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何かプレゼンテーションできるくらい明確な性的ファンタジーを持っている方が、セックスはうまくいくんだろうね。でも、女の人は性的ファンタジーを明確に持とうとする人は、あまり多くはないんじゃないないかな。漠然としている人が多いので、それがうまくいかないんだろうね

本表紙 中村うさぎ著

私、Hがヘタなんです! 中村うさぎ著目次

森奈津子森奈津子
 一九六六年生まれ。作家。一九九一年に、少女小説でデビュー。
 現在では、性愛をテーマに、SF、ホラー等を発表。「エロス」と「笑い」は重要な創作上のテーマである。二〇〇〇年には『西城秀樹のおかげです』(イースト・プレス)が第二回日本SF大賞にノミネートされた。 
 主な著書に『東京異端者日記』(廣済堂出版)、『あんただけ死なない』(ハルキ・ホラー文庫)『ノンセクシャル』、『かっこ悪くていいじゃない』(祥伝社文庫)など。
●うさぎオナニー物語――エピソード
●萌えた思い出たち
●森倫いろいろ

うさぎ◆女性相手でもバイブとかは使わないですよね?
モリナツ♥使わないですね。器具を使うというのは、自分のテクニックが足りないからっていう意識があって、どうも使うことに屈辱感が伴うんです。
●オナニーのジャンヌダルク、森奈津子!
モリナツ♥女性は自分がオナニーすることに抵抗を感じないで済むんでしょうか?
うさぎ◆そもそも、どうして恥ずかしいんでしょう?
モリナツ♥欲望が強いことは恥ずかしいとか、欲望をセックスで解消していないかと思われるのが恥ずかしいとか。
うさぎ◆モテない、みたいなね、それはあると思います。セックスに対する欲望があることは、女性もみんな隠さなくなってきたと思うんですよね。私くらいの年代だと「女からセックスしたいと言うのは恥ずかしい」というのがまだあったけど、もう少し下の世代だと平気になってて。でも今では、オナニーしているのはモテない女だとか、男に相手にされない寂しさを自分で紛らわせているというイメージがあるんですね。
モリナツ♥誰だったかな、「女の人はオナニーしないよね」って言った人がいたけど。
――やっていない人もいますし、やってはいるけど表明しない人と、二種類いると思うんですよ。そんなことをする女はおかしいという意識の人は男でも女でもいますよ。
◆森さんにしろ、私にしろ、幼少の時期に萌えの対象があったり、触ると気持ちいいことを知っていたり、オナニーに対する蓋をする前に欲情があったんですよね。オナニーなんてないという人たちは、そういうことがなかったんでしょうか?
――親に見つかるというのが、わりとあるんじゃないですかね。親は子供の性的な行動を監視しますからね。
◆確かに私も怒られましたけど。怒る母親というのは、自分もしていないんでしょうか? それよりも自分はしていてもカミングアウトできなくて、しないふりをすると言うのもあるんじゃないかな。何にしても、娘がオナニーっぽいことをしているのを見て、自分がしたことのない人は本当に驚愕するでしょうね、病院に連れて行ったりするかもしれない。でも、連れていくところまでしないということは、身に覚えがあるでしょう。それを認めたくないから、逆にヒステリックに怒ってしまうんじゃないかな。
♥なるほど。そうやって禁忌にされていくんですね。
◆最初に誰が禁忌にしたか、ですね。やはり男性ですかね。
――文化人類学的にあるクリトリス切除というのは、それでしょう。貞操を守るためだけなら、クリトリスを切除する必要はないわけですから。
◆男には自分が女の性器を開発してやる、というのがあるんですよね。私の中にも、そういう願望はあるってーの。
◆そうなんだ。私にはサービス精神が、あまりないのかも。喜ばせてあげたいとは思うんだけど、相手ばかり喜んでいるとイヤな感じがするんじゃないかな。
●マンコをチンコと同等に

南智子南智子
「言葉攻めのカリスマ」である天才セックスワーカー
男性を攻めたい欲望を抱えて生きる
一九六八年生まれ。セックスワーカー、作家。
数々の風俗業を経て、渋谷の性感マッサージで「言葉攻めのカリスマ」として君臨。
数々のAVにも出演し、また漫画原作も多く手掛けている。原作作品に『ボディーシューティング』『ふぅど~る』など。
その他の著書に『Hの革命』『男を抱くということ』など。
●コンプレックスと孤立感
●SMの中の文系。理系、体育系

智子♠そうですね。性って、本当に様々な個性があって、私もセックスワークを十年以上やってきて結論なんてわからないんですが、私が唯一体感したと思っているのは、本当にありとあらゆるタイプの人がいるということなんです。もちろん、マジョリティ、マイノリティはあります。言葉の上で「性は多様なものだ」と分かっていても、実際に違う価値観の人と出会うと、理性では差別を嫌っている気持ちがあっても「ゲッ」となってしまう人もいますから。
うさぎ◆そうですね、サディストに多様性があるといっても、ふつうの人が想像する限度としては、サディズムとマゾヒズムがあるというところ止まりで、サディズムの中にどういう種類があるかまでは考えが至らないんですよね。快楽殺人というサディストだろうとは思うけど、サディズムに種類があるとも思わないから、自分の中のサディズムとその連続殺人が結びつかないと、「あの人には心がないから」くらいに思ってしまうんですよね。
智子♠今日の新聞に、女性の性を考えるイベントがあったという記事が載ってて、そこにはやはり、「みんながスゴい体験をしているなら自分もしないといけないんじゃないかと言う感覚がすごく強くて、縛られる」という悩みがたくさん寄せられた。とあったんです。

 女性の場合、いい女にならないといけない、こうでなければいけないという理想型を押し付けられますよね。AVでもセックスワークのお店でも、女性って最後の最後までインプットが行き届いてて、こうすれば可愛いとかこうすれば愛されるというものが骨の髄まで染み込んでいるんですよ。

こんなふうにしたら嫌われてしまう、色っぽいエッチな女から外れてしまう、というものが埋め込められているんです。だから女の人って、受け身になった時に、声の出し方から何から、すごく似通った反応をするんです。

 男の人は、受け身になった時には「こうするとカッコいい男」っていう型がないから、素になっちゃうんですよ。ゲイの友人に聞いてもそうだと言っていたんだけど、男の人の場合は、ワケのわからない反応をしたりヘンなことを言いだしたりしちゃうことがあります。女の人は「完璧な反応」というものに縛られてて、たとえば「あんぎゃ~!」って言ったりしたらイイ女から外れてしまうという恐怖感が強い。

セックスして気持ちよければ「あんぎゃ~!」って言ってもいいじゃないかっていう感覚がなくて、セックスすることによって男の人から愛されないといけない、という意識があるんですね。
智子♠自分にとって本当の肉体的・精神的快楽を得るのはオナニーで、恋愛だったり自分が大切にされているという違う快感や悦びを得るためにセックスをするんだ、と考える方もいますよ。無理やり一緒にしなくてもいいんですよ。一緒にできる人はいいけど、不可能な人はいますから。
うさぎ◆そうか、そうですよね、もし、覗き見が私の根元的な欲望であれは・・・・私はセックスは恋愛の延長線上にあるほうが幸せだと思っているんですけど。
智子♠幸せと快楽とは別という人もいるかも知れませんよね。
 女の人の場合は、生き方についても関係性についても「女の性はこういうものである」というインプットが強くされていて、さらに、性的メディアや風俗で「自分の性ってなんだろう」と探究するチャンスが男性より少ないので、自分の欲求に気づかないことが多いだと思います。
「女は恋愛で感じるもので、性的なことを考えるなんておかしいとされ続けてきたために悩んできた」ということを打ち明けたら、同じ悩みを持つ女性がたくさん集まるとおもいます。自分の性なのだから、一生知らないまま死んでいくのも無垢な事かもしれませんけど、自分で挑んでいくのは意味のある事だと思う。
引っ掛かりを持っているということは、答えはあるということですよ。逆に「私は正常で、悩んでいる人が理解できない」とか「どうしてそんなことに一日中セックスのことばっかり考えているんですか?」って質問する人がいるんですけど(笑)、そういう人は、うさぎさんのように悩んだり獲得したり発信したりということもないと思うんですよ。
じゃ、その人たちは、自分のセックスをでは永遠に快感に到達できないんですね?
現実のセックスには、妄想で得る快楽とは違うものがある。コミュニケーションによる満足とか、自分の手ではない他人の手で触られることの快感とか、いろいろあるでしょ。
●「言葉攻めの南」への転機
智子♠ソープランドでは、攻めも全開にできなかったし、自分でもあまり面白くない部分があって。そんな折りに、当時はお客さんにアンケートをしていたんですが、そこに書かれたことで「何でも素直に頑張ってやってくれて、性格的には従順な子だけど、もっとイイ女の子を紹介してよ、ボーイさん」ってあったんですよ。それで、どんなに一生懸命やっても無理なのかなと思ったんです。

その頃に性感マッサージが初めてできて、業界の女の子たちは横繋がりが強いので、そこから情報を得たり、記事を観たりして、これだ! と思ったんです。女社長のお店で、電話を掛けたら「今からでも面接においで!」って言ってくれて、それから「好きな時から出て」って言ってもらって、翌日からお店に出たら、その日についたお客さんから指名がきたんですよ
写真風吹あんな
 一九九八年生まれ。AV監督。
 OL、主婦、ホステス、写真集、グラビアモデルを経て、一九九四年「宇宙企画」よりデビュー後に、己の性癖を追求し自ら進んで「シネマジック」専属ハードSM女優となり、一九九五年「私にビデオを撮らせてよ!」で監督デビュー。現在に至るまで数百本の作品を手掛け、主に「レズビアン物」と「SM物」という、男女のセックスの分野に興味を持ち得意としている。二〇〇一年より女性向けAVレーベルを立ち上げ「男のオナニー物」を手掛ける。
著書に『セックスプレイヤー』がある。
膣と子宮を二つ持つ
バイセクシャルAV監督
性というものをあらゆる目で捉え直したい
●三日しないと吹き出物

男って、「こいつは俺のものだ」と思った途端に、性欲が減退していくものでしょ。仕方ないことですが、私はそれがイヤなので、重複交際してるんです。一人に安心させると、ほんとに減るんです。でも、他にライバルがいると、十年経ってもしょっちゅうしますよ。
うさぎ◆そうなのか! でも、そのために他の人ともやるっていうのは・・・・。
あんな❤それが私の心のなかのバランスで。もちろん一人の人に集中したほうがいいんですが、毎日セックスしないと肉体的に困るんです。
うさぎ◆困るんだ?
あんな❤三日しないと、顔に吹き出物ができて酷いことになっちゃうんです。一週間しない時の顔なんて、見られたものじゃないですよ。
うさぎ◆そぉおー? なんで? ホルモンのバランス?
あんな❤うん、ホルモンバランス。べつに「男が欲しい」と、いつも思っているわけではなくて、家族といる時はぜんぜん要らないんです。旅行に行ったりする時もセックスのことは考えないんだけど、顔に吹き出物ができて、「あれ? あっ、もう四日やっていない」って感じなんです。
うさぎ◆そういう場合は、女でもOKですか?
あんな❤OKですね。私、女性にはちゃんと恋愛できるんですが、
男性にはあまりできなくて、道具的な感覚で考えてしまうところがあるんですよ。ちゃんと情は入っていますが。だから、セックスできない、チンコ出せない男は、意味がないんです。

だから、ホストクラブで気に入った男がいて通ったとしても、一発もやらせない男に意味はないんです。会話しているだけ、恋愛の真似事の手前みたいなのは要らないんです。それだったら、友人関係、仕事関係を続けているうちに、ある日突然ムラッと来る方がいい。

●女としての焦り
――うさぎさんは七年もやっていなかったんですよ。風吹さんなら顔がお岩さんみたいになっているところですね。
うさぎ◆前彼と別れてから七年が経ちまして。途中からセックスするのがイヤになってきちゃって。もう家族みたいになってきちゃったので、五年くらいつきあって後半の二、三年は「私たち、そんな関係じゃないでしょ」って感じだったんですよ。そんな状態が続いたら「もう一生しなくていい」くらいのセックス嫌悪症になっちゃって。その彼とのセックスしなかった期間を含めて七、八年くらい誰ともセックスしなかったんです。
あんな❤そういう女性は多いんですよね。
うさぎ◆そうですか。私は「このまま一生しなくてもいいや」くらいに思っていたんですが。去年(二〇〇一年)くらいから「これはイカン」と思い始めて。それは焦りと言うか、老いを実感する年頃なので。体調によっては更年期障害かとか閉経するのかとか考えたりして、ボディラインなり顔なりが如実に老化していくので、このまま現役を上がっちゃった女としていいのかっていう焦りがでてきたんですね。
友だちがみんなゲイで、一緒に遊んで毎日楽しくという感じだったんですが、彼らはセックスしたいなんてぜんぜん思わないわけで。で、知り合った作家さんたちが異様にセックス好きなんですわ。

あんな❤それをやってみようと思い始めた?
うさぎ◆私の中でセックスに対する嫌悪感以前に、防波堤があって、自分の性欲にちゃんと向き合いたくないという気持ちがあったと思うんですよ。それが、みんなと話してて、セックスのことばっかり話しているから、考えざるを得なくて。「七年やってない」って言ったら、みんなのけぞるし。最初はちょっと得意だったんですよ。みんなが驚いてくれるので。でも、だんだん不具者みたいな感じになってきちゃって。
あんな❤でも、やりたくないものを無理にやっても仕方ないと思いますよね。逆に私は、「毎日やってどうするの?」って言われたりしますが、それと対極ですよね。オナニーも毎日二回してるんですが、それがフツーで、自分が欲している状態だから、無理にしなくたっていいと思うし、焦る必要もないと思いますよ。
うさぎ◆影響されたからセックスしなきゃと思うように思ったのか、本当にしたかったのに蓋をしてきたのか、自分でもよくわからなくて、それは、元彼との関係で生まれたセックス嫌悪感か、さっき話が出たジェンダーの問題もあるかもしれないし。二重三重に蓋がしてあったのに、それを開けられてしまったというのがあって、やっぱりセックスは大切なのかなって。
あんな❤セックスはコミュニケーションのひとですよね。
うさぎ◆でも、そう思ったからといって、相手がいないわけですよ。
あんな❤えっ、ダンナさんは?
うさぎ◆夫はゲイなんですよ。
あんな❤ああ、書いてらっしゃいましたね。だからこそ結婚できたって感じですか?
うさぎ◆そうですね。一緒に寝ていても何もないので。
あんな❤AV界に女優になりたくて来る人たちはいっぱいいますが、うさぎさんみたいな熟女も多いんですよ。
うさぎ◆「熟女」(笑)。
あんな❤うちの業界、二十五歳以上は熟女ですから(笑)。で、そういう熟女の人たちは、七年、十年セックスしていないとか、それに疑問を感じているけど夫とはしたくない、よそでするものよくない、女を取り戻したい、だったらプロにお願いしたい、という動機で来る人が多いですよ。
あんな❤いちおう男性からフェラチオが上手だと言われるんですよ。ただし、抜かせるフェラチオと勃起させるフェラチオというジャンルがあるらしく、私は勃起させるフェラチオらしいんです。だから、長くフェラチオさせられるんだけど、いっこうに相手がイカないんです。

そうすると、女として自信を無くしていくんですよ。上手だと言ってくれても、社交辞令的なものなのかと思ってしまって。一時間近くやらされて、あごは痛いし、それで嫌いになっちゃって。自信がなくなっちゃってるんですよね。
うさぎ◆それはあるかも。イカせないといけないという先入観があって。
あんな❤自分のフェラチオで相手が思わずイッてしまったら勝ち、っていうのがあるんだけど、それがないんですよ。かといって、男にしてみると、抜かせるフェラチオが出来る子のフェラチオで長く楽しもうとは思わないらしいんですよ。
うさぎ◆どう違うんでしょう?
あんな❤抜かせるのって単純で、ピストンと定期的な動き。気持ちいいのを持続させるというのとは違って。それは男性に言われて、これがそうかというのがわかってきたんだけど。男性に言わせると、その子のフェラチオを長く楽しみたくない時には抜かせるフェラチオにすることもある、その子のセックスがあまりよくないらしく、フェラチオさせて出すだけ、とか。フェラチを長く楽しもうとするのは、相手が好意的であることの証拠だと、のちにわかってきたんですが、以前に仕込まれたものが長すぎて、嫌いになっちゃった。

うさぎ◆それはあるかもしれない。相手がイカないと、自分に不備があったのではないかと思ってしまって。それはフェラチに限らず。
あんな❤私は、セックスで相手が思わずイッてしまったという経験は、ほとんどないんですよ。相手がコントロールが出来る人たちなので、何時間でも一日中でもてきてしまうし、三こすり半で出そうと思えば出せる。それだと、私でなくてもいいんじゃないかってことなるので、女としての自信がなくなっていくんですよ。それでも自信が保てるのは、その人たちが飽きずにやってくれるから。夢ですよね、「きみの体で思わずイッちゃったよ」っていうの。
うさぎ◆そうですよー。
あんな❤でも、そういう男が相手だと、満足いくセックスが貰えなくなっちゃう。それは自分の中の二律背反なんだけど、どこで自分の心に妥協するか。コンプレックスと満足と両方を、上手くバランスを取っていかないと。

向かって左あんな❤右うさぎ
●痴漢
あんな❤痴漢にあったり性的な虐待をうけると、トラウマになるでしょ。私もなったほうなんだけど、子供の頃、痴漢されるためにわざわざ表に出ていたりする人とかいるんですよ。わざわざミニスカートを穿いて、痴漢のおじさんを待っている子とか、電車で痴漢に会うと、その人の手を引っ張ってホテルにいっちゃうとか、当たり前にいるんです。そういう人にとってはトラウマにならないんです。女として認められて嬉しい、っていう感覚なんです。そういう人たちはいっぱいいるんです。

うさぎ◆かなりの数、いるんですか?
あんな❤うん。まあまあいます。そんなに多くはないけど、思った以上に多いです。
うさぎ◆いま、心の底から驚いていますよ。
あんな❤実際に自分はされるとイヤだけど、妄想ネタとしては私もありますよ。その妄想も、自分が出て来るんじゃなくて、誰か女の子が痴漢されてて感じちゃって、できやしないけどチンチンに突っ込まれたりしちゃって、電車が揺れるたびに動くみたいな妄想で、「おおっ」って感じ。

私は本物の痴漢の人たちと、ビデオの仕事で会ったことがあるんですよ。まあ、犯罪者なんですけどね。痴漢軍団を自分のところに抱えている監督がいて、そこにうちの女の子を入れ込まないといけなかったんですね。心配だったから見に行ったら、刃(やいば)はこっちに来るんですよ。

AVに出て脱げるような女の子に、彼らは興味がないんですよ。脱がないほうに興味があるわけ。その子のビデオなのに、私がバンバン映っちゃって。その次にも、「脱がなくていいから出てください」っていわれたんですが、まんまんとはめられたんですよ。その作品のつくりが風吹あんな主演みたいになっているんですよ。これでギャラ十万円じゃ安いだろ、って言って怒りましたよ。

 そしてね、痴漢たちが言う論理を聞いてると、胸クソ悪いんですよ。社会でストレスを溜めているから、そのストレスをぶつけているんだ、ってことなんです。だから、そういう社会構造を認知しなければいけな
いって、自分を棚に上げて言うんです。それはね、痴漢をしている人が痴漢している人の生態を観察して言うならわかるけど、やっているおまえらが言うな、って言うんですよ。
ほんとあいつらは、服を着ている者を触ってくるから。裸のおねえちゃんには興味ないから。しかも、おかしいのは、セックスできないんですよ。
うさぎ◆そうなんですか。
あんな♠「この子でセックスしていいですよ」って言っても、できないの。勃たないから。監督が、その子に服を着せてつり革を持つように立たせたら。ビンビンなの。しかも、なかに覗き屋がいて、そいつは横から覗きながらビンビンなの。
うさぎ◆その状態からパンツを脱がせたら、挿入はできるんですか?
あんな♠素股のなんとかってヤツがいて、そいつは実際に痴漢やっている時に素股で出しちゃうんだって。でも中に出さないの。しかも、そいつが私の胸をさわりやがったので、頭に来て、そいつをひっくり返してチンコを出したら、小さいの。たぶんコンプレックスがあるんだろうな。と思って。
――たしかに巨根の痴漢って、あんまりいなさそうですね(笑)。
あんな♠あの小ささでは、後ろからは入らない。それに、立ってては無理。だいたい、痴漢に長身の人はいないんですよ。女の尻には手は届かないです
●マゾと奴隷
――風吹さんはバイセクシュアルで、SMではMですよね。
●子宮が二つ、穴も二つ
●エクスタシーとは
うさぎ◆そうだ、風吹さんが「女の人はイッたふりしてはイカン」っておっしゃってるじゃないですか。
あんな♠そう、イカンですよ。
うさぎ◆だけど、イクという感覚が分からない人って、多いと思うんですよ。私もそうなんですが。すごく気持ちいいなと思っても、「これはイッてるのか?」っていう。
あんな♠だったら、イッたと言う必要もないじゃないかな。「イッたかどうかよくわからない」でいいんですよ。
うさぎ◆終わらせたい時にイッたという事はありますが。
あんな♠そう、それが一番よくないんだけど、つまり相手とのセックスが合わないってことですよ。そこで二人の関係を見つめ直しましょう、ってことです。セックス以外を見てみんなつきあっちゃいますが、セックスがダメなら終わりですよ。セックスの不一致は性格の不一致ですから。
うさぎ◆そうおっしゃってましたよね。
あんな♠相手に正直に言えないという事は、性格が合わないとということだから。
うさぎ◆もうダメだ・・・・。私、誰とも合わないのかもしれない。
あんな♠でも、今のダンナさんとは、セックスないでしょ。女性を求めてこないでしょ、うさぎさんも男性を求めないでしょ。すごく性が一致しているってことですよ。
うさぎ◆うーむ。夫は外で彼氏がいてよろしくやっているもんだから、なんかムカつくんですよ。
あんな♠それは実力の違い。
うさぎ◆あうっ。
――セックスの満足感がないことが、うさぎさんにとって大きな問題なんですよ。
うさぎ◆私は、人間関係がないのにセックスして気持ちいいと言うのがよくわからなくて。それをこないだ、うちの夫の元彼に「あんたたちホモは、好きな人がいてもハッテン場に行って、顔も名前も分からない人とやりまくる。それがどうしてもわからない」って言ったら、「だって、ハッテン場でやる乱交はオナニーだもん」って言うんですよ。それでハッとしまして。
あんな♠彼らもホモセクシャルでも体は男だから、種ばら撒き癖があるんです。なぜ男と男の組み合わせでハッテン場が成り立つかっていうと、やりたい人が集合するからなんです。レズはもう少し観念的になってくるじゃないですか。
うさぎ◆幻想だと思うんですけど、ものすごくみんな気持ちよくて私はそれを指をくわえて見ているような気がして。大事なものを知らずにこのまま死んでしまうのか、みたいな。だから、イクということについても、私はイッたことがないんじゃないかという疑惑があるんです。
――なそうですよね。「わからない」ということは、ないんだと思うんです。
あんな♠そうですね。イク時は、明確にここからイッ他と言うのが分かりますからね。よくAV女優にもエクスタシーの経験はありますか?」って聞くんですよ。その回答で、本当にイッたことがあるかどうかがわかるんです。イッたことのない子は「頭が真っ白になって体がフワッと浮くような感じ」って観念的な事を言うんです。本当に言ったことのある子は「下半身からギューッと来てビクンビクンとしちゃって」って言うんです。

肉体的なことをいう人は、イッたことがある人。観念的な事しか言わない人は、イッたと思い込んでいる人で、「あのね、イク時って、子宮と膣がこうやって動くんだよ」って教えてあげるんです。

うさぎ◆ええーっ、子宮が動いたことなんてないですよ!
あんな♠男の人がイク時って、ビクンビクンってなるでしょ。あれと同じことが女の中でも起こるんですよ。0、八秒くらいの間隔で、意識しないで筋肉の収縮運動が起きるんです。それがイクということなので、肉体的にはっきりわかるんです。
うさぎ◆しまった! やぱり私の人生には積み残しの荷物があるよ! 確認したいのは、そっちかもしれないです。母性の確認には興味がないし、子供を産んで育てられるかという問題もあるし。
うさぎ◆友達が「失神しちゃって」って言うと、嘘じゃないかと思って。
あんな♠噓ですよ。
うさぎ◆そうなのー? 嘘じゃないかと思いながらも羨ましかったんですよ。
あんな♠失神するくらいだったら病院に運べというくらい、大変な状態ですよ。「失神しちゃった」という人は、結局しイッてなかったり、過呼吸みたいになってるだけ。フワーッとなっちゃってる人は、イクこととはつながってないですよ。本当に失神したとしたら、医学的にすごくマズい状態だから。

うさぎ◆そうなんだ。潮吹きっていうのはあります?
あんな♠潮吹きはありますよ。でも、あれとイクしは別物ものです。イッたから吹くんじゃなくて、気持ちいいと体の水分や血液が一気に集まって、それが押し出されて出るだけなので。
うさぎ◆おしっこに違いないと思ったんですが。
あんな♠成分を調べると、おしっこだと、尿素とかいろいろいっているけど、同じ尿道から出るのに、潮はそういう成分は何も入ってない。ほぼ生理食塩水みたいなものです。膣から漏れるっていうのには、男の人の勃起と同じ状態で、体中の血液が一気に集まって、毛細血管が血液を補給しきれなくなって水分を出すことなので。
うさぎ◆そうなんだ、わかっていなかった。
あんな♠潮も、膀胱に水分が集まるんだけど、尿素とか排泄物が集まる前に押し出されてるんです。だから、潮吹きは本当にあるんですが、それは体質なので、滅多にいないんです。十人に一人もいないくらい。いま、AV界はとにかく潮吹きがもてはやされてますが、おしっこも混ざってますよ。
うさぎ◆潮吹きはおしっこだと私が執拗に言い張ったのは、前の彼氏がけっこう大きくて、へんなところに当たってるんですよ。私はおしっこを漏らしていると思っていた、自分で、排泄感はないんです。でも向こうは、潮吹きだと思ってありがたがってて。本当のことを言えなかったんです。
あんな♠でも、本当に潮吹きかもしれないよ。
あんな♠イッたことのない女性を手っ取り早くイカせるには、おしっこを我慢して溜めてもらってセックスすることなんです。膀胱を圧迫されると、そこが刺激になって、中で突かれるでしょ。
「もう漏らしちゃってもいいから」っていうくらいやると、イキやすい。その排尿感に近い感じが、イクという感覚の直前なんです。だから、イッた経験のない人は初めてイク時に「おしっこ漏れちゃう」っておもうんです。
うさぎ◆思う思う。
あんな♠それを一つ通り越すとイクんだ、ってこと。漏らさないのに膣の収縮が起きると、イクんですよ。でも、その手前で、おしっこが漏れたら恥ずかしいからって、途中でやめちゃんですよね。それでイケないままになっちゃうので、男の知識を持って「それはイク直前かもしれないから、漏らしてもいいよ」って言ってくれるといいんです。
うさぎ◆ちゃんとプロの人とやった方がいいですよね、でも、出張ホストはチンコ入れないんでしょ?
あんな♠入れますよ、自分がOKすれば、オプションの金額って乗らないんですよ。性感マッサージだけ頼んでも「どうしますか?」って言われて「お願いします」っと言っても、追加料金はないんですよ。女に生まれてきてよかったって感じです。男だったら「あと二万円」とか言われますからね。
うさぎ◆請われなくても追加料金を払ってしまいそうな私がいる(笑)。
あんな♠私は三十五歳から四十五歳まで、精神的に熟成されてて、体力も続くし。私はその十年間がすきですよ。
うさぎ◆その時代が男としていちばん美味しい時期?
あんな♠そうそう。経済力もあるし。若い男の子は、穴があれば何でもできちゃう年なんですよ。もっと年上になると、女の体を見ただけでは勃起しないんですよ。
うさぎ◆なるほど。
あんな♠でも、若い子だったら、セックスは未熟なんだから、綺麗じゃなかったらなんの価値があるんだ、ってことになりますよね。
うさぎ◆そうですよ。
あんな♠若さとか愚かさって、ほぼ同義語だから、綺麗じゃなかったら意味がない。
うさぎ◆ほんと。私、内面なんてどうでもいいんですよ。内面的なものを解かってもらおうとか、深い話をしょうと思ったら、私の場合は男じゃないんですよ。女の人と話しているほうが、有意義だと思うんですよ。だから、男に求めているのは、内面的なものではなくて、若さを感じられるのが好き。
うさぎ◆若い子のほうが体力があるからセックスが強いと言ことはないですか?
あんな♠若いからって体力がるとも限らないから。回数はこなせないとか長くできないとか、コントロールが効かなかったりするから、オヤジのほうがいいんですよ。
うさぎ◆でも、エクスタシーを知らずに死んでしまうのはもったいないし。
あんな♠でも、一回で知ってしまって、その後一度もイケなとなると、家探しするみたいになっちゃいますよ。気持ちいいことを知らなければ、それで済むじゃないですか。一回でも知ってしまったら、その後が続かなかったほうが不幸だと思う。
うさぎ◆セックス依存症の人の話を聞いたことがあります。「あの快感をもう一度」と思っているうちに、依存症になっちゃった、って。私も、ブランド物に耽溺(たんでき)したのは、初めてシャネルのコートを買った時の快感があまりにも気持ちよかったので、もう一度味わいたいと思ったからなんですが、最初の感動って二度と味わえないんですよね。依存症の根っこって、強烈な快感をもう一度と思うところがあるのかな、って。
あんな♠セックスでイケなくてもセックス依存症の人もいて、肉体関係の中にしか自分の位置を確認できない人もいるし、他人のものが好きな人もいてあの女より自分の方が上」っていう位置確認をする人もいます。ブランド品もそれに近いんじゃないかな。手に入れたら、それで終わり。

清水ひとみ清水ひとみ
 渋谷道頓堀劇場伝説の「オナニークイン」ストッパー
 スリッパ―になって自分の殻が破れた
 1962年生まれ。渋谷道頓堀劇場ストリップス演出家、女優。
 不動産会社OLを経て1985年に渋谷の道頓堀劇場のストリップ劇団かぐや姫に参加。「竹取物語」「雪女」などの童話、名作シリーズで”オナニークイン”として人気急上昇。1988年に舞台「曾根崎心中」で女優デビュー。その後も映画やテレビでも活躍。
 1999年に札幌道頓堀劇場社長に就任。2000年同劇場「曾根崎心中」を最後にストリッパーを引退。2001年に渋谷道頓堀劇場復活と同時にストリップ演出家に就任。
●全身オマンコ

うさぎ◆不感症の時期を脱したのは、何がきっかけだったんですか?
ひとみ♠付き合っている男の人が変わったんです。すごく嬉しかったですね。EDが治った男性って、こんな感じかな、と思って。
うさぎ◆前の人とは長かったんですよ。
うさぎ◆気持ちが終わりかけていたとか。
ひとみ♠すごく義務感を感じてしまうので、セックスしておかないといけないと思ってしまって。感じないといけないと思うと、ドツボにはまっちゃって。
うさぎ◆今日も感じない、やっぱり濡れない、相手に悪いと、思えば思うほど感じなくなっちゃうんでしょうね。それはわかります。不感症以前と以降で、何か変わりましたか?
ひとみ♠どうだろうな。でも、年ともに、性感って変わりませんか?
うさぎ◆変わらないですよ~。よく、そう言うんですよね。感じ方が変わったり、感じる場所が変わったりって。どういうふうに?
ひとみ♠直接的に感じるようになりましたね。今ここで突かれている、この一部分が気持ちいい、とか。
うさぎ◆それまでは全体的に感じてた?
ひとみ♠ええ、若い時は、すごく感じると全身オマンコになったようにかんじたんですよね。そう言うのはないですか?
うさぎ◆全身オマンコ――――――っ?
――いま、うさぎさん、オマンコのかぶり物のイメージを持ったでしょう(笑)。違いますよ。
うさぎ◆うん、そう思った。違うの?
――どこを触られてもオマンコを触られているくらい感じている、というような比喩なんです。
ひとみ♠そうですよ(笑)。
うさぎ◆あー、ビックリした。ギャグかと思った。
ひとみ♠若い時って、したくてしたくてたまらない時って、なかったですか?
うさぎ◆! ! ! ! ええーっ、ないー!
ひとみ♠特に、大勢で焼き肉を食べてから一人で帰る時なんて、道端で男の人に声をかけてしまいそうなくらいで。かけたことはないけど。
うさぎ◆焼き肉は、よく聞きますね、私はそんなことは思ったこともないし、むしろ、お腹が弱いので、焼き肉食べて一時間くらいしてから激しい下痢に襲われたことがありますよ。焼き肉は、セックスとはほど遠いんですよ。
ひとみ♠何度かセックスしたくなって、気がつくとその日は焼き肉を食べていたので、結びついたんですよ。
うさぎ◆それ以来、焼き肉を食べに行くときは、したくなっちゃうことを心配しましたか?
ひとみ♠しましたねぇ。
うさぎ◆清水さんを口説くには焼き肉に連れていけばいい、と。そうですか、焼き肉ねぇ。
ひとみ♠そういう時って、オナニーじゃダメなんですよ、セックスしたいの?
うさぎ◆あっ、そうなんだ~。オナニーでは解消できないのではなくてセックスがしたいというのは、誰かと一緒にいたいという気持ち?
ひとみ♠いや、入れたい。
うさぎ◆挿入か。バイブではダメですか?
ひとみ♠どうなんだろう。仕事で何度か使ったことはありますが、普段は使わないので。
うさぎ◆バイブって、あまり普及していないんですかね?
ひとみ♠いえ、いますごいですよ。うちの劇場の前のアダルトショップなんですが、普通の若い子が買いに来ます。踊り子さんも、けっこうもってて、「今度出たのはいいよ」って情報交換してますし。
うさぎ◆バイブについては、私も思い出がありまして。
つい最近なんですが。もともとバイブは持っていなかったし、使おうと思ったこともなかったんですが、某女性作家が誕生日をホストクラブでやった時に、プレゼントですごく大きな「鬼待」というバイブを貰ったんですよ。

まぁネタですしね、ほんとうに巨大なので、使わないだろうと私は思ってたんですよ。ところが、彼女が「オナニーで使ってみたらあまりに良くてすぐにイッてしまった」とエッセイに書いたんですよ。本当に使ったんだ~! と驚きまして。
●ハマりやすい体質
ひとみ♠そうそう。軽く上衣は羽織ってましたけどね。
 ストリップでもSMショーはけっこうやるんですが、Mの踊り子さんは、劇場に入ってくる時に、どこか縛ってたり、縛っていなくてもベルトを一本、肌に直接して、その上に服を着てきたりしますよ。
うさぎ◆へえー、そうなんですか! SMプレイで、亀甲縛りをされたまま、その上に服を着て、「股に縄がくいこんだままコンビニ買い物してこい」「うーん、擦れる~」みたいなのは聞いたことがありますが、それは虐められてる感が気持ちいいのだと、「目の前のコンビニの店員は、私がこんなイヤらしく縛られて濡れて濡れてパンツも履いていないことに、気づいていないんだわ」っていうのが気持ちいいのかと思ったんですが、安心感みたいなものがあるわけですか。
ひとみ♠そうですね、ステージ上で縛られて解かれてから戻ってくるんですが、楽屋でもう一回、自分で縛り直してるんですよ。
うさぎ◆そうなんだ~(笑)。面白いな、SMって不思議ですよね。
●性に対する意識
うさぎ◆セックスはお好きですか?
ひとみ♠当時は、イヤでイヤで仕方なかったです。初体験の少し前にオナニーを覚えて、オナニーの気持ちよさを知っていたので、セックスに絶望したんですよ。
うさぎ◆ああ、相手が中三じゃね。童貞に近いでしょ。入れるだけだもんね、気持ちよくはない。
ひとみ♠ええ。で、イヤなんだけど、一人前の女になるためには男とできないといけないと思って、何人かとしてみて。
うさぎ◆苦行ですか(笑)。セックスとオナニーが逆転することは?
ひとみ♠今は、違う次元でどちらもいい、っていうふうになっています。でも、セックスの良さがわかったのは、二十代の後半。
うさぎ◆もうストリップを始めた以降ですか。
ひとみ♠そうです。ストリップを始めた後、二年ほど不感症に陥ったことがあって。何をされても感じない、濡れない、入らなない、という。
中村うさぎ中村うさぎ
まずは、自分の性的ファンタジーをとことん探す
ソリスト、オナニスト、テロリスト
一九五八年生まれ。作家。コピーライターを経て作家デビュー。
 ブランド浪費や税金滞納を告白する「ショッピングの女王」の連載で、世間を震撼させる。その後、ホスト、整形などにはまっている。次に何にハマるのかは本人にも分らない。
 主な著書に『愛と資本主義』『犬女』『さびしいまる、くるしいまる』など。

●頭の蓋を開けたい

――さて、今回は性的に不自由でコンプレックスの多いうさぎさんが、皆さんにお話を聞いて、自分の性について考えるという企画だったんですが、うさぎさんのお話を改めてお聞きします。
初体験の頃は性的なコンプレックスはなかったんですか?
うさぎ◆あんまりわかってなかったなぁ。早くもなければ遅くもなくて。早い子は高校の時から体験してたけど、私がいたのはハデなグループだった割には、性的に進んでいたというわけでもなくて。「高校時代に済ませたい」と思っていたんだけど、どういうふうに持っていけばいいのかわかってなかったから。やっぱり恐怖感はあったんじゃないかな。初体験は大学一年なんだけど、今までの人生で一番ブサイクと付き合っていたよ・・・・。
――武田鉄矢似のね(笑)。いつからつきあっていたんですか?
短小・早漏男と続いている時に、私は浮気をしたんですよ。その人とのセックスは、今考えてみれば普通だった。でも後で彼は鬱病になったけど(笑)。

 そしてその次の男が、性的にすごく開放的で、「やろうぜぃ」「今日はよかったよ」みたいなヤツで。私にとっては、長年の鬱屈を解放できた感じですごくよかったんだけど、しばらくつきあううちに、今度は回数の多さがイヤになっちゃって。そのことしか考えないのか、ってくらいで。しかも酔っ払いで、路上で胸を触ってきたりされると、私は「失礼だ!」と思っちゃうんだよね。

イチャイチャするというのを超えていたから、人が見ているところで私を性的おもちゃのように扱うな!って思っちゃって。酔っ払いだから、イヤだと言っても辞めないし。それでセックスをするのがイヤになっちゃって。考えてみると、相手がみんな過剰なんだよねぇ。
――うさぎさんにとって顔もセックスも問題なかった人って、いましたか?

うさぎ◆鬱病の人くらいか。でも、鬱病だし(笑)。いや、私と付き合っている時はまだ鬱病ではなかったんだけど、エキセントリックではあったんだよ。
 それで私は、前の彼と別れて、こないだまで七、八年、セックスしてなかったわけですね。
――その間は、どういう気持ちだったんですか? このままセックスしないで終わっていくんだ、って感じですか?
うさぎ◆うん。必要ないと思ってた。
――欲望もなく?
うさぎ◆純粋に「やりたーい」っていう気持ちは、オナニーでなんとかなるでしょ。
――人肌の温もりが欲しいということは?
うさぎ◆裸で抱き合うようなスキンシップがなくても、仲のいいゲイの友達と遊んでたから、寂しくはなかった。”この世でたった一人、私だけを愛してくれる人”はいないけど、そんなものは別にいいやと思ってた。
――ゲイと遊ぶようになったのは、前の彼とうまくいかなくなった頃からですか?
うさぎ◆そうだね。
――どうしてゲイというところにいったんですかね?
うさぎ◆それはもう、絶対に彼らとの間に恋愛とセックスが介在しないという安心感でしょ。いくらも遊べるから。そうじゃない男友達って、いくら仲がよくて話があっても、朝まで遊んだりすることが二回、三回も続くと、下心っぽいものを出してくるから、こっちも「なんだよ、そういうつもりかよ」って思ってしまうでしょ。裏切られた感じがする。二度と会いたくなくなるし。だから、女友達みたいに屈託なく遊べる男友達が欲しかったのに、なかなかできなかったんだけど、そういう意味ではゲイは、初めから心配なくていいし。あと、男的な論理を押しつけてこないから、すごく楽しかった。で、そのままババアになってもいいやと思ったんだよね。なのに、あなた(深澤)と作家の岩井志麻子さんがスイッチを押したんだよ。
――うさぎさんはよくそうおっしゃいますが(笑)、七、八年もセックスをしていない人を目の前にすると、救助犬のような気持ちになって、頼まれもしないのに助けなくちゃっと思って(笑)。
うさぎ◆ 本人は「もう雪山に埋もれて凍死したい」と思っていたのに(笑)。悪気があったとは思いませんし、むしろ「なんとかしなくちゃいけない」と思ってくれてんでしょうけどね。私にとっては、「セックスは気持ちいいけど楽しくない」というのがあって、気持ちいいというのは単なる物理的な快楽の問題としてわかるんです。だけど、楽しいっていうのは、セックスには屈託があると楽しくないんだよね。

ジェットコースターに乗っている時みたいに、何もかも忘れて頭が真っ白になるような楽しさでしょ。私は買い物の時もジェットコースターに乗っているみたいなんだから、頭真っ白なんですよ。それを楽しいと認識してる。

 楽しいにもいろいろあると思うんだのよね。作家の横森里香さんに「楽しさっていうのは、頭の蓋が開いてシュポーシュポーッと煙が出るような楽しさでなく、体の内側からジンワリとしみ通ってくるような楽しさもあるじゃない?」って言われてたんだけど、私は蒸気が出ないと楽しくないわけ。でも、屈託があるから蒸気が出ないんだよね。それは相手の屈託でもあり、私の屈託でもあって。屈託のある相手と何年もセックスするしかないかで悩んだりすると、頭の蓋も開かないっての。その代わりに、買い物とか他のことでシュッポシュッポしてたんだよね。
セックスって、私にとっては、気持ちいいけどそんなに楽しいものではなく、後で人間関係が面倒くさくなったり気を遣ったりするから、「そんなものはもういいや」と思ったのに、セックスが頭の蓋を開く人たちが「セックスはいいよぉ」って言うもんだからさ。このままセックスしないで終わっていくのはもったいないんじゃないという気がして来ちゃって。一回くらいセックスで頭の蓋が開くような思いをして見たい、と思っちゃったんだよね。
うさぎさんは、どうモテたいんですか?
うさぎ◆自分が好きだと思う人に好きだと思ってほしい、くらいの。
――それは「モテる」じゃないですよね、相思相愛ですね。
うさぎ◆そうそう。それでいいの。
~~~(ライター色川)「それでいいの」って、奇跡に近いと思いますが?
うさぎ◆ええっ、そうなのー?
~~~だって、好きな人から好かれることって、奇跡でしょう?
うさぎ◆そうなの? だってカップルってみんな相思相愛なんじゃないの? ベストパートナーを見つけて、何年かしか続かないかもしれないけど、ベストパートナーと付き合っているのかと思ったよ。
――違うと思いますよ。本人の物語はそうだと思い込んでいるけど、ある種の妥協感とか幻想がありますからね。たとえばサークルで、一番にモテる男と女がいて、その人同士がつきあうわけですよ。そうすると、他のみんなもその人達を好きだったんだけど、手を打つ感じで、二番手同士、三番手同士がつきあっていくんですよ。本人たちは「これは愛よ」って言うけれど、本当は一番手が好きだったくせに、っていうのがあるわけですよ。
うさぎ◆ああ、そういうのはありそうだね。
 私は、相手の子を私が好きと思わないとダメだし、相手に好きになってもらわないとダメだし、そういう理想があるでしょ。私が好きになって、それで好きになってもらうという王道を歩んでいるんですよ。
恋愛モードには滅多にならないので、そのかわりなった時は外さないんですよ。私としては、好きになった人が好きになってくれたらハッピーエンドなんですよ。

でも、恋愛の第二章がそこから続くわけですよね。そうすると、「あれ?」になるんですよ。愛する人に愛されるというラブファンタジーがあって、そのファンタジーは満足されたのに、セックスファンタジーが満足されないという所で引っかかるわけですよ。でもラブファンタジーに重きを置いているので、そこが満足ならいいじゃないかと自分に言い聞かせて、セックスには触れないまま過ごすわけですが、別れた後に残る怒りや憎悪はセックス問題が多いよね。
ゲイの子が、名前も素性も知らないし顔も覚えていないような相手と、ハッテン場で一夜限りのセックスしまくるんでしょ。この話はこの前もしたけどあれが不思議で、ゲイの子に聞いたんですよ。彼氏がいて、上手く言っててラブファンタジーは満たされてるし、セックスも上手くいってるのに、ハッテン場でのセックスが必要だ、って言うんですよね。

どうしてかと訊いたら、「あれはオナニーなんだよ」って言ったわけ。パートナーとのセックスが上手くいっているからってオナニーしなくなるわけではない、オナニーを一人でするのは寂しいから、意気投合できる人としたい、その相手にはむしろ人格は要らない、人間的な属性とか人生の経歴みたいなものはしりたくない、知ってしまったらオナニーではなくなって人間関係になっていく、人間関係が付随するセックスはパートナーとしているから要らない、つまりあれはオナニーなんだ、と。すごく納得しちゃって。

オナニーだったら何でも思い通りにできる、って言うんだよね。パートナーには人格を認めているから、共通のファンタジーを探したりしないといけないけど、ハッテン場はそれが必要ない、と。私は、マスターベーション的なセックスを、よその行きずりの男と性欲だけでできるかと言うと、それだったら家でオナニーしてたほうがいいと思うんだよね。
――そこまでじゃなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。私が思うには、テニスくらいの感じでいいんじゃないかと。

うさぎ◆テニス?
――ダブルスを組む相手、とか。もちろん相手の名前は知ってて、ある程度は気が合って、ごはんを一緒に食べてイヤじゃない、そしてテニスのレベルが自分とあまり違わないくらいの人で・・・・。あまり上手くてもあまりヘタでも困りますから。「今日は一人なんですよ」「じゃ、一緒にやりましょうか」くらいのこと。そのくらいの人間関係があっていいと思うんですよ。
うさぎ◆ああ、私はダメなり。セックスをスポーツにたとえることってあるよね。スポーツでのパートナーシップくらいの気持ちで考えて楽しむ、っていう。私はスポーツの楽しみが分からないんですよ。スポーツを楽しいと思ったことが一度もないの。
性的ファンタジーって、相手と共有できてこそいいセックスができると思うけど、なかなか共有できるものではなくて、自分がどういう性的ファンタジーを抱いているかを突き詰めて明確に持っている人って、少ないんだよね。私は独自のファンタジーを持っているから、セックスでは相手とは共有できないのかなあと思っていたりして、たぶん南さんも自分の性的ファンタジーを初めから明確に持っていたわけでもないだろうけど、自分の性的ファンタジーを活かせる仕事に就いた途端の、あの水を得た魚のような話は、すごく興味深かった。

何かプレゼンテーションできるくらい明確な性的ファンタジーを持っている方が、セックスはうまくいくんだろうね。でも、女の人は性的ファンタジーを明確に持とうとする人は、あまり多くはないんじゃないないかな。漠然としている人が多いので、それがうまくいかないんだろうね。
私、Hがヘタなんです!  中村うさぎ
2003年2月20日初版発行 

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