男性は、ひと続きの空想のなかで何度もセックスのパートナーを替えるのにたいし、女性はあまりパートナーを替えることが少ない。

赤バラ魅力の評価

セックスのあとで魅力の低下する現象は、すみやかな別離を促すことで、男性が望んでいない結婚を強いられたり、情事が世間に知られて評判が下がったりする危険を軽減させる機能を果たしているのだろうと言うのは、今のところ単なる推測にすぎない。

赤バラ性的なバリエーション

 売春は、これまで知られている限り、ほとんど全ての社会で行われている。アメリカには、一〇万ないし五〇万人の売春婦もしくは男娼がいると推定されている。また、ポーランドでは二三万人、エチオピアのアジスアベバでは八万人がそうした職業についている。
 かつての西ドイツでは、公式に登録された売春婦だけで五万人おり、その三倍が非合法に売春を行っていた。その顧客となるは、あらゆる文化を通じて男性が圧倒的に多い。キンゼイ調査によれば、アメリカ人男性の六九パーセントが買春の経験があり、また全体の一五パーセントは、定期的に売春婦と性交渉をもっていた。

赤バラ女にとっての利益

カジュアル・セックスの相手が、社会的地位の向上をもたらしてくれることもある。モデルのマーラ・メイプルズと実業家の大立者ドナルド・トランプの情事は、その典型的な例だろう。この情事のおかげで、メイプルスはたちまち有名になり、高額のギャラを提示され、新たな社交界のスターの仲間入りすることができた。
 性的に不一致のカップルはやがて破局に至ることが多いし、またどちらかが不倫に走りやすい。サミュエル・ジェイナスとシンシア・ジェイナスによれば、彼らが調査した離婚経験のある男女のうち二九パーセントまでが、自分たちが離婚した最大の理由はセックスの問題だと述べており、これは他のどんな理由よりも高かった。

赤バラカジュアル・セックスのコスト

あらゆる性戦略にはコストがかかるものであり、カジュアル・セックスも例外ではない。男性の場合は、性病をうつされたり、女たらしという悪い評判を立てられたり、相手の嫉妬に狂った夫から暴力を振るわれたりといった危険を覚悟しなければならない。どんな社会でも、殺人事件の大部分は、嫉妬深い男が浮気を疑ったことから起こっている。
 また、浮気性の夫には、妻からの仕返しに浮気されたり、離婚を被る危険が付きまとう。短期的な性戦略も、時間とエネルギーと経済的資源を要するものなのだ。

赤バラカジュアル・セックスに適した状況

 他の人々の性戦略が、カジュアル・セックスを促す場合がある。一九九〇年代のロシアのように、多くの男性が一過性の男女関係を望んでいるような状況下では、そもそも結婚しようとする男性の数が少ないので、女性は事実上カジュアル・セックスを強要されることになる。また、カップルのどちらかが不倫に走った場合、裏切られた方は腹いせに浮気をしようと思うだろう。

赤バラ力の源泉としてのセックス

人間の本性に対するこのような見方は、多くの人にとってショッキングなものかもしれない。男性が、手近の異性といとも簡単に寝てしまうことを知れば、世の女性たちは面白くないないだろう。
 男性にしても、自分の妻がいまだに恋愛ゲームに参加し、セックスを餌に他の男を誘って、ときおり不貞を働いていることを知れば、心穏やかではいられまい。人間の本性とは、ときとして恐ろしいものなのだ。

赤バラ5、パートナーを惹きつける

人間は社会的な真空状態のかで配偶者を得るのではない。望ましいパートナーを手に入れようとすれば、激しい社会的な軋轢(あつれき)が生じることになる。誘惑が成功するかどうかは、自分なら相手の潜在的な欲求を満たしてやれるというシグナルをうまく送るだけでなく、競争相手が送る誘惑のシグナルを妨害できるかどうかにかかっている。
そのため人類は、言葉で競争相手を貶(おとし)めるという、動物界でも他に類を見ない干渉手段を進化させてきた。ライバルの評判を失墜させるための中傷・懺言(ざんげん)・誹謗(ひぼう)などはすべて、うまく配偶者を惹きつけようとするプロセスの一環なのだ。

赤バラ資源のディスプレィ

人間の男性もまた、配偶者を惹きつけるために、大きな労力を費やして自分の持つ資源を誇示する。われわれが行った調査によれば、人間の男女が配偶者を惹きつけるために用いている戦略はじつに数十種類におよぶことが明らかになった。
 調査対象にしたのはカリフォルニア大学バークレー校、ハーヴァード大学、ミシガン大学の学生数百人で、自分や知人がどんな異性誘惑の戦略を取っているかを列挙してもらった。学生たちがあげた例の中には、自分の長所を売り込む、どれだけ重要な仕事をしているかを話す、相手の悩みを同情してみせる。視線でコンタクトを試みる、セクシーな服を着る、などあった。

赤バラ献身のディスプレィ

恋愛における強い熱意の効果は、ある新婚の女性が語った次のようなエピソードにあらわれている。「最初、私はジョンに何の関心も抱いていなかったわ。なんだか退屈そうな人に思えたから、誘われても断り続けたの。でも、彼は何度も電話をくれたり、職場に訪ねてきたり、私と会えそうな機会をつくろうとしたのね。
それで、とうとうデートしてあげたわけ。そうすれば、ジョンもあまりつきまとわなくなると思ったんだけど、一回のデートが二回、三回になって、6カ月後には私たち、結婚したの」

赤バラ身体的能力のディスプレィ

 ライバルの体力や運動神経をけなす戦略は、永続的な配偶者を得ようとする場合より、カジュアル・セックスの場合には効力を発揮するのである。ライバルが肉体的にひ弱だと中傷したり、スポーツの試合でライバルを打ち負かしたり、力で圧倒したりすることは、いずれも長期的な戦術としてより短期的な戦術として有効だと見なされた。

赤バラ容姿の改善

女性が行う容姿の改善には、ただ男性の目を惹く以上のものがある。外見を粉飾することで、何種類ものだましの戦術を駆使するのである。たとえば、人工の爪をつけて手を長く見せたり、ハイヒールを履いて背を高く、身体をほっそりと見せたりする。痩せて見えるように暗い色や縦縞の服を着て、色を浅黒く見せるために日焼けサロンにかよう。
体形をスリムに見せるために腹部を締めつけたり、グラマーに見せるためにパッドを入れたたり、若く見せるために髪を染めたりもする。身体的な特徴は、ごまかすのが不可能ではない。
 血色のいい頬や生気に富んだ顔色は、男性が女性の健康を判断する際の基準であり、だからこそ女性たちはいい頬を人工的に赤く塗って、男性を惹きつけようとする。男性が、滑らかでしみひとつない肌を好む傾向を進化させてきたからこそ、女性は染みを隠し、モイスチャー・クリームを使い、顔のシワ取り手術を受ける。

赤バラ貞節のディプレィ

永続的な配偶関係における貞節の重要性は、女性がライバルを誹謗する戦術から間接的に知ることが出来る。大学生を対象とした調査によれば、女性が配偶者市場でライバルを蹴落とそうとするとき、最も有効な戦術は、、「あの女は、ひとりの男だけに尽くすタイプじゃない」と告げ口することだった。おなじように、ライバルを移り気だ、尻軽だと中傷したり、たくさんの男と寝ていると言いふらすことなども、女性が用いる誹謗の戦術のうち、有効度が上位一〇パーセントに入ると、評価されている。

赤バラ性的なサインを送る

 実際女性が、セックスの可能性の高さを示すシグナルは、男性を永続的な配偶関係に引きずり込む戦略の一環として、いわば疑似餌(ルアー)の役割を果たすことが多い。女性が男性の注意と関心を惹く唯一の方法が、みずからを性的な餌として、男性の前に(ただし、釣り糸がついていることが解らないように)差し出すことである場合もある。

赤バラセックスを餌にする

男性も女性も、異性の?を警戒している。セックスに応じようとする女性は、しかるべき扱いと献身を要求し、嘘を見破って、隠された本音を知ろうとする。一方で男性は、真の感情を隠し、うわべだけは献身的に装いながら、実際には本音を漏らさず、献身というコストを支払わずに性的な利益だけを手に入れようともくろんでいる。

赤バラ6、ともに暮らす

たがいに献身的でありつづけるカップルは、大きな利益を手にすることができる。技術面でも補い合い、労働の分担し、資源を共有し、共通の敵に協力して立ち向かい、安定した家庭環境で子供を教育し、親族ネットワークを拡張するといった事が、効率的に行えるからだ。だが、こうした利益を享受するためには、獲得した配偶者を繋ぎとめ置く必要がある。
 継続的な配偶関係を結んでいるカップルは、平均するとほぼ同じ価値を持つ男女から構成されていることが多いため、関係が破綻した場合に男女双方が失うものもほぼ等しいことになる。

赤バラ性的嫉妬の機能

嫉妬を抱く頻度やその感情の強さは、男性も女性も変わらない。恋愛関係にある一五〇組の男女を対象としたある調査で、自分が全般的にどれだけ嫉妬深いか、特に恋人が他の異性と関係をもつことにたいしてはどうか、そうした嫉妬がふたりの関係にどの程度影響をおよぼしているかを答えてもらったところ、男性も女性も、同じくらいの強さで嫉妬を感じることが明らかになった。
 男女双方が嫉妬という感情を経験し、その感情の強さにも差がないことが立証されたのである。

赤バラなぜ嫉妬による殺人が起こるか

妻を寝取られながら何もせず泣き寝入りするような男は、嘲りの対象となり、評判を落とすことになる。さらに、一夫多妻制の社会では、不貞を働いた妻を殺害することは、その男性の名誉を回復するとともに、残りの妻たちの浮気を防ぐ強力な抑止力としてはたく。
逆に、妻ひとりに浮気されながら何の行動も起こさない男性は、将来簡単に妻を寝取られる危険を背負い込むことになる。人類の進化史において、ある状況のもとでは、不実な妻の殺害は、ダメージを減らし、繁殖上の資源流失を防ぐための方策でありえたのだ。

赤バラ配偶者の欲求を満たす

恋人のいる大学生一〇二人を対象に、自分がどの行為をどれくらいの頻度で行っているか答えてもらった。さらに新婚の男女には、結婚五年目を迎えたときに、どんな配偶者確保戦術を使っているかを再度回答してもらった。また大学生四六人からなる別のグループに、それぞれの戦略を男性が用いた場合と女性が用いた場合とでは効果がどう異なるかを判定させた。
 その結果、パートナーの本来の欲求を満たしてやることは、配偶者確保の戦術としてきわめて効果的であることが立証された。女性は、配偶者を選ぶ際に愛と優しさを求めることが多いので、妻を繋ぎとめようとする男性からすれば、愛情と優しさを示すことは非常に有効な戦術となる。

赤バラ感情を操作する

ひとつの感情操作戦術として、相手の性的嫉妬を意図的に誘発し、配偶者を繋ぎとめるのに利用することがある。この戦術に分類される行為としては、「配偶者を嫉妬させるために、異性とデートする」「パーティの席上で、わざと異性と会話して見せる」「他の異性に興味がある振りをして、配偶者をやきもきさせる」などがあげられる。

赤バラ競争者を寄せ付けない方法

男性に厳重に警護されたハーレムに女性を囲い込む習慣も、人類の歴史を通じて普遍的に見られるもののひとつだ。ハーレムという言葉は、もともと「禁じられたもの」を意味している。実際、女性がハーレムから逃げ出すことは、外部の男性がハーレムに忍び込むのと同じくらい難しかった。
ハーレムの主が警護のために使ったのは宦官(かんかん)たちだった。一六世紀のインドでは、奴隷商人が王候たちに、去勢されたベンガル人奴隷をたえず供給していたが、ベンガル人宦官たちは、睾丸だけではなく男性生殖器全体を切除されていた。

赤バラ暴力的な戦術

浮気の抑止策として、文化的に是認されたかたちで暴力が行使されることがある。北および中央アフリカ、アラビア、インドネシア、マレーシアの数多くの部族では、さまざまな方法で性器を損傷させることにより、婚外セックスを防止する慣習が発達していた。クリトリスの割礼、すなわち女性が性的快感を得られないように、クリトリスを外科的に切除することは、現在でも数百万人のアフリカ人女性に施されている。
スーダンでは、子供を産んだ女性はクリトリスを鎖陰され、縫合が解かれるまで性交することができない。ふつう、女性に鎖陰を施すかどうかは決めるのは夫だが、なかには女性が出産したあと、みずから進んで大陰唇を縫い縮めるように求める場合もある。そうした方が夫により強い性的快感を与えられると信じての事だ。スーダンの女性の場合、もし夫に快楽を与えられなければ、離縁され、子供や資源を失い、自分の親族全員に不名誉をもたらすことになりかねない。

赤バラ利害の一致

利害に対する有効な解決策は、ふつう、いくつかの方法からなる。第一は、関係を維持するに十分な適応上の資源を配偶者に供給することである。第二には、競争者を配偶者に近づけないことであり、具体的には、配偶関係にあることを公に告知したり、配偶者を他人から隔離することなどがあげられる。
第三が感情の操作で、自分の価値を高めるために嫉妬を逆用したり、配偶者を立てて譲歩したり、、ライバルの男(もしくは女)はパートナーとしてふさわしくないと中傷するといった方法が用いられる。最後に、犠牲となる者にとってはきわめて不幸なことだが、暴力的な手段があげられる。たとえば、浮気した疑いのある配偶者を罰したり、ライバルに肉体的な暴行を加えたり、といった行動だ。

赤バラ7 男女間の軋轢

最初に男女間の軋轢(コンフリクト)の研究に着手したとき、私はこの問題をできるかぎり広く把握したいと考えた。そのため、まず数百人の男女に、異性を怒らせ、動揺させ、いらだたせると思われる行為を片端からあげてもらった。この依頼に対する人々の反応はきわめてよく、異性を怒らせたり、いらだたせると思われる行為が一四七種類もリストアップされた。
 それは、恩着せがましいふるまい、侮辱、身体的な虐待といったものから、性的暴行、セックスに応じないこと、性差別、性的な裏切り行為にまでおよんでいた。こうした男女間の軋轢を起こす要因の基本的なリストが作成できたので、私と共同研究者たちは、そのうち軋轢を引き起こす頻度が最も高いものはどれか、またもっとも激しい軋轢を生じさせるものはどれかを、恋愛もしくは婚姻関係のある男女五〇〇人以上を対象に調査した。

赤バラセックスの機会

男性は、女性の意図が良く解らない場合、まず性的関心があるものと考えがちのようだ。彼らはその推測にしたがって行動し、ときにはただちにセックスを行おとする。進化の歴史を通じて、こうした男性の誤解が現実にセックスへと結びついた例がわずかでもあれば、男性が女性の意図をすぐ性的に解釈しがちな傾向を進化させてきたとしても不思議ではない。
 他人がどんな意図や関心を抱いているのかを正確に知ることは不可能である以上、男性が女性の性的関心を誤って解釈していると断定することはできない。しかし、女性が性的関心を抱いていると男性が判断する基準が、きわめて甘いものであるということだけは、確実に言えるだろう。
 こうした男性の心理メカニズムがいったんできあがると、今度はそれを操作することが可能になる。女性はその操作の戦術として、自分の性的魅力を利用する。大学生二〇〇人を対象とした調査によれば、女性は男性に比べ、異性からちやほやされるための手段として、笑いかけたりしていちゃついて見せたりすることが多い。たとえ相手の男とセックスする気がなくても、そうするのである。

赤バラ感情的な献身

感情の起伏を激しくするのは、男性の献身を確実なものにするために女性が用いる戦術のひとつなのだ。男性が気分屋の女性を嫌うのは、本来他の目的にまわすはずだった労力を、そのために費やせざるをえないからである。
感情の起伏の激しさは、男女間の絆の強さをテストするための測定装置としても機能する。女性は感情的に振る舞うことで、男性にちょっとしたコストを課し、そのコストにたいする反応を見て、相手の献身の度合いを判断する。もし男性が、その程度のコストを背負おうとしないようなら、彼の献身の度合いは低いことが解る。

赤バラ資源の投資

既婚男性の三六パーセントは、妻のために余りに多くの時間を取られていると感じているが、夫に不満を抱いている既婚女性はわずか七パーセントにすぎない。また、既婚男性の二九パーセントは、妻がもっと自分に関心を向けるよう強要するのに閉口しているが、同じ悩みを持つ既婚女性はたった八パーセントである。
このような、時間と関心の要求に見られる性差は、投資をめぐる軋轢が解消されていないことを表している。女性は夫の投資をすべて自分に向けさせようと努力するが、一部の男性は妻による資源の独占に抵抗し、労力の一部を社会的地位の向上や、別な配偶者の獲得といった目的に振り向けようとする。
独占欲に対して、女性の三倍以上の男性が不満を示す背景には、余剰資源を新たな配偶相手の獲得や配偶の機会を広げる社会的地位の向上注ぎ込むことで得られる利益が、男性と女性では大きく異なっているという事実がある。

赤バラだましの行為

女性が男性の浮気に激怒するのは、それが、男性が他の女性に資源を振り向けるつもりか、あるいは現在の配偶関係を解消するつもりさえあることを意味するからである。そうなれば女性は、結婚によって確保したはずの資源のすべてを失う危機にさらされる。この観点らすると、女性は一過性の浮気よりも、相手とのあいだに感情的なつながりのある情事に対してより強い怒りを覚えるはずだ。
夫と浮気相手とのあいだに感情的な結びつきがある場合、資源のごく一部の損失でなく、配偶関係の完全な破綻に至ることが多いからだ。この推論が正しいことは、夫の浮気に感情的な絆がない場合には、女性は比較的寛容で、極端な怒りを表さないという事実からも明らかだろう。

赤バラ虐待

夫から虐待されているアメリカ人女性三一人を対象としたより本格的な調査でも、全体の五二パーセントの事例で、暴力を振るわれる直前に嫉妬が原因で口論がなされていることがわかっており、また実に九四パーセントの事例で、暴力の最大の理由として夫の嫉妬が挙げられていた。
 また、夫に虐待され、ノースカロライナのある病院に助けを求めてきた女性六〇人を対象とした調査でも、そのうち九五パートナーが、夫の「病的な嫉妬」――たとえば、妻が何らかの理由で家を留守にしたり、男女を問わず他人と仲良くしたりするだけでも引き起こされる嫉妬――が暴力の引き金となっていることが明らかになっている。
 肉体的な虐待の大部分の背後には、女性を、特に性的な面で威圧的に支配しようとする意図が存在しているのだ。

赤バラ性的嫌がらせ(セクシュアル・ハラスメント)

 女性が迷惑に感じる度合いを採点させたところ、相手がいわゆるブルーカラーの場合は点数が高く、反対に医学部進学課程の学生や有名ロック・スターの場合は低かった。また、別の女性一〇四人に、男性から正面切ってセックスを求められたらどの程度うれしいかを、男性の職業別に答えてもらったところ、やはり同じような結果が得られた。
 男性から同じセクハラ行為を受けても、その男性の社会的地位によって、女性が受ける不快感は同一ではないのだ。
 性的嫌がらせに対する女性の反応はまた、嫌がらせをする側の意図がたんにセックスだけを求めるものか、それとも恋愛関係を求めているかによっても大きく異なってくる。利益や昇進をちらつかせてセックスを要求するといった、その人物がカジュアル・セックスにしか興味がないことを示す行為は、性的でない接触や称賛の表情、いちゃつきなどの、セックスにとどまらない関心を暗示する行為に比べ、嫌がらせというレッテルを貼られることが多い。

赤バラレイプ

男性は、たとえ相手の女性が拒否しもセックスをしようとすることが多く、ときには言葉や腕力で脅したり、場合によっては平手打ちや殴打などの暴力を振るいさえする。たとえば、女子学生を対象にしたある調査によれば、レイプされた経験のある女性のうち、五五パーセントは「やめて」と懇願したにもかかわらずレイプを受け、また一四パーセントが力ずくで抑えつけられるなど身体的に威圧され、五パーセントは脅されている。
男女の性的な関係の多くに、威圧という要素が介在しているのである。
しかし、男性による威圧は性的な関係にかぎらず、さまざまな状況で用いられている。男性は他の男性を威圧したり暴力を振るったりする。男性が男性を殺害するケースは、女性を殺害するケースに比べて四倍以上多く発生している。

赤バラ男女間の軍拡競争

男女間の軋轢は、ふたりの相互関係と結びつきを浸食してしまう。そうした軋轢は、セックスの可否をめぐる恋人同士の喧嘩から、投資や献身をめぐる夫婦間の争い、職場での性的嫌がらせやデート・レイプ、さらには見知らぬ人間によるレイプまで、多岐にわたっている。
 そして、これら軋轢のほとんど全ては、男性と女性がそれぞれ進化させてきた配偶戦略に結びつけることができる。一方が行使する戦略は、時としてもう一方の戦略を妨害することになるのだ

赤バラ8 破局

 人間の配偶行動において、人生でただ一回しか結婚しないケースのほうがむしろ少数派である。アメリカでは、離婚と再婚が極めて多いため、全体の五〇パーセント近くの子供たちが、遺伝学上の父親と母親がそろった状態では暮らしていない。義理の親子関係はもはや例外ではなく、ごくふつうに見られるものに変わりつつある。
 一部で言われているのとは違い、こうした状態は最近になってはじめて生じたものでもなければ、家族の価値(ファミリー・バリュー)の急速な低下を反映したしたものでもない。
 離婚――より一般的に言えば長期的な配偶関係の解消――は、あらゆる文化で見られる普遍的な現象である。たとえばクン族では、記録に残っている三三一組の夫婦のうち一三四組までが離婚したと報告されている。またアチェ族の男女は、四〇歳に達するまでに結婚と離婚を平均一二回以上も繰り返す。

赤バラ関係を解消する心理

多くの人が、配偶者と安定した関係にありながら、他の配偶者と接触し、品定めしているというのは、困惑させられることがあるが、純然たる事実である。既婚男性の会話は、スポーツか仕事の話でなければ、自分の周囲にいる女性たちの容貌や、彼女たちの性的接触の可能性についての者が多い。同じように既婚女性たちも、どの男が魅力的か、女たらしか、地位が高いかといった話を飽かずくりかえす。こうした会話には、情報を交換し、配偶者捜しの場に参加しようという目的がある。
配偶者にする可能性を念頭において、他の男女を値踏みすることは、十分に報われる作業なのだ。理想的とは言えない伴侶といちずに添い遂げようとする人は、世間から賞賛されるかもしれないが、そのようなタイプは繁殖面で成功を収めてきとは思えず、したがって現在生きているわれわれにその血はあまり受け継がれていないだろう。
男性も女性も、今すぐそうする気がなくても、新しい配偶者獲得の機会をうかがっているものだ。将来に備えておいて損はないのである。

赤バラ浮気

男女どちらの側の浮気よって離婚が起こる社会が二五であるのに対し、妻が浮気をした場合のみ離婚が引き起こされる社会は四四にのぼっており、反対に夫が浮気によってのみ離婚に
至る社会はわずかに二つに過ぎなかった。さらに、この二つの社会においても、妻が浮気をした場合には処罰を受けないことは稀であり、男女間のダブルスタンダード(二重基準)の例外とは見なしにくい。
 どちらの社会でも、夫が妻の不貞を知った時には、妻に対して暴力を振るったりすることは知られており、場合によっては殴り殺されることさえある。この二つの社会では、不義をはたらいた妻は、離縁されることはなくとも、軽い罪で逃れることもできないのだ。

赤バラ不妊

進化的な観点から見れば、不妊と浮気が、世界中でもっとも多く見られる離婚の原因となっていることは、きわめて合理的である。この二つは、長期的な配偶関係の進化的な存在理由である繁殖資源の提供という点からすると、何より直接的かつ致命的な欠陥だからだ。とはいうものの、人間は、こうした欠陥のために自分の適応度がどれほど下がるかを意識的に計算したりしない。

赤バラセックスの拒否

セックスの拒否は、望ましくない配偶者と別れるための重要な戦術であることが解った。離婚を目的とする女性たちの戦術の例としては、「夫との身体的な接触を拒む」「セックスに関して、冷たくよそよそしい態度をとる」「夫に身体を触らせない」「セックスを求められても無視する」などがあげられている。こうした戦術を用いているのは、女性だけにかぎられる。

赤バラ残酷さと冷たさ・妻どうしの軋轢

浮気もまた、残酷さや冷たさを誘発することがある。クイチェ族では、妻が不貞をはたらくと、夫から罵られる、虐待され、ときには食事も与えられなくなったりする。浮気した妻が、怒り狂った夫から殴られたり、レイプされたり、罵られたり、傷付けられたりするのは、世界中で見られる現象だ。
 このように、結婚生活の過程で繁殖上のダメージをもたらすできごとが起こると、残酷さが何らかの形で表面に現れる場合がある。いうなれば、一部の人間が示す残酷さや冷たさは、その背後には他の離婚原因が潜んでいることを示す兆候なのかもしれない。それは、配偶者のせいで課されたコストを解決するために、心理メカニズムや行動戦略が爆発した結果なのだ。

赤バラ結婚生活を続けるために

人間の配偶心理におけるこうした本質的傾向は、結婚を持続させるための深い示唆を与えてくれる。結婚生活の維持のためには、男女双方が浮気をせず、子供をつくり、十分な経済的資源を確保する必要がある。
相手に対して優しく、寛容と理解をもって接し、セックスを拒否したり、求められても無視したりしてはならない。こうしたことは、結婚の成功を保証するわけではないが、成功の確率が大幅に高めてくれる。

赤バラ9 時間による変化

オランダのアーネムの動物園では、チンパンジーの大規模なコロニーが飼育されている。このコロニーを支配しているのは、イエルーンという最優位のオスだった。イエルーンはいつも大仰な姿勢で歩いて、自分を実際よりも大きく見せていた。
 ときおり、自分の優位を示さなければならなくなると、毛逆立てて、他のチンパンジーたちに全力で突進した。この突進を受けると、チンパンジーたちはあわてふためいて逃げ出した。イエルーンの優位はセックスの面にもおよんでいた。群れには四頭のおとなしいオスがいたが、メスが発情した時に行われる交尾の七五パーセント近くはイエルーンが相手だった。
 しかし、イエルーンが年老いるにつれて、変化が訪れた。若いオスのラウトが急速に力をつけ、イエルーンの地位に挑戦し始めたのである。ラウは徐々に、イエルーンにたいして服従のディスプレィをするのをやめ、自分がイエルーンを恐れていないことを大っぴらに誇示するようになった。あるとき、ラウトはイエルーンに近づくと、一撃をお見舞いした。別の機会には、その危険な犬歯でイエルーンに噛みつき、出血させたこともあった。とはいうものの、戦いの大部分はもっと儀式的なものであり、流血沙汰の代わりに脅しや威嚇が用いられた。

赤バラ女の価値の変化

ある女性が配偶者としてどれだけ好ましいかは、その繁殖能力を示す指標によって大きく左右され、一般的には年をとるにつれて価値が下がっていく。二〇歳のときは理想的な夫を獲得できた女性でも、四〇歳になってしまえば、たとえ他の条件すべて同じでも、もっとランクの落ちる男しか惹きつけられなくなる。

赤バラ欲望の減退

結婚生活が長くなるにつれて起こるもっとも顕著な変化のひとつは、セックスに関すものである。新婚夫婦を対象にした調査によれば、夫は、結婚したあと年を重ねるごとに、妻がセックスに応じようとしないという不満を募らせるようになる。結婚一年目には、妻がセックスに応じないという不満を持つ男性は一四パーセントにすぎないが、四年後にはその三倍の四三パーセントが不満を抱いくようになる。
また、夫がセックスに消極的だという不満をもつ女性の割合も、結婚一年目の四パーセントから、結婚五年目には一八パーセントへと増加していく。男女どちらも、年を重ねるにつれパートナーがセックスに消極的だという不満を抱くようになっていくが、不満をもつ割合は男性が女性の二倍以上高い。

赤バラ献身の低下

男性も女性も年を取ると、性生活に満足できないだけではない。パートナーが自分に愛情や注意を向けてくれないという不満を抱くようになっていく。それなら配偶関係への献身が弱まったことを意味するものだ。時が経つにつれ愛情が薄まっていくという不満は、男性より女性に根強く存在する。パートナーが愛情を表現してくれないことを不満に思う女性の割合は、新婚では八パーセント、結婚四年目で一八パーセントである。それに対して男性では、新婚で四パーセント、結婚四年目でも八パーセントでしかない。

赤バラ婚外セックスの頻度の変化

ある調査で婚外セックスをしたことがあると最初から認めたのは三〇パーセントだったが、もっと詳しく質問してみると、さらに三〇パーセントが婚外セックスの経験を認め、合わせて約六〇パーセントに達することがわかった。
女性が婚外セックスを行う率は、年齢によって明確に異なっている。既婚女性のうちもっとも若い年齢層では婚外セックスは稀であり、一六歳〜二〇歳ではわずか六パーセント、二一歳〜二五歳でも九パーセントにすぎない。それが、二六歳〜三〇歳になると一四パーセントに増加し、三一歳〜四〇歳の一七パーセントでピークに達する。
 三〇歳後半から四〇代前半になると、婚外セックスの比率は、徐々に低下していき、五一歳〜五五歳では六パーセント、五六歳〜六〇歳では四パーセントにまで下がる。このように、女性の場合、年齢とともに婚外セックスを行う割合は一定のカーブを描いて変化する。割合が最も低いのは、繁殖能力が最も高い時期と低い時期の両方だが、最も高いのは、繁殖年齢の終わりに差し掛かろうとする時期である。

赤バラ閉経

女性の一生における性的活動の変遷のなかで、決定的な変化の一つは子供を生む能力の喪失である。女性の繁殖能力は、閉経時にゼロになる。女性の一生で注目すべきことのひとつは、生命そのものが失われるはるか以前に閉経が起こるという事実だ。大部分の女性は、七〇歳以上まで生きるにもかかわらず、五〇歳の時点でほぼ繁殖を終えてしまうのである。

赤バラ男の価値の変化

女性の配偶者としての価値は、年を取るとともに急速に低下するが、それは男性には当てはまらない。男性の価値を形成する鍵となる要素の多くは、年齢と密接には関係していなかつたり、年齢の影響をあまり受けないものだからだ。そうした要素には、知性や協調性、責任感、政治力、親族のネットワーク、人脈、そして最も重要なものである、女性と子供に資源を提供する能力と意志などが含まれる。

赤バラ男が早死にする理由

たとえばアメリカでは、男性の寿命は女性よりも平均して六〜八年短い。男性は女性にくらべ感染症への抵抗力が弱く、死因となる病気の数もそれだけ多種類におよぶ。また、高所から落ちたり、誤って毒物を飲んだり、溺れたり、火器の暴発や交通事故、火事爆発などに巻き込まれることが女性よりも多い。

生まれてから四年間のあいだに、男の子が事故で死亡する率は、女の子よりも三〇パーセント高く、成人するころには四〇〇パーセントも高くなる。殺害される割合も、男性は女性の三倍近い。

赤バラ婚姻機会の縮小

一九六〇年代の末から七〇年代にかけてアメリカで起こった性革命は、ひとつの注目すべき変化を含んでいた。多くの女性がセックスを留保することを止め、男性に誠意ある献身を求めることなしに、性的関係を結ぶようになったのである。
この性的な姿勢の変化が生じたのは、ベビーブーム期に生まれた女性が年上の男性の不足に悩んでいた時期と一致している。ダイエット産業が勃興したり、美容・化粧品産業が繁栄をきわめたり、美容整形手術が流行ったりといった風潮が示すように、女性たちの間で容姿をめぐる競争が激化していったのも、やはり男性が不足していたこの時期だった。
男性が少ない配偶環境におかれた女性たちは、自分の競争力を高めようとして、容姿に磨きをかけたり、健康を誇示するようにふるまったり、ときには男性を惹きつけるために性的な誘いをかけたりする。

赤バラ一生添いとげるために

女性の繁殖的価値の変化は、その女性自身の性戦略を左右するだけでなく、夫や配偶者候補といった、彼女をとりまく社会環境にいる男性たちの性戦略にも影響を及ぼす。女性が若いうちは、夫が厳しくガードし、うまく獲得できた価値ある繁殖資源を死守しようとする。夫のガードの厳しさは、妻の浮気の可能性を封じると同時に、場合によっては夫の献身を示す指標と見なされる。

赤バラ10 調和をもたらす鍵

乱婚、一夫一妻制、配偶者への暴力、性的な充足、嫉妬に駆られて配偶者をガードしたり、反対に配偶者に関心を抱かなかったりすることは、どれも必然的なものではない。男性は、さまざまな相手とのセックスを求める抑えがたい欲求のために、浮気に走るよう宿命づけられているわけじゃない。
女性もまた、誠意を見せない男性をののしるよう決定されているわけではない。われわれは、進化が押し付けた性的な役割に従うだけの奴隷ではないのだ。さまざまな配偶戦略がそれぞれどんな条件下で友好に働くかを知ることで、どの戦略を採用し、どれを使わずにおくかを選び取ることができるのである。

赤バラ フェミニストの見方

フェミニストと進化論者が行きつく結論は、男性が女性を支配しようとする努力の中心にあるのは、女性の性行動を支配しようとする意志なのだ、という点では一致している。どうしてそうしたことが起こるのか、なぜ女性の性行動を支配することが男性の最大の関心事なのかは、人類が進化させてきた性戦略から説明できる。

赤バラ配偶戦略の多様性

男性と女性の欲求の違いは、ヒトという種に存在する多様性の重要な部分を構成している。とはいえ、男女それぞれの中にも、同じくらい大きな変異が見られることも確かだ。カジュアル・セックスだけの関係を求めるのは、女性より男性のほうが多いが、それでも生涯一夫一妻を守り続ける男性もいるし、反対にカジュアル・セックスのほうを好む女性もいる。

赤バラ文化的な差異

人間の多様性の中でも、文化的差異は最も興味深く、謎めいた部分だといえる。たとえば、結婚相手の純潔性といった点をとってみても、社会が違えば、考え方は劇的に異なる。中国では、男女を問わず、大部分の人々が、純潔性は配偶者に欠くことのできない資質だと見なしている。
一方、スウェーデンやノルウェーなどのスカンジナビア諸国では、配偶者が純潔かどうかは重要でない。こうした文化差異は、配偶行動のあらゆる理論に疑問を投げかけている。

赤バラ競争と軋轢

人間の配偶行動における、あまり愉快でない事実のひとつは、価値の高いパートナーの数よりも、そうしたパートナーを求める人々の数のほうがつねに多いということだ。何人かの男性が、資源を獲得する卓越した能力を示したとしよう。女性は一般的にそうした男性を求めるので、彼らを配偶者として獲得しようとたがいに争うことになる。
しかし、結果として勝利者になるのは、配偶者としての値打ちの高い女性たちだけだ。すばらしい美貌の女性は多くの男から求愛されるが、口説き落せるのはやはりひと握りの男性だけだろう。

男と女の協調

男性と女性は、自分の遺伝子を後の世代に受け継がせていくために、いつもたがいに依存し合っている。結婚という結びつきは、長期間にわたる信頼と助けあいが複雑に絡み合っており、他の動物種には見られないものだ。この意味では、男女間の協調こそ人類の最高の偉業だ