夫の状態を気づかうゆえに、あなたが気付いていることを夫と話し合おうとして、夫にアプローチする場合に、夫の抵抗に遭遇することがあると思います。
だからと言って退いてしまわず、かといって、ことをあまり荒立てるやり方は避けてた方がよろしいでしょう。
うつ状態の夫に悩む
=女と男の人生相談=ダン・カイリー著 =近藤裕=訳
うつ状態の夫に悩む
ヘレンは夫のロジャーの問題を次のように語り始めました。「夫はなんにでも癪（しやく）にさわるみたいなんですよ。
隣りの家の犬がうるさいって怒るんですけど、その犬が大好きだったんですよ。
テレビの前に座りっ放しで、その前で眠ってしまうんですね。
それに、今迄よく行っていたゴルフにも興味を示さなくなったみたいなんです。
性生活の方も、もうさっぱりだめというか、まあ、ほとんどしなくなりました。
この前、手を握ろうとしただけで、セックス狂いだって言われましたわ。
以前はこんなこと、ほんとうになかったんですよ！」ロジャーがうつ症状を示していることはすぐに分かります。
苛立っている。以前好きだったことをやらなくなっている。
性生活にも関心がない。
そして、昼間からよく居眠りをすることもうつ症状を示しています。
（ちなみに記しますと、食事の習慣が変化することも、要注意です）食欲はあるとのことです。
仕事の方は結構楽しくやっているようです。
それに、自殺も考えている兆しはありません。
これらのことに問題があるとすれば、ロジャーのうつ症状かなり重いと考えねばなりません。
また、ヘレンも、別の方法による介入を求めなければなりません（たとえば、専門医による治療を受けさせるとか）ロジャーのうつ状はそれほど重症とは思えないので、次に記すような方法で対処するようにすすめることにしました。
まず、次のことを予め知っておくことが大切です。
うつ状の人は、自分の将来について悲観的なことを口にする一方、往々にして、周囲の者には、楽しそうに振る舞うことがあります。
ですから、そういう姿を見てうつ状ではないと判断してしまうという誤った判断をしてしまうのです。
しかし、実は、そのような振る舞いは、自分のネガティブな思いや気持ちをカバーするためになされているということに気がつくことが大切です。
さて、夫の状態を気づかうゆえに、あなたが気付いていることを夫と話し合おうとして、夫にアプローチする場合に、夫の抵抗に遭遇することがあると思います。
だからと言って退いてしまわず、かといって、ことをあまり荒立てるやり方は避けてた方がよろしいでしょう。
まず、やるべきこと、それは、夫の最近の行動をざっと分析してみることです。
夫の行動に急激な変化が見られるとか？ 楽しんでやっていたことをやらなくなったことがないか？それまでになく、いらいらしているか、落ち着きがなくなっているか？ 食欲がないとか、眠れないという様子が見られるか？ 涙っぽくなったとか？ 生きる意欲を失ったような様子に見えるか？ 自殺をしたいなどと口走ることがないか？ なにか事を決める意欲を示さないとか、決断力 が鈍くなったことはないか？ などといったことを考えてみるものです。
これらのどれ一つでも、見られるようであれば、うつ状の可能性を考えた方がよろしいでしょう。
さて、これから示す＜うつ状＞対策のプログラムについてですが、それを実施する場合に、夫の＜うつ状＞の程度（軽傷か重症か）を判断し難い場合には専門医に相談してから始める方がよろしいでしょう。
身近な医師とか、そういう分野についての情報に明るい人に紹介してもらうとよいと思います。
専門医に電話してアポイントメントを取るときに、＜認知療法＞（コゲニティブ）によるうつ病の治療をしているかどうかを尋ねてみるのもよいでしょう。
この＜認知療法＞の効果は最近、薬物療法と同じくらい、時にはそれ以上の効果があると言われています。
うつ病専門のクリニックの良さは、幅広い治療法に精通している点にあるといえます。
また、うつ症状が他の疾病からくるものであれば、それを速やかに発見してもらえることも期待できます。
さて、＜セルフ・ヘルプ＞式のうつ症状対応策として、次に示すようないくつかの方法があります。
体の運動―
歩くだけでもいいのですが、とにかく、体を動かすことで、ホルモンの活動を促します。うつ症状の減退をもたらすと考えられます。
目標を設ける―
なにかの目的を達成するための行動をする。たとえば、戸棚の掃除、プランターの花の手入れ、床掃除、洗車、などといったささいなことでも達成感が得られます。
それが、「私は人生の敗北者である」といった考えに捉われた状態から解放される契機となると考えられます。
気を紛らわす―
うつ状態にある場合には、悩み事を無理に解決しようとしない方がよろしいでしょう。むしろ、そのことから気を紛らわすような行動に励むことです。
悲観的な思いを楽観的な思い切り代える―
うつ症状のひとは、「なにをやってもうまくいかない」「だれにも好かれない」「状況が変わる望みがない」などいった悲観的な思いに捉われていることが多いのです。このような信念はいずれも観念であって、事実を表すものではないのですから、それを、合理的な考えに切り変えることが大切です。
たとえば、「過ちを犯すのは、自分が人間である証拠だ」「自分はこのままでも、人に好かれる」「好むと好まないにかかわらず、私は常に変化している」などといった楽観的な思いに変えます。
つづく ＜愛情による対決＞への道