被害者は、まずセクハラは許せないことを加害者に伝えることが大切だ。これは次の意味から重要である。セクハラとして認められるには、その行為が相手の意志を無視したものでなければならない。したがって、相手に抗議をしなければ、行為が合意の上でのことだという加害者の主張を認めることにつながりかねない。

第5章 セクハラの防止

ピンクバラ経営者はEEOCのガイドラインや州の法律、裁判所の凡例などを通じて、セクハラを防止するための対策を立てることを求められている。

 ここでは、防止対策の設立と実施が被害を受けやすい女性従業員にとってだけでなく、企業にとってもどのようなメリットをもつのか、具体的に企業が取るべき手段、システムについて、苦情処理手続きや社内研修、加害者への処分などの問題を含めて説明する。

セクハラに関する連邦雇用平等委員会(EEOC)のガイドラインにせよ、多くの連邦裁判所の判決にせよ、経営者は職場でのセクハラを防止するとともに、従業員から訴えられる恐れを最小限にとどめるために、みずから積極的な措置を講ずることを勧めている。
 実際、EEOCのガイドラインも指摘しているように、セクハラをなくするためのもっともよい手段は、予防措置である。
 予防措置には、次のようなメリットがある。
 まず、これによってセクハラが起きる可能性が減ること。
 とくに、処分を伴うことが認識されることで、こうした行為を安易に行う風潮が抑制されることは期待できる。
 第二に、セクハラが起きた場合、上司や経営者がそれを速やかに把握することが可能になること。これによって問題が深刻化したり、裁判になったりする以前に対処することができるようになるだろう。
 三番目に、第二の点で関連して事態が悪化する以前に対処できることで、裁判に持ち込まれたりした場合に予想される多額の金銭的な払出やエネルギーの浪費を避けることができる可能性が大きくなることがある。

 最後に、仮に裁判になった場合でも経営者が責任を回避、あるいは、軽減できる可能性が大きくなることがある。これは、具体的にさまざまな措置を取っていたことが明らかになれば、それだけ法律を遵守しようとしていたとみなされ、責任問題にあたり、いわゆる誠意をもって問題に対処していたという弁明が経営者を有利に導く材料になるからだ。
 もちろん、このことは責任を必ず回避できることは意味するわけではない。
 
 第3章でも見たように、最高裁はセクハラに対して経営者が完全に免責される方法は示していない。だが、同じく第3章で紹介したように、EEOCはそれをテストという形で示している。
 このテストとの関連で、次のようなセクハラの予防措置が参考になろう。

セクハラに対する社内規則の制定

 経営者は、職場において、いかなる形のものであれ、セクハラに反対する旨を強くかつ明確に表明した社内規則を制定することが、まず求められる。この社内規則において、経営者は、セクハラは甘受しがたいものであたり、こうした行為が行われることが明らかになった場合には、適切な処分を表明しておくことが重要である。
 また、嫌がらせのあった場合の苦情処理手続きについてや、州や連邦法の下における被害者の権利についての知識を盛り込むことも必要だろう。

 セクハラを禁止する規則は、文書化し、社内に提示したり、配付したりして周知徹底させる必要がある。
 たんに規則を制定しただけでは、訴えられた場合などにあたって、立場が弱くなる。
 また、文書化したものを配布する際に、これを受け取り、かつ理解したことを示すために各従業員に署名してもらっておくことも重要な意味をもってくるかもしれない。

 文書作成にあたっては、次の点に注意すべきである。
 セクハラを禁止する旨を、この問題だけに限定して文書化することは避けるべきである。それは、セクシャル・ハラスメントを他の職場における差別の問題とは異なった特殊な問題と見なされることを避けるためでもある。

 言い換えれば、こうした文書は、人種、性別、宗教、出身地などに基づいて雇用差別しないし、認めないという雇用差別全体に反対する姿勢として打ち出すべきであろう。
 また、差別を積極的に解消していくことを目指すアファーマティブ・アクションも含めて取り扱うことも勧められる。
 なお、このセクハラを禁止する社内規則を作成する際に参考になる例文を、巻末資料に掲載した。

苦情処理機関の設置

 セクハラの防止策のなかに、苦情処理手続きを盛り込む必要性を指摘した。
 実際、たんに防止策が定められ、それが周知徹底されたところで、問題が発生した場合に被害者がどのような措置を取ることが出来るのかが明らかになっていなければ、それは無用の長物になってしまう。苦情処理については、次の点に留意する必要がある。

 一つは、苦情処理が被害者のプライバシーを尊重したものであること、この問題がセンシティブなものであるために、プライバシーを軽視したようなやり方では被害者が利用できない恐れが強いからだ。
 問題を訴える先を特定化することは、避けるべきである。たとえば、被害者は必ず直属の上司に相談するように規定したとすると、セクハラは男性の上司が部下の女性従業員に行うケースが多いことから、こうしたシステムは現時的ではいと判断される恐れが強い。
 加害者氏被害者の関係がどのようなものであれ、苦情を持ち込むことによって不利益を被る恐れがないことは勿論のこと、公正な措置が取られることを保証するような形になっていなければならない。

 また、持ち込まれた苦情は迅速に処理されるようなシステムになっていなければならない。
 なお、予防措置について文書化された社内規則と同様、苦情処理機関も人種、差別、宗教、出身地などに基づいた雇用差別全体に関するシステムの一環として策定することが望ましい。

社内研修の実施

 セクハラを防止し、働きよい環境の職場をつくり、維持するには、すべての従業員がこの問題に対する正しい理解をもつことが重要である。とくに管理職にある者は、次のような点を含んだ研修を受けるべきだろう。
 まず、セクハラの法的側面について。セクハラを愛嬌程度にしか考えていない管理職の男性が少なくない現状では、これが法的に禁止された行為であることを確認させることは重要である。
 さらに、会社内のセクハラ防止に関する方針を徹底させること。経営者がまず嫌がらせに対して積極的に取り組む姿勢を示さなければ、会社全体に徹底させることはできないということは、この問題に限定されたものではない。
 また、会社の方針として、セクハラを行ったことが明らかになった場合に行われるしかるべき処分についても、はっきりと認識させる必要がある。
 とくに、管理職の男性が加害者になっている割合が高いことを考えれば、これらのことはいくら強調しても、し過ぎるということはない。

 苦情手続きの方法を、はっきりと確認させることは重要である。この手続きにおいて、管理職にまず苦情が持ち込まれるのが一般的である。その際、どのように対応すべきということも理解していなければならないだろう。最後に、この処理手続きと関連して、セクハラの疑いがあればこれを調査・検討して、しかるべき社内の機関に報告する責任も徹底させなければならない。
 以上のように、管理職には加害者になる可能性を減らすための教育と同時に、実際に起こったセクハラへの対応の双方を含む研修が必要といえよう。
 なお、現在では従業員以外の人々、たとえば顧客による従業員へのセクハラに対しても経営者が責任を負わされる可能性もある。管理職は、こうした顧客などへの対処の仕方も学ぶ必要があろう。
 
一般の従業員にも研修が必要である。割合からいえば少ないとはいえ、同寮や部下の男性から嫌がらせを受ける女性従業員も少なくない。加害者となる可能性が高い男性に対しては、法的な問題やセクハラを行った場合の処分などについてはっきりと認識させることが大切だろう。
 また、同僚として被害者から相談を受ける可能性も大きいことからいえば、相談を受けた場合にはどう対処すべきかを理解させるようなプログラムが盛り込まれる必要があろう。

 被害者になる可能性が大きい女性に対しては、被害を受けた場合の対処の仕方などを中心に、これが法律的な救済も認められているものだということを認識させる必要がある。
 苦情処理機関の利用方法を徹底させることが重要、ということである。また、被害者が軽いうちに問題を解決することの重要性を指摘すべきだろう。
 さらに、同じ女性として被害を受けた人の相談にどのように応じるべきかについても指導することが大切である。

 このように、従業員それぞれの立場によって研修の力点のおき方が多少異なる。しかし、基本は法的な側面も含めた問題の重要性を確認させることと、被害を受けた場合、または被害を受けた人から相談を受けた場合などに、どのように対処すれば問題が深刻化することを防げるかという立場から研修を考えるべきだろう。
 なお、セクハラに関しての研修は、雇用差別全体の問題に対する研修の一環として企画されるべきだろう。これは、社内規則の場合と同様に、この問題だけ特殊なものとみなすことを避けるためなどの理由による。

苦情処理の方法と処分

 従業員からセクハラがあったという苦情が出されたら、経営者はただちに真剣かつ公正な調査を開始すべきである。しかし、これは必ずしも簡単でない。
 というのは、こうした調査は、従業員のプライバシーを侵害するものとか、個人的な交際に不当に干渉したもの。と受けとられかねないからである。これらの問題も、経営者が訴えられる可能性をもっている。また、こうした調査が、従業員のモラール(勤労意欲)に悪影響を与える恐れも十分にある。
 経営者が、慎重にならざるを得ないゆえんである。
 さらに、事情聴取などを行った結果、被害者と加害者の間に食い違いがみられることも当然予想されることだ。とくに、上司が部下の女性を陰で脅かしながら性的な要求をした場合などは、確実な証拠を見出しにくいだろう。
 
 こうした困難があるとしても、経営者はあくまでも許容することが出来ないようなセクハラが生じたのかどうか、公正に判断するために最善の努力を行う必要に追われている。
 というのは、被害者側が調査に不満を持てば、経営者を相手取り、裁判に訴えることも十分に予想できるからである。
 逆にいえば、調査が公正かつ妥当なもので行われれば、仮に被害者側に多少の不満が残っても、訴えが早い時期に解決され、経営者側の負担を最小限に抑えることが出来る可能性がそれだけ大きくなろう。

 ここであらためて予防措置の重要性を強調しておきたい。予防措置が十分に機能していれば、仮に問題がおっても早い時点で明らかになり、被害者側の受けた傷も軽くて済むことになろう。
 そして、こうした時点での問題なら、処分も軽いものですむため、加害者側もこれを反省するという形が取りやすいだろう。職場の雰囲気も乱さないですむ。

 解雇の恐れがあるような事態になってしまえば、加害者側もそれを容易に認められないだろうし、また被害者側も徹底した加害者への処分を求めてくるだろう。
 それは、問題の解決を遅らせるばかりでなく、不満をもった当事者から裁判に訴えられる可能性をいっそう大きなものにしてしまう。
 それは結局、経営者に跳ね返ってくる。「早期発見、早期治療」のための措置が経営者にとってメリットがあることを確認し、これに積極的に取り組んでいくことが必要なのだ。
 
 セクハラがあったと判断した場合、経営者は加害者を適切な処分に付すとともに、被害者への救済を行う必要がある。その方法として、次の手順が考えられる。
 まず、会社としてはセクハラは認められないとの立場を確認するとともに、加害者が会社の方針に反したことを告げること。

 第二に、被害受けた人への救済方法を検討すること。これは被害の状況によって異なってくることは論をまたない。救済は、金銭的なことばかりではない。雇用環境をどのように改善するか。すなわち、セクハラの再発を防ぐために積極的な対応が望まれる。
 最後に、加害者への処分である。最低限、加害者には訓告が必要だ。具体的な処分の内容については、セクハラの深刻度、その従業員の全体的な社内での行動の評価などによってケース・バイ・ケースとして扱われるべきであろう。最終的には、解雇を含めた処分が検討されることになろう。

ハラスメントの被害者の対策

 セクハラの被害受けた従業員は、どのようにこれに対応すべきなのだろうか。1979年3月、郡職員の間のセクハラを禁止したロスアンゼルス郡では、同郡女性問題委員会が次のような被害者の対応策を勧めている。

(1)  まず、被害者は加害者にセクハラが自分にとって不快なものであることをはっきり伝えること。

(2)  被害に関する記録をつけること、この記録には、嫌がらせがあった日時、場所、商人など含む。

(3)  嫌がらせをやめるようにいっても、これが続くような場合には、加害者に文書でこれをやめるように申し入れ、そのコピーを取っておくこと。

(4)  同僚とその問題について話し合うこと。

(5)  嫌がらせがさらに続くような場合には、上司に相談すること。

(6)  以上のような対応を行っても満足のいく結果が得られない場合には、人事課に苦情処理を求める公式な手紙を送り、そのコピーを取っておくこと。

(7)  最後の手段として、カリフォルニア州の公正雇用住宅局、または連邦政府の雇用平等委員会(EEOC)に公式な訴えを起こすこと。
 以上からわかるように、被害者は、まずセクハラは許せないことを加害者に伝えることが大切だ。これは次の意味から重要である。セクハラとして認められるには、その行為が相手の意志を無視したものでなければならない。したがって、相手に抗議をしなければ、行為が合意の上でのことだという加害者の主張を認めることにつながりかねない。

 適切な証拠を残しておくことは、将来訴えるような場合になったときに意味をもつだけではない。
 会社内の苦情処理手続きにおいても、被害者の主張を裏付けることに役立つ。また、そうした姿勢を示すことで、加害者が継続的に嫌がらせを行う可能性を減らすことも期待できよう。

 同僚や上司に相談することは、セクハラを辞めさせるためでなく、将来訴えるような事態になった場合の証拠としても役立つだろう。
 結論的にいえば、セクハにあった人は、みずから積極的にそれが不快なものであることを加害者に伝えることはもとより、社内での苦情処理手続きを利用するなり、インフォーマルな方法にせよ、これに抗議していくことはが重要であることもわかる。これによって、問題を最小限に抑えることが出来るとともに、訴訟などの事態になった場合でも自分の立場を有利にできるといえよう。
 続く 第6章 ハラスメントの救済システム

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